2003年11月27日

~地震時の建物の揺れを低減する効果を確認~

 戸田建設(株)(社長:加藤久郎)および西松建設(株)(社長:國澤幹雄)は、地下連続壁と基礎杭からなる複合基礎工法の優れた耐震性能を実験により検証した。実験の実施に当たっては、全般に亘って時松孝次教授(東京工業大学大学院理工学研究科建築学専攻)に指導をいただいた。

 複合基礎工法は、建物を支える基礎杭の外周を鉄筋コンクリート造の地中連続壁で取り囲む工法であり、地下連続壁は耐震壁として地震に抵抗するとともに、支持杭として建物を支えることもできる。この工法では、基礎構造の剛性を高めることで、基礎自体に高い耐震性能を確保できることと同時に、建物全体の地震時の揺れを抑える効果もある。特に軟弱な地盤に揺れやすい超高層建築物などを建設する場合には、地盤と建物の揺れ方が近いため(共振現象)、揺れが大きくなるが、複合基礎工法の採用により建物の揺れが抑えられ、安全性の確保および居住性の向上につながる他、上部構造を含めたトータルの建設コストを低減できる。たとえば地震時の安全性確保のために、通常は鉄骨鉄筋コンクリート造あるいは鋼管コンクリート造で設計される超高層建築物に対して、同じ耐震性能を保持した上で、鉄筋コンクリート造での設計が可能となる。また、複合基礎では地震力の大部分を地下連続壁で負担できるため、内部の杭の性能は建物重量を支持するだけでほぼ十分となる。さらに、建物外周を囲むことで内部地盤の動きが拘束されるため、液状化を防止する効果も期待できる。

 この工法の有効性については、これまでも計算上では確認されていたが、実験で確認するには規模の大きな装置が必要となるため、困難であるとされてきた。今回、戸田建設および西松建設では、遠心載荷試験装置(西松建設(株)愛川振動衝撃研究所)を使用することで、実際の寸法に近い規模での性能を確認することに成功した。この実験装置は、高速で回転するアームの先に実験装置を搭載して遠心加速度を与えることで、縮小模型であっても実大サイズの構造物と同じ応力状態を再現できるため、重力場で実施される通常の模型実験などと比較して、実現象を高い精度で再現できる。

 今回の実験では、地球上での重力の50倍の遠心加速度を与えて実験を行っており、実験に用いた深さ25cmの土槽では、12.5mの地盤を再現したことになり、模型は20cm角であるが、建物の寸法としては10m角の規模の実験を行ったことになる。

 実験は、複合基礎を有する構造物の振動特性を把握するため、遠心振動載荷試験装置内に振動装置を搭載し、マグニチュード8クラスの海洋型の巨大地震まで加振する動的実験と、複合基礎の地震に対する抵抗メカニズムを把握するために、地震力を模擬した水平力ゆっくりと加える静的実験の2種類を行った。

 動的実験の試験模型は、軟弱な粘土地盤を模擬した地盤中に複合基礎あるいは杭のみの基礎を設置し、板ばねとおもりからなる建物模型を載せたもので、おもりの重量を変えることで、さまざまな高さの建物の振動特性がシミュレーションできるようになっている。今回は約40m、60mおよび100m相当の建物と同じ振動特性を有する3種類のおもりを用いた。その結果複合基礎では、特に地盤と建物の揺れ方が近い場合に、外周部もすべて杭基礎とした場合に比べて地震時の揺れを抑える効果が顕著であり、複合基礎の採用により合理化が可能であることを確認した。また、地下連続壁に囲まれた地盤は地下連続壁に追従した小さな揺れ方となっており、さらに同じ地震力に対して複合基礎内部の杭基礎の曲げモーメントはすべて杭基礎の場合に比べて約1/4となり、複合基礎により基礎構造の耐震安全性が大幅に向上することを確認した。

 静的実験では、砂地盤中に設置した基礎に、ジャッキを用いてゆっくりと載荷したが、複合基礎全体としては外周部もすべて杭基礎とした場合の2倍以上の剛性を有し、かつ複合基礎では加えられた力の9割以上を地下連続壁が負担しており、高い耐震性能を有していることが確認された。また、基礎構造の変位、地下連続壁や杭のひずみ計測により、地震力に対する地下連続壁および杭の各部分の抵抗機構を詳細に把握するとともに、地下連続壁に囲まれた中の地盤の挙動を把握し、複合基礎としての抵抗メカニズムが明らかになった。

 両社ではこの共同研究を平成13年より2年間にわたって実施したが、引き続いてコストパフォーマンスの向上を目指して、たとえば耐震性に対する効果を考慮した上で、壁長さを最適化したより合理的な工法(特許申請中)など、複合基礎工法の耐震性と施工性、コストに関する総合的な検討を進めている。また、今回の実験結果とあわせて複合基礎工法の合理化、適用の拡大を図って行くとともに、湾岸部などの軟弱地盤地域に建設される超高層建物に有効な基礎工法として提案していく予定である。


実験結果の例(動的実験)


実験結果の例(静的実験)


複合基礎の効果


試験土槽断面(動的実験)


遠心載荷装置全景(静止状態)

遠心載荷装置の概要

以上