
客席数1,123席(うち2席は車椅子用)の大講堂内観。「宇宙のシンボル」としてデザインされた天井中央のトップライトは、天井面で長径9,085mm、短径6,401mmの楕円形で、ガラス天井面(採光窓)まで650mm折上げられている。

2階大講堂ロビーの円形窓。
大講堂は、まあるい空間だ。ドーム型の天井の中心に採光窓があり、柔らかな光を落とす。この天窓は太陽系を表しているそうで、よく見ると太陽や月をかたどった装飾が施されている。
パッと見には何が変わったのかわからないほど古式ゆかしい風情だが、機能的にはかなりパワーアップした。天井を補強したり、必要な個所に防音対策を施したほか、音響・映像設備は最新の機器を採用。5ヵ国語対応の同時通訳システムの導入やネットワーク対応など、時代の要請にも応えている。
オリジナルデザインを復原したという椅子は、以前よりも幅と奥行きを広げ、ゆったりとした作りに。各座席には袖机がつき、コンセントやヘッドフォン、LANケーブルの差し込み口などが備え付けられ、さながら飛行機の座席のようだ。しかも椅子の背には空調の吹き出し口が配置されている。このダクトを通すために床をはがす大手術をしたという。何だかすごいことになっている。

意匠及び音響的に優れた大講堂の天井と壁面は、さまざまな調査を行い、竣工時の状態に復原された。

大講堂の椅子。背面には空調の吹き出しが設置された他、同時通訳ジャックや袖机などが備えられた。

地下1階小講堂。今回の再生では柱間にブレースが配置されるなど、建物の耐震性が大きく向上している。

ステンドグラスに彩られた階段室。
一つ一つを見て歩くと、あちこちもすごいことになっていた。新たに作られた同時通訳ブースや、機器がぎっしりとつまった調整室。やわらかなガラスに囲まれ、見まごうほどの近代的なホールに変わった地下の小講堂。車いすでも利用しやすいよう新設された入口のスロープとエレベータ。私が思いつく必要な要素はほとんど網羅されていると思う。これでは古い建物どころか、最新鋭の多機能ホールだ。何を今さらと怒られそうだが、改めてここはホールだったんだなと気づく。演奏や演劇を観賞したり、講演やシンポジウムが開かれたり、多くの人が集まり、使われる場所。たくさん使われて、新しい何かを生み出していく場所でなければ、大学の象徴も、やがてはただの記念写真スポットになってしまうのかもしれない。
「実際に使っていただければ、建物のすばらしさをわかってもらえるでしょう。もっと多くの方に、この講堂のよさを実感してほしいですね」(尾崎さん)
自分の無知を披露すれば、今回、大隈講堂について初めて聞く話も多かった。日本の音響設計の先駆けであること。随所に見られる十文字の装飾が大隈家の家紋に由来していること。建物がキャンパスの正面ではなく、少しそっぽを向いて配置されていること。ひとつひとつが興味深く、すっかり見慣れているはずの建物が新鮮に見えたものだ。
大隈講堂は、これからも当たり前のようにここに立ち続け、たくさんの人々を見守っていくのだろう。機械室のごつい耐震ブレースに「しっかり支えてくださいね」とお願いをしておいた。もちろん気恥ずかしいから、心の中でこっそりと、だ。

大講堂の映写室内部。空間に影響しない部分では機能向上のための最新設備が配置されている。

1階ロビー内観。照明はオリジナルを分解・修理・クリーニングしている。





