2000年7月19日

施工能率の向上と振動・騒音の軽減、粉塵・産廃の削減を実現

 戸田建設(株)(社長:戸田守ニ)は、居ながらの耐震補強工事に有利な、低振動・低騒音型の補強耐震壁を研究開発しており、平成12年5月、鋼管コッター(※1)を用いた補強耐震壁の構造実験および施工試験を完了し、その実用性を確認した。

 従来の耐震補強工事では耐震壁を増設する際、既存躯体(梁、柱)にドリルで孔をあけ、あと施工アンカー(※2)を挿入して固定し、壁の鉄筋をこのアンカー筋に重ねて配筋し、コンクリートを打設する工法をとっており、この場合ドリルの使用時に振動と騒音および粉塵が発生し、特に騒音は建物内の広範囲に伝わるため、居ながらの耐震補強工事での重大な問題点となっている。同社は、あと施工アンカーに替えて、鋼管コッターを用いることでその問題を解決した。

 鋼管コッターは、既製品の構造用鋼管(直径60mm~110mm)に鉄筋を溶接したもので、これを既存躯体に25~30mmのみこませ、梁・柱架構と増設する鉄筋コンクリート壁のずれ止めとする。

 鋼管を既存躯体に固定する方法は、まずコアドリル(※3)を用いて躯体に円形の溝(溝幅5mm~10mm)を掘る。コアドリルを使用するため、従来のドリルに比べて騒音・振動・粉塵の発生が軽減され、また、穿孔深さが浅いので、梁・柱の鉄筋を傷つけず、コンクリートのかぶり厚さの中で、任意の位置に鋼管コッターを設置でき、孔あけに要する作業時間が短縮され、施工能率が向上する。この溝に接着剤(エポキシ樹脂)を注入し、後から鋼管を挿入して接着剤の硬化を待ち、24時間後(翌日)増設壁の配筋を行い、コンクリートを打設して補強壁の工事完了となる。

 同社は鋼管コッターの工事に用いる施工機械と接着剤の開発について、日本ヒルティ(株)と共同研究を進め、コアドリルの刃先の改良、穿孔作業のシステム化、上向きでも垂れない接着剤などを開発し、平成12年3月に予備実験、5月に本実験を行った結果、鋼管コッターを用いた補強耐震壁は、従来のあと施工アンカーによる補強耐震壁に十分匹敵する構造性能を発揮することが確認され、また、既存躯体に仕上モルタルがある場合でも、鋼管コッターを使用した実験結果では、実用上十分使用可能であることが確認された。仕上モルタルの斫り作業がなくなることで、施工能率の格段の向上と、振動・騒音の低減、粉塵・産業廃棄物の削減が実現した。

 以上ように鋼管コッターを用いた補強耐震壁は、従来のあと施工アンカーを用いた補強耐震壁に対して、施工上大きなメリットを持っており、コスト上でも有利となる。

 同社は今後、病院建築、学校建築など居ながら耐震補強のニーズの高い建築にこの工法の適用を図っていく予定。また、鋼管コッターの使用範囲を拡大し、さらなる工法の展開を目指すとしている。

(※1)鋼管コッター
  コッターは突起物という意味を持つ。部材と部材の接合形式の一種。本工法では、鋼管をコッターとして使っている。詳細は文章中で説明。
(※2)あと施工アンカー
  既存の躯体と新たに設ける躯体との接合面で、両者間の力の伝達を行うために設けられた、ずれ止め用の鉄筋のこと。既存躯体に孔をあけ、鉄筋を挿入・固定し、増設側に所定の長さで定着する。
(※3)コアドリル
  既存の躯体から、円形状の試験片(コアと呼ぶ)を取り出す際に使うドリルで、円形の刃先を回転させて溝状に躯体を削る。刃先にダイヤモンドなどを付け、高速回転させるので、振動・騒音・粉塵の発生が少ない。

以上