想いを築く

Zoom UP 現場 足柄上合同庁舎本館新築工事

神奈川県足柄上郡地図

提案力とフロントローディングでつくる
“あしがら”の新庁舎

神奈川県の西端、静岡県との県境に位置する足柄上郡。
豊かな自然に恵まれたこの地域の中核施設として、現在、新しい合同庁舎の建設が進められている。当社横浜支店として初めてフロントローディングも採り入れた注目プロジェクトの現場を訪問した。

足柄上合同庁舎本館新築工事とは

足柄上合同庁舎本館新宿から急行電車で1時間少々。今回お伺いしたのは、箱根の山々の麓で工事が進む足柄上合同庁舎本館の新築工事現場である。神奈川県西地域の行政機能や災害時の司令塔を担うこの施設の建設を指揮するのは関川貴康作業所長。
「このプロジェクトは神奈川県が庁舎として初めて設計・施工を一括発注したもので、当社が様々な技術提案を行い、受注に至りました。庁舎として高品質な建物をつくり上げるという大前提のなかで、効率化を追求して工期と建設コストを抑えた工事を行っています」(関川作業所長)。

工業化と効率化によって
実現するマンパワーの安定

工事現場写真1この現場に導入されている当社提案技術の目玉と言えるのが『戸田式端部RC中央部S複合梁構法』(TO - RCSB構法)である。ローコスト・短工期で大スパン空間を構築できる本構法の導入によって、一般的構法を用いた同規模の建物と比較して、柱数で38%、梁数で57%という架構部材の削減と、2カ月もの工期短縮を実現している。
「これまで本構法を採用した事例では、長いスパンを飛ばすことを第一の目的として、これを建物の一方向にだけ採用していました。しかし今回は初めて、本構法を用いた大梁を縦横に組み合わせることで屋根と構造フレームを構成しています。また、通常この大梁は在来工法でつくられますが、今回は鉄筋の先組み、鉄骨の地組みを行うことで更なる効率化と高所作業の減少による安全性の向上を図っています」(関川作業所長)。
また、外観上の特徴にもなっている窓周り上部の庇(ひさし)も、他社監修による基本デザインの時点では在来工法が想定されていたが、実施設計の過程で当社がプレキャスト(PCa)工法に変更している。これは設計・施工一括発注だからこそ実現できた効率化だと言える。
更に基礎・免震装置上部基礎の構築においては、本来は免震装置の設置場所で作業員が限られた作業スペースで型枠や鉄筋を組むところを、作業の行いやすい地表で組み上げて設置する現場内工業化に変更することで作業効率の向上を図っている。
「このように現場の工業化と効率化を徹底した結果、ある時は作業員が多い、ある時は少ないといったバラつきが減り、一定の人員で粛々と工事を進めることができています。作業員の入れ替わりもあまりなく、ここに慣れた人たちの手によってつくり続けることができますので、結果として品質や安全性の向上にもつながっているように思います」(関川作業所長)。

先決めの効能

工事現場写真2本プロジェクトのもう一つのトピックとしてフロントローディングの採用が挙げられる。フロントローディングとは、プロジェクトの初期に可能な限り詳細に検討・決定を行うことで、途中段階での手戻りや無駄なコストを低減するというもの。近年の建築プロジェクトではプランの詳細が決まっていない初期の段階でも、BIMによって意匠・構造・設備・施工・積算などの関係者が一堂に会して詳細な納まりや仕上げまで検討することが可能になっている。
「従来は『こういうものをつくる』という図面をもらって初めて作業を始めるというのが現場の流れでした。私自身、今回初めてフロントローディングを経験しましたが、まだプランがかっちりと決まっていない状態から、他の関係者と一緒になってつくり込んでいくという過程は新鮮でしたね。これまで建築工事は伝統的に縦割りで仕事を進める形でしたが、そういう部分から大きく認識を変える必要性を感じました」(関川作業所長)。
関川作業所長によると、今回プロジェクトの川上段階で様々なことを決めた結果、実際の工事の段階でこなさなければいけない課題が事前にかなり整理され、それがスムーズな現場運営にもつながったと言う。
このような取り組みにより、工期を通して、人員と作業量をいかに平準化するか。プロジェクトを円滑に進めるうえでこれが重要なポイントになるようである。

技術ポイント

戸田式端部RC中央部S複合梁構法
(TO-RCSB構法)

一般的にRCの梁で大スパンを実現するためにはプレストレス(以下、PC)が導入されるが、PCは高価であり、また工期や作業量の面でも最適と言えないケースが多い。本構法はこの問題を解決するために開発された当社の独自技術で、梁の端部をRC造、中央部をS造とすることでPCを導入した梁に比べて大幅に重量を軽減することができる。また、それによって建物全体の部材の量を減らすことができるため、作業量の軽減にも大きく寄与する。
今回のプロジェクトではRCSB梁とプレキャスト(PCa)化した大梁、S造の小梁、そして合板デッキを組み合わせた最小限の部材によって、構造フレームをシステマチックに構成している。

梁写真

《現場社員コメント》

前田副所長写真

前田副所長休憩時など、作業員の皆さんと談笑する機会に、次の工程の説明を言葉とビジュアルで伝えることを心掛けています。

佐藤係員写真

佐藤係員現場で作業員の方に声を掛けるときは、何々屋さんというのではなく、なるべく名前で呼ぶことを大切にしています。

赤松係員写真

赤松係員現場では初めて顔を合わせる人を含めて、どういう方とも等しく接することができるように心掛けています。

松長根係員写真

松長根係員社員と作業員という立場の違いはありますが、常に相手の方が何を求めているのか考えて、仕事をお願いしています。

中島係員写真

中島係員現場ではいつも次の作業が迫っていますが、少しでも疑問に思ったことは必ず話し合うことを大事にしています。

《作業所長コメント》

関川作業所長写真

横浜支店 建築工事部工事2室
作業所長 関川 貴康
高品質な建物をつくるためには、自分の知識や技術を磨くだけでは足りません。
実際に手を動かす作業員の皆さんにいかに気持ち良く仕事をしてもらうかということ、そして次の現場状況をイメージして、停滞や手戻りが出ない環境をしっかりとつくることが重要です。その積み重ねが作業員の皆さんとの信頼関係にもつながります。

工事概要

集合写真
工事名称 足柄上合同庁舎本館新築工事 概要 地上5階、塔屋1階
RC造(梁一部S造・TO-RCSB構法)
敷地面積 34,733m²
建築面積 1,922m²
延床面積 8,942m²
最高高さ 25.80m
工事場所 神奈川県足柄上郡開成町吉田島2489-2
発注者 神奈川県
監修 (株)三菱地所設計
設計・監理・施工 当社単独
工期 2016年9月~2017年12月 用途 庁舎