想いに応える

一つひとつのソリューション どこにもない病院 東海大学医学部付属病院

手術室のアメニティ

有賀職場環境として手術室をとらえると、そこで長時間過ごすにはとてもつらい環境です。とても無機質で、リラックスできる環境ではありません。

―手術中に好きなBGMを流して手術をする先生もいるそうですね。

有賀裏返すと職場環境改善への欲求の表れかもしれません。今回たくさんの方々と話す中で、いままで私たちは手術をする先生やスタッフのアメニティというものを正直あまり重要視していなかったと痛感しました。手術は私たちが想像する以上に激務なんです。
長時間に渡る緊張した状態で多くの手術をこなしていく先生や看護師さんのために、ストレスを軽減させることが建築的にできないかと考えました。

オペホールには大きな窓が

―どんなどこにもない工夫があるんでしょうか。

有賀打合せの中で、あるオペスタッフの方が『長いオペが終わって手術室から廊下に出てくると、時間感覚が麻痺してしまい昼か夜かわからなくなるんですよ』と言ったんです。
それがヒントになり、手術室を出た廊下、オペホールと呼ばれる部分に大きな窓を数箇所設けることになりました。外の風景が切り取られて自然光が入り、時間や天気を感じることができます。
たったそれだけの工夫なのですが、手術と手術の合間の気分転換やスタッフのコミュニケーションエリアになり、それが医療ミス防止にも繋がると思っています。

竹村日帰り手術などの患者さんは、歩いて入室する場合もあります。そんな患者さんにとっても安心感を与えられると思います。

手術室の進捗情報システム

―エンジニアリング部の鈴木主管はどのような部分を担当されたのですか?

鈴木救急搬送が多いことからわかるように、この病院は急性期病院です。
それも「超」がつくほどの急性期病院で、命の危険に直面した患者さんや、視力や運動能力などに障害が起きる可能性がある患者さんがとても多いという特徴があります。
そういった急性期疾患は、時間の経過と共にどんどん悪化していくため、命にかかわる時間のロスを短縮することがとても重要になります。

竹村東海大学病院リニューアルプロジェクトの基本理念は3つあります。
『タイムセービング』『ハイクォリティ』『ペイシェント・アイデンティフィケーション』の3つです。この中で最も重視されているのが『タイムセービング』です。

手術室進捗状況管理システムの画面

鈴木20室以上のコンバーティブルな手術室を効率的に稼動させ、『タイムセービング』するためには、稼働状況をリアルタイムに把握し、スケジューリングするシステムが必要でした。
私はその「手術室進捗情報システム」の開発を担当しました。

―建物のハード的なものではなく、ソフトウェアの開発をされたのですか?ちょっと意外に思いますが。

鈴木実はこのシステムにはプロトタイプがあります。
戸田建設で開発した『搬助』と呼んでいる、現場のクレーンや仮設エレベーターの使用時間を管理する揚重管理システムで、それを基に、病院さんと共同で開発を行いました。

―なるほど、そういうことですか。「手術室進捗状況管理システム」は、具体的にどのようなことが可能なのですか?

鈴木まず、全手術の進捗状況を院内で共有することができます。
手術室にはカメラが設置されており、院内のどこからでも手術の進捗状況と室内の様子を把握できます。そして、手術の進捗に応じて他の手術の開始時刻や手術室を変更したりすることができます。『コンバーティブルな手術室』ならではの部分です。また、緊急手術を行う際のスタッフの動員や物品の手配も容易になり、高密度な手術スケジュールを組むことが可能となりました。

竹村今は年間1万件を越す手術をこなしているそうです。

パソコンで手術室内の映像が確認できる

1階の待合「東海ホール」

精神性のある静かな空間

―手術室の話ばかりになってしまいましたのでちょっと話題を変えますと、1階の待合ホールなどで感じたのですが、何かとても静かで落ち着きのある印象を受けました。
最近はパステルカラーやあたたかみのある印象の病院も多いと思いますが、どんなコンセプトでデザインされたんでしょうか。

竹村さきほどの話でもありましたが、この病院は急性期病院です。
命に不安があるような患者さんや身内の方にとっては、原色やパステルカラーの内装はかえってイライラや孤独感を増加させるといわれます。
不幸にも背負ってしまった自分の病について、人々は様々な形で「気付き」をし、病に立ち向かい、自分を納得させていきます。その過程を少しでもサポートできればと考えた空間のコンセプトが、「精神性のある静かな空間」です。

竹村清潔感と若さが感じられる白を基調とし、光の陰影を大事にしています。
低層部で使用している「白」は、肌の色が最も引き立つ白です。ややクールな色合いの中に人が立ったとき、その人が最も生き生きと見えることを目指しました。

―病院内には金箔を施したアートが散見されました。金箔の持つ複雑な光沢と奥深さが心に何かを問いかけてくれるような気がしました。

本日はありがとうございました。

東海大学医学部付属病院基本データ

所在地 神奈川県伊勢原市
建築主 学校法人 東海大学
敷地面積 90,167.80m2
建築面積 9,231.63m2
延床面積 69,244.38m2
構造規模 RC造 地下1階 地上14階 免震構造
診療科目 循環器科、呼吸器科、消化器科(消化器内科、総合内科)、内科(血液腫瘍リウマチ内科、腎内分泌代謝内科)、神経内科、呼吸器外科、心臓血管外科、外科(消化器外科、乳腺内分泌外科、救命救急科)、小児外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、小児科、産婦人科(産科、婦人科)、眼科、皮膚科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、精神科、放射線治療科、リハビリテーション科、麻酔科、歯科口腔外科、矯正歯科
病棟構成 全804床
一般病床668床、無菌病室13床、EICU・EHCU58床、ICU・CCU32床、NICU12床、GCU12床、MFICU9床

医療福祉建築賞2007受賞

医療福祉建築賞 賞盾

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