想いを築く

Zoom UP 現場 埼玉県中川水循環センター第2沈砂池ポンプ棟築造土木工事

巨大構築物を沈めながらつくり上げる。
効率化で難工事に挑む現場

埼玉県東部11市4町の下水を浄化する中川水循環センター。現在、ここで行われている「第2沈砂池(ちんさち)ポンプ棟」新設工事では、当社でも珍しいニューマチックケーソン工法が採用されている。
一般的なニューマチックケーソンの形状は、橋の基礎となる橋脚や橋台、下水や雨水工事でシールド工事等の発進・到達立坑などに採用されることから、正方形に近い矩形や円形が多いが、当工事の躯体平面形状長短比は3.65:1.00となっている。3:1の比率を超す形状のニューマチックケーソン工事は、当社にとって初の試みである。
独自の効率化を推進するその現場を紹介する。

埼玉県中川水循環センターとは

首都圏交通の要衝、三郷ジャンクションのすぐそばに位置する中川水循環センターは、東京ディズニーランドの約1.2倍の敷地面積を持ち、1日平均約39万m²の下水を処理している。今回の「第2沈砂池(ちんさち)ポンプ棟」は、近年の汚水量増加と既存施設の老朽化への対策として計画されたものである。
沈砂池とは、複数の槽が連なる下水処理施設の最初に配置される池で、下水に紛れ込んでいる砂などを沈めて取り除くところ。今回の建物は地下4層で、最下の地下4階にこの沈砂池と水を循環させるポンプ室が、地下3階から地下1階に機械室などが配置される。

つくって沈める先端工法

現場を指揮する菅原一浩作業所長はこう話す。
「今回の工事では平面寸法22.5m×82.5m、構築深度32mというこの構築物をどのようにつくるかが大きなポイントでした。そこで、掘り進めた後に構築する一般的な開削工法と比較して、工期・工費ともに優位なニューマチックケーソン工法が採用されています」。
ニューマチックケーソン工法とは、簡単に言うと地上である高さまで構築物をつくり、完成後に沈下させるサイクルを繰り返すことで地下構造物をつくり上げる工法である。沈下させる仕組みは、最初に構築物下部に鉄筋コンクリート製の函(ケーソン)を設けて掘削機(天井吊り下げ型のシャベル)を設置する。そしてここを気密作業室として圧縮空気を送り込み、地下水を排除したドライな環境で掘削を行い所定の位置に構築物を沈下させるというもの。構築・掘削・沈下作業を同時にできるため大幅な工期短縮が可能となる本工法の採用によって、工期を3~4割ほど短縮することができるという。
ただ、本工法を実施するうえでは難点も存在する。地上で躯体をつくりながら掘削・沈下させていく本工法は、躯体工事が終わらないと掘削ができない。このため、どちらかが止まったり進み過ぎると作業が停滞するため、工程や人員に無駄が出ないスムーズな進捗管理が求められる。
また特に重要なポイントとして、沈下させる際、躯体に傾斜や偏心を発生させないことが挙げられる(下記技術ポイント参照)。今回の工事でこれを非常に難しいものにしている要因の一つが、この地域の軟弱な地盤である。そこで当社の提案として地下部分32mのうち、4~16.5mの深さの範囲に地盤改良を行うことで、万全の安全対策を施している。
更に本工事によって周囲に存在する運用中の施設や管渠(かんきょ)に影響を与えることがないよう、縁切りの鋼矢板を設置して影響を緩和させているほか、地中変異を自動計測できる体制も整えている。
「橋梁下部工、トンネル、立坑などにも採用できる本工法は今後の需要増が予想されます。当社ではこれまで本工法の経験者が非常に少ない状況でしたが、この現場の経験が水平展開されることで、今後の受注につながるとよいですね」(菅原作業所長)。

現場と“人の質”の向上

現在、工事は全体のほぼ半分まで進み、掘削と沈設は地盤改良区間を抜けてその下へと進んでいる。最下部で掘削を行う作業員は、作業の前後にマンロックと呼ばれる場所で、潜水士のように作業深度や地上の気圧に体を合わせる必要がある。この時間を含めた有人作業のコストと、無人設備を導入するコストがある函内気圧(0.18Mpa)で逆転するため、現在有人で行われている掘削作業は、最後の3分の1程度を無人の遠隔操作で行う予定となっている。「このほかにも構築物下部の作業室を、躯体の底版と一体構造とすることで鉄筋を設計時の5分の1に抑え、これを組む作業も大幅に減らす変更を当社から提案するなど、この現場ではコストと効率化の意識を徹底しています。今回の効率的な先端工法、そしてそれを実現する工程管理や各種機器などで現場の効率化を進める一方、それらを扱う“人の質”の向上にも一丸となって取り組んで安全や高品質を実現したいと思います」(菅原作業所長)。

技術ポイント
構築物沈下時の姿勢制御

本工法では躯体を沈下させる際にバランスを崩さないことが重要となる。土と構築物各面の摩擦ができる限り均一になるよう、本工法はスクエアに近い平面形の構築物に採用されることが多いが、今回の建物は過去に事例がないほど横長であり、難易度が極めて高い。
このため、地上におけるコンクリートの打設や、地下の掘削においては「何日後にこの部分のコンクリートが打設されるので、こちら側の掘削は抑えて摩擦を大きくしておく」というように、重量バランスだけでなく工程も考慮に入れながら構築物全体の姿勢が制御されている。こうした繊細なコントロールは各所の沈下量や地盤変異などを一括でモニタリングしながら慎重に行われている。

《現場社員コメント》

田部井社員現場は課題の塊です。そのひとつひとつを皆で共有して力を合わせて解決すること。それが生産性向上の近道です。

髙橋社員自分で答えが出せない問題に直面した時は思い詰めて引きずらず、ほかの人の意見も聞いて突破口を探します。

重道社員作業員さんとの日常的なコミュニケーションを通して、現場のちょっとした情報も感じ取れるよう心掛けています。

田中社員鉄筋・型枠・生コン打設のサイクルのなかで、常にスケジュールを頭に入れながら、先を見越して動いています。

佐藤社員新入社員で覚えることがたくさんありますが、効率的な動きができるように考えながら取り組んでいます。

《作業所長コメント》

関東支店 土木工事部工事室
作業所長 菅原 一浩

菅原作業所長工事を経験する中で多くの課題に直面し、悩みながらも解決していく、この行為が人を成長させます。生産性向上のツールとなるICTやAIなどと併せ、迅速な判断や危機感について研鑽を重ね、業界の競争に負けない社員の能力向上に力を入れていきたいと思っています。従来、土木は経験工学といわれてきました。歳月を通して自然と身に付くそのような能力も大切ですが、これからの時代は必要とされる能力をおのおのが積極的に獲得していくことが大切だと考えています。

工事概要

工事名称 中川流域下水道終末処理場
第2沈砂池ポンプ棟築造土木工事
概要 [第2沈砂池ポンプ棟土木躯体]
地下4階/RC造
長さ:82.5m/幅:22.5m/深さ:32m
[ニューマチックケーソン]
掘削面積:1,856m²/掘削深さ:32m
ニューマチックケーソン設備工:一式
刃口金物工:25t/沈下掘削工:59,400m³
[躯体工]
コンクリート工
鉄筋構造物:34,902m³/無筋構造物:694m³
型枠工:28,970m²
鉄筋工:5,407t
工事場所 埼玉県三郷市番匠免3丁目地内
発注者 埼玉県
設計者 (株)三水コンサルタント
施工者 当社単独
工期 2015年2月~2019年8月 用途 下水処理施設