想いに応える

一つひとつのソリューション 森の中の太陽工場
ホンダソルテック本社工場 - 地球にやさしい持続可能な社会の実現 - お客様のこの大きな「想い」は、「エネルギー創造」という新規事業の形で加速していきます。製造過程から地球にやさしい次世代型CIGS太陽電池は、その工場の建設過程から環境配慮の姿勢が貫かれました。 荒木 英次主管 九州支店 建築設計室

壁面全体を覆う太陽電池パネル

現在最も普及しているシリコンを使わない次世代の太陽電池

―壁一面が太陽電池になっているんですね。とても印象的です。

荒木

太陽電池を作る工場ですから、やっぱりそこは外せませんね。(笑)
1,417mm×791mmのソーラーパネルを177枚設置しています。
太陽電池らしさというか、ホンダさんの新規事業を予感させるようなファサード(外観)を心がけました。

―この太陽電池パネル全体でどのくらいの発電をしているんですか?

約20kW「創エネ」していて、工場の事務厚生エリアの電灯コンセント系統に供給しています。

―あの、ちょっと聞きにくいことなんですが、「太陽電池を作る時のエネルギーの方が、太陽電池が発電するエネルギー量より多いので実は環境にやさしくない」といった話を昔聞いた記憶があります。本当のところはどうなんでしょうか。

それはかなり昔の話ですよ。(笑)
確かに1990年ごろはまだ効率が悪く、太陽電池の寿命も短かったため、結局エネルギーの無駄じゃないかといった議論があったのですが、ここ十数年で大きく様変わりしているようです。
エネルギーペイバックタイム(EPT)という指標があります。太陽電池をつくるために使ったエネルギーを発電で取り戻すまでの時間のことで、この工場で生産されるCIGS型の太陽電池のEPTは1年を切っているそうです。効率が悪かった頃の太陽電池は10年以上だったそうですから、格段の進歩ですね。

―ホンダソルテックさんの生産する太陽電池は、「CIGS薄膜太陽電池」とのことですが、どんな特徴があるんですか?

CIGSは、太陽電池の材料である銅・インジウム・ガリウム・セレンの頭文字で、シリコンを使わず、化合物の薄膜で発電する点が大きな特徴です。

―シリコンを使わないとどんな利点があるんでしょうか。

従来の結晶シリコン系太陽電池と比較して化合物薄膜型の太陽電池は、製造過程での消費エネルギーや排出CO2が約半分に抑えられ、生産過程での環境負荷が少ないんです。さきほどお話したEPT(エネルギーペイバックタイム)だけでなく、CO2ペイバックタイムという指標もあるのですが、CIGS型はその両方がシリコン系より短いという点も大きな特徴で、これまで主流で使用されていたシリコンを全く使わないという点が次世代型といわれています。
1991年頃のデータを見ると、EPTが約10年となっています。当時の太陽電池は作るときに使ったエネルギーを取り戻すのに、最低10年かかっていたということです。CO2に至っては、その概念さえなかった。
あ、偉そうに話しましたが、この案件に携わりながら学んだ知識でした。(笑)

―なるほど。「製造過程から環境にやさしい太陽電池」ということですね。

土地造成段階から貫かれた環境重視の姿勢

環境に配慮した次世代の工場

―すると当然、建物としても環境に配慮することが求められたと思うのですが。

はい。環境にやさしい太陽電池を生産する工場は、その建設段階でも環境重視の姿勢を貫いてきました。配置計画を考える上で、土地造成段階の場外残土処分量を最小化すべく計画しました。ホンダさんの敷地内のモトクロス場の一角だったので、けっこう起伏があったんです。平らな状態にするために、切土盛土のバランスを何度もシミュレーションしてみました。
設計段階では、建物の仕様として、省エネ・省資源化を考慮した設計思想を盛り込みました。

―たとえばどんな点ですか?

一例を挙げると、建物正面に見える大きなガラス面は全て熱線反射ガラスにし、そこに大きな庇を張り出すようにしました。これにより、通常の窓面に比べて、室内の空調負荷が大幅に軽減されます。窓面だけではなく、壁面を断熱サンドイッチパネルにしたり、屋根をダブルパックの折板屋根にしたり、建物外皮の高断熱化を図っています。
建材も環境に配慮した水性塗料やノンホルム建材などを選定しています。
施工段階でも、環境配慮の姿勢を崩さずに取り組んできました。建物を支える杭は、周辺環境に配慮した低振動騒音型の施工方法にし、産廃土となってしまう汚泥が出ない工法を採用していますし、基礎工事ではベニヤ型枠ではなくラス型枠で施工し、森林資源保護に配慮しました。また、グリーン調達も積極的に行い、再生クラッシャーランと呼ばれる再生骨材を路盤材などに使用したり、再生プラスチック建材のOAフロアを採用するなど、環境配慮への終始一貫した取り組みを実践しています。

そして、環境配慮として一番気を使ったところがホンダさんの緑化計画「ふるさとの森づくり」でした。

空調エネルギー負荷を軽減する大きな庇と熱線反射ガラス

ふるさとの森を守る

―「ふるさとの森」ですか?

はい。ホンダソルテックさんのこの工場は、ホンダさん本体(本田技研工業株式会社)の熊本製作所の敷地内にあります。熊本製作所の敷地は、163万m2という広大な広さがあるのですが、その周りに塀のようなものは一切ありません。敷地をぐるりと緑地帯が囲んでいます。その緑は「ふるさとの樹による、ふるさとの森づくり」ということで熊本製作所の従業員の方々が植樹したものなのです。

今回の計画にあたっては、その「ふるさとの森」を守るという事がとても重要でした。工場の配置だけではなく、タンクヤードや調整池などの排水処理設備、物流動線や電気や給排水のインフラ敷設計画などをできるだけコンパクトにし、「ふるさとの森」を保全するよう努めました。敷地の北東角に位置する計画地は、「ふるさとの森」がとても厚い部分だったので、道路からかなり奥まった配置になったのですが、外から工場にアプローチするとき、森の中にきらきらとソーラーパネルに反射する太陽光が見え隠れします。森の中に入っていくと次第にその存在感が増していく、うまい演出ができたのではないかと思っています。

熊本製作所をとり囲む「ふるさとの森」 (右上がホンダソルテック本社工場)

―なるほど。「森の中の太陽工場」といった感じですね。

工場正面まで来ると、大きな熱線反射ガラスに「ふるさとの森」が映り込み、ハイテク・ハイタッチな外観でありながら周囲と調和します。ホンダさんの想いだった「環境配慮型の次世代の工場」を表現できたのではないかと思います。

ガラスに映り、建物に取り込まれる「ふるさとの森」

アメニティーを重視した設計

―工場内はどんな様子なんでしょうか。

CIGS薄膜太陽電池の発電層はとても薄く、従来の結晶系シリコン太陽電池の電池層と比較し約1/80くらいの薄さです。その薄い発電層を生成するラインがあり、建物にもさまざまな性能が要求されるのですが、こういった最先端の生産施設の内部についてあまり話すことはできません。
約1万1千m2ある工場の中は機械だけが黙々と動作しているのではなく、多くの従業員の方がそこで働いています。工場のパフォーマンスは、そこで働く従業員の方のパフォーマンスにも左右されるのです。ですから、従業員の方が気持ちよく働いてもらえるアメニティー環境もとても重要です。

―何かそういった従業員の方の厚生施設に関するコンセプトがありましたか。

ホンダさんには「職場に誇りを持てる環境/使う人が満足感を得られるアメニティー」というコンセプトがありました。担当の方と何度も打ち合わせを重ねながら創りこんでいったのですが、中にはわざと未完成にした部屋もありました。

―未完成にしたんですか?何か決められない要素でもあったんでしょうか。

この工場は、既存の建替えや移転拡張などではなく、ホンダさんの新規事業です。ですから、ここに集まる従業員の方は新規採用の方が多く、ゼロからチームワークを作り上げる必要がありました。そこで、できるだけ早くチームワークをまとめあげるために、未完成の部屋を用意したのです。ホンダさんの担当の方のアイデアでした。新しい従業員の方々が自分たちでその部屋の使い方や内装デザイン、什器備品などを打ち合わせをして決めていくことで、早期にチームワークを醸成しようという意図で用意されたわけです。

―なるほど。その部屋は今どう使われているんですか?

ラウンジ的な雰囲気のリラクゼーションルームとして使われているそうです。
ここに、工場稼動から半年後にお客様自身が従業員の方に行った福利厚生施設の満足度調査結果があります。社員食堂、リラクゼーションルーム、トイレなどが評価されていますが、どれも高い満足度評価をいただいているようで、とても嬉しく思っています。

―各厚生施設も、コンセプト通りの成果が得られ、お客様の想いが実現したということですね。

そうですね。この工場から生まれる次世代型太陽電池が、世界中の屋根の上で花開くことを願っています。

―本日はありがとうございました。

事務厚生エリア内観

ホンダソルテック本社工場基本データ

所在地 熊本県菊池郡大津町
建築主 本田技研工業株式会社
敷地面積 1,630,082.30m2
建築面積 11,345.10m2
延床面積 10,783.68m2
構造規模 S造 地上1階
主要製造品 CIGS薄膜太陽電池
生産能力 約27.5メガワット

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