2002年10月21日

 戸田建設(株)(社長:戸田守二)は、超高層スケルトン・インフィル住宅を対象とした「大型段差スラブ」を開発し、日本最大級*1の54階建・45階建のツインタワー超高層住宅で実用化した。

 循環型社会では、長寿命の住まいが求められており、それには、躯体をスケルトンに、仕上げや設備をインフィルとして、スケルトンとインフィルをできるかぎり分離するスケルトン・インフィル住宅、いわゆるSI住宅の考え方が適している。また、超高層住宅では、様々な広さや間取りの住戸を自由に配置できるように、柱や梁の無いフレキシブルな床組が求められている。そのため、超高層SI(スケルトン・インフィル)住宅の実現には、設備の配管スペースに対応した面積の大きな床スラブが必要になってくる。

 現在、同社が東京都東雲地区に建設中である我が国最大級*1の54階建・45階建の超高層住宅「Wコンフォートタワーズ」(事業主:三菱地所(株)・三菱商事(株)・菱進都市開発(株)、)では、「大型段差スラブ」(特許出願中)を採用して、フレキシブルな住まい、長寿命の住まいを目指している。 (*1:2002年1月現在、タワーマンションで1,149戸の規模は日本最大級です。)

 超高層SI住宅では、スパン8.5~10m、長さ25~30mの3つの住戸ゾーンを柱や梁のない大型スラブで支え、住戸の大きさや間取りの自由度を大幅に向上させている。

 スケルトン・インフィル住宅を目指して、浴室などの水廻りでは、水平配管スペースを床スラブの上に設け、縦配管スペースを住まいの外側に設置しており、一方、リビングルームなどの配管のない居室では、できるだけ天井高さを大きくするよう、スラブに水廻りとのギャップ、段差を付けたスラブとしている。この段差により、配管のある水まわりも配管の無い居室もフラットな仕上げにすることができ、バリアフリーという面でも、様々な世代が暮らせる長寿命の住まいを目指している。無柱・無梁の大型スラブに、SI対応の段差を設けたスラブが「大型段差スラブ」である。

 「大型段差スラブ」は、住宅の遮音性能を高めるため、スパンに対応した厚さのスラブとして、さらに、ひび割れやたわみを抑えるため、プレストレスを導入している。また、工期短縮と高所での現場作業量を低減するため、プレストレスは工場で導入するプレテンション方式を採用するとともに、大型プレキャスト板を用いた合成スラブとしている。

 プレキャスト板にはリブを設けて、部材性能の向上と材料の低減を図っており、リブにはT型リブタイプと逆T型リブタイプとがあり、T型リブタイプは、重量低減を図ることができ、リブ間の空間を配管スペースとして有効利用することで、住宅の天井を高くとることができる。一方、逆T型リブタイプは、間仕切り壁の取り合いが容易になる。

 「大型段差スラブ」の従来に見られない構造面での大きな特長は、
 (1) プレストレス導入用のPC鋼線の段差部分への定着方法(特許出願中)
 (2) 段差部分の梁型の接合方法(特許出願中) である。

 これらの独自の工夫により、次のような効果が得られる。
 (1)PC鋼線の定着は、PC鋼線の表面処理と段差部の配筋により、段差部におけるPC鋼線の付着力を向上させる独自の方法であり、この定着方法により、段差部分の寸法を小さくすることができる。さらに、PC鋼線の定着ロスによる大型スラブのひびわれ、あるいはたわみの増大を抑制できる。
 (2)段差部分の接合は、シヤーキーと接合筋により、床スラブの段差部にある梁型を連続させる独自の方法で、この接合により、大型床スラブの遮音性能を向上させることができる。

 PC鋼線の定着方法は、実大床スラブの鉛直載荷構造実験により、定着性能を検証するとともに、大型床スラブの荷重支持能力を確認した。常時作用する荷重のほか、地震時の上下地震動による荷重に対する検証も行った。また、大型段差スラブの遮音性能は、実大床スラブを用いた1層3スパン構造体を施工して、重量衝撃音試験を行い、目標性能を確認した。段差部分を接合して、居室部分の床スラブ厚さを水廻り部分より大きくすることにより、1枚の床スラブでありながら、居室部分の遮音性能が水廻り部分より向上することを実証した。

 この独自の「大型段差スラブ」の開発により、従来の小梁を用いた床組に比べて、床構造コストの約25%縮減、躯体サイクル工程の約20%短縮が可能になった。

 「Wコンフォートタワーズ」に採用した「大型段差スラブ」は、T型リブ・プレキャストスラブを使用したプレストレスト合成スラブで、大型段差スラブのスパンは9,500mm(梁芯間)、リブ部の合成スラブの厚さは最大370mmである。プレキャストスラブの幅は運搬可能な最大の幅とすることで、プレキャストスラブの部材数を減らして揚重回数の縮減を図り、1フロア4日サイクル工程の実現を目指している。現在、プレキャスト工場においてプレストレスを導入した段差付きのT型リブ・プレキャストスラブを製作中である。


段差付きのプレストレスト大型プレキャストスラブの製作状況

以上