2000年11月8日

完全なアイドリング・ストップによるCO2排出量削減率は 4.7%
NOx排出量削減率についてもデータを集積中

1.はじめに

 地球環境保全に対する社会的要請は年々高まっており、中でも地球温暖化防止は早急に解決すべき課題として企業においても積極的な取り組みが求められている。車輌により排出されるCO2ばかりでなく、NOx、SOx、煤煙(浮遊粒子状物質も含む)も大きな社会問題である。
 このような状況を受けて、戸田建設(株)(社長:戸田守ニ)では、地球温暖化および大気汚染防止活動の一環として、建設工事におけるCO2および大気汚染物質排出削減活動を進めており、昨年度よりアイドリング・ストップと建設機械、ダンプトラック(以下、ダンプという)の整備点検の徹底を中心に活動している。
 この中で、排出量を具体的かつ継続的に削減していくことが重要であり同社ではこの問題を克服するために「CO2および大気汚染物質排出削減管理システム」を構築するとともに建設機械、ダンプの運転状況をエンジン回転数で把握し、アイドリング時には警報を出す「CO2排出管理装置(ECEEMS:CO2 Exhaust Control Equipment for EMS)」を開発し、本年1月よりデータを収集した。さらに4月からは、CO2だけでなく幅広く大気汚染物質(NOx、SOx)を数量把握するため、この装置に排ガス分析計を組み込んだECEEMSIIを開発し、これらのデータも収集している。CO2および大気汚染物質排出削減管理システムに沿ってアイドリング・ストップ活動を実施する仕組みは(資料1)の通り。

2.CO2排出管理装置II(ECEEMSII)の概要

 本装置は、(資料2)に示すように建設機械、ダンプの運転状況を計測する部分と、マフラーから排出されるガスの濃度、流速等を計測する部分からなっており、どちらも時系列データとして自動計測できる。本装置による計測状況写真は(資料3)、計測事例は(資料4)の通り。

3.今年度の主な活動内容

今年度の排出削減活動の主要な内容は

(1)アイドリング・ストップの実施
(2) 建設機械、ダンプの整備・点検の実施
(3) 排出削減活動によるCO2、NOx、煤煙の削減率(量)評価方法の確立とその数量化そのための調査・測定項目(アイドリング時間率及びCO2削減率の調査は昨年度実施)

 イ)ECEEMSIIによるエンジン回転数、排ガス組成(NOx、CO2、SO2、CO)毎の濃度と排出量測定、煤煙濃度および燃料消費量測定
 ロ)全国の主要作業所における全エネルギー消費量調

4.調査・測定結果

 ECEEMSIIによる測定で得られた建設機械、ダンプのアイドリング時間率は表-1の通り。これは1日の運転時間が8時間とすると、ダンプで4.4時間、バックホーなどの建設機械で2.4時間になる。

4.1 アイドリング時間率(注1)

表-1 ID(アイドリング)時間率 (%)

建設機械 30 ダンプ 55

(注1)ID(アイドリング)時間率 = ID時間÷運転時間×100   (%)
ここに、運転時間=ID時間+実稼働時間(エンジンを切っていない時間)

4.2 アイドリング・ストップによるCO2削減効果

 調査・測定結果に基づき、アイドリング上限時間(注2)を変化させた場合のID時間率とCO2削減率(注3)は図-1の通り。ここで、完全なアイドリング・ストップ(図-1のアイドリング上限時間0secの場合)を実施することによるCO2削減率は、4.7%、300sec(5分)以上のアイドリングをストップすると1.7%という結果になった

全体のID時間率およびCO2削減
図-1  全体のID時間率およびCO2削減率

(注2)ID上限時間:この時間を超えたアイドリングを禁止すると決めた時間
(注3)CO2削減率 =(削減可能ID時間率×ID時燃費)÷
  {ID時間率×ID時燃費+(100-ID時間率)×実稼働時燃費}×100(%)

 ここで、CO2排出量=燃料使用量×炭素排出係数 削減可能ID時間率= (ID上限時間以上のID時間)÷運転時間×100 (%)

 これを基に1999年度の同社土木全体の排出量を求めると、49,000tC(化石燃料だけでは、27,000tC)となる。従って昨年度のアイドリング・ストップ活動(5分)によるCO2削減量は、化石燃料だけを考えれば、460tCになる。
 建設機械、ダンプの代表的機種である10tダンプ、0.7m3バックホーについてCO2削減率求めると、表-2のように10tダンプで7.0%、0.7m3バックホーで4.2%になる。

表-2 完全なアイドリング・ストップによるCO2削減率

  10tダンプ 0.7m3バックホー
ID時間率     ( % )
55
30
アイドリンク時 燃費 ( L/H )
1.6
1.9
  CO2排出量 ( gC/H )
4,100
4,900
実稼働時 燃費 ( L/H )
25.0
17.5
  CO2排出量 ( gC/H )
66,100
47,600
削減率       ( % )
7.0
4.2

4.3 NOx排出量とアイドリング・ストップによるNOx削減効果

 完全なアイドリング・ストップによるNOx削減率は表-3のようになる。ただし実稼働時のデータが建設機械、ダンプともに1台のみのため、今年度中にさらに測定データを積み重ねて、CO2と同様に削減率を求める予定。

表-3 NOX排出量と完全なアイドリング・ストップによるNOx削減率

  10tダンプ 0.7m3バックホー
ID時間率 (%) 55 30
アイドリンク時NOx排出量(gNO2/H) 50 190
実稼働時NOx排出量(gNO2/H) (150) (1,120)
NOx削減率  (%) ( 29) ( 6.7)

4.4 自主管理基準

 測定データに基づき、自主管理基準を設定し、これを越えた建設機械、ダンプについては再整備を義務づけることで次年度より活動する。自主管理基準値は全測定データの5%程度が再整備を義務づけられるように設定しており、現在までの約100台の建設機械、ダンプの測定から得られた暫定基準値は表-4のようになる。

表-4 暫定自主管理基準値

  排出量 煤煙濃度
(スモークスケール) 1)

Nox
(mg/s)

CO
(mg/s)
CO+CO2
(gC/s)
SO2
(mg/s)
ダ ン プ
26
51
0.97
0
今後データ収集

建設

機械

≦150PS
110
50
2
0

9
排ガス対策型は、
5

150PS<≦300PS
280
80
4.3
300PS<≦600PS
450
130
6.5

1)スモークスケールとは、煤煙による濾紙の光反射度を、0を無反射、10を完全反射として10段階で表示。

5.今後の予定

 今年度の活動を踏まえて次に示すように、CO2および大気汚染物質の排出削減活動の一層の充実と拡大を図っていく予定。

 (1) アイドリング・ストップおよび点検整備に関する目標値の強化
 (2) 上記以外の排出削減活動項目の追加実施
 (3) NOx、CO、CO2、煤煙の自主管理基準値に基づき、これを上回る建設機械、ダンプについては再整備を義務化。
 (4) データの集積により、削減率等の活動成果の信頼性向上
 (5) LCAの観点から、建設工事における使用材料・機械の選定から、作業所で発生する建設副産物(発生残土+廃棄物)の削減までを含めたCO2、NOx、SOxの総排出量削減活動の実施

《用語説明》

NOx: 一酸化窒素(NO)・ニ酸化窒素(NO2)など窒素酸化物の総称。
  自動車の排ガスや工場設備などから発生し、大気汚染の原因となる。
(ノックス)
SOx: 一酸化硫黄(SO)・二酸化硫黄(SO2)など硫黄酸化物の総称。
  大気汚染の原因となる。(ソックス)
EMS: Environment Management System(環境マネジメントシステム)の略称
SO2: 二酸化硫黄。無色で刺激臭のある気体。呼吸器を強く刺激して
  喘息を引き起こしたり、酸性雨のもとになる。
CO : 一酸化炭素。ディーゼルエンジン車輌の排ガス基準の一つ。
PS : Pferde Staerke(ドイツ語)の略。
  工業上用いられる仕事率の単位である馬力のこと。
日本では0.750キロワットを1PS(馬力)とした。
mg/s・mg/sec: 1秒間当たりの排出量(mg)
gC/・gC/sec: 1秒間当たりの炭素(C)換算排出量(g)
LCA: Life Cycle Assessmentの略称。製品や構造物の評価を、原料の調達から
  部品・部材の加工、製品・構造物の製造・建設、解体・廃棄に至るすべての過程で生じる環境負荷を分析して行うこと。この評価の一つとして、LCCO2評価がある。これは上記のすべての過程で発生する二酸化炭素の排出量をもとに行う。フロン、メタンなどの温室効果ガスの排出量も、温室効果に対する二酸化炭素量に換算して加えるLCCO2の他にLCC(Cost)、LCNO2、LCSO2などがある。
以上