想いを築く

Zoom UP 現場 井手口川ダム(本体)建設工事

岩盤の問題をクリアする2つの工法

井手口川ダムの堤頂長は235m、堤高は43.7m、堤体積は約11万9000m3。ダムとしては中規模と言える。しかし、現場の地形・地質は必ずしもダム建設の好適地とは言えず、工事が軌道に乗るまでには、乗り越えなければならない課題があった。

現場は、ダム建設には一般的に基礎岩盤としての強度が不足するD級岩盤(泥流堆積物)や、透水性の高い粗粒玄武岩などの地質が複雑に入り組んでいる。これらの問題を解決するため、当初の計画よりダム軸を20m上流に移動させ、「造成アバットメント工」や「表面遮水工」などの各種工法を採用し堤体の安定と遮水性の確保を図っている。

造成アバットメント工とは、堤体が接地する地盤が堤体の重さに耐えられないときに採られる工法で、堤体の端部(アバットメント)の法面部の地層を覆うようにコンクリートの人工岩盤を設置することで地盤の安定を図る。本ダムでは右岸側に厚さ4m、幅21mに渡ってコンクリートの人工岩盤をつくり強度を高めた。「D級岩盤を除去して堅岩まで掘削する方法もありましたが、その場合、基礎掘削量や堤体積が大きくなりコストも増えてしまうため造成アバットメント工が採用されました」と佐藤所長。さらに施工を進める中で、設計時点では問題がないと予想されていた左岸側の地盤も所定の強度が出ないことが分かり、小規模ながら造成アバットメント工を用いることにより、再掘削を最小限に抑え、工程の確保を図った。

もう一つの特徴である表面遮水工は、ダムの湛水側の河床部の一部に透水性の高い粗粒玄武岩層があることから、基礎掘削時の土砂等の現地発生材を選別した不透水性材を透水層の上に被覆することで、ダム貯留水の下流側への漏水を防止している。

このほか、ダム左右岸地山部の止水対策として、ダム端から右岸側100m、左岸側120mにわたってトンネルを掘削し、リムグラウチングを行っている。ダムの天端より左右岸に掘られたリムトンネルに、1.5mごとに直径46mm、平均22mのボーリング孔を掘削し、セメントミルクを注入し遮水性を確保している。

土木工事では、一般的に設計書そのままにつくるのが工事の基本だが、ダムは任意仮設方式が取られる工種が多い。任意仮設とは、要求されるスペックさえ満たしていれば、そこにたどり着く道筋は施工者に委ねられていることである。このダムも同様で、「極端な話、堤体にかかわるものと基礎処理工(遮水等を目的としたセメントミルクの注入)以外はすべて任意。そこがやりがいであり面白さでもあります」と佐藤所長は言う。

堤体平面図

右岸の造成アバットメント工の様子

左岸のリムクラウチングトンネル内部

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