2004年7月5日
戸田建設(株)(社長:加藤久郎)は、中層・高層SI(スケルトン・インフィル)住宅を対象としたアウトフレームHRC(エイチ・アール・シー)工法を開発し、13階建2棟、20階建1棟などで実用化した。
現在の循環型社会では、長寿命の住まいが求められている。それには、躯体をスケルトンに、仕上げや設備をインフィルとして、これらをできるかぎり分離するスケルトン・インフィル住宅、いわゆるSI住宅の考え方が適している。
中高層SI住宅では、柱や梁を住戸の外側に設け、戸境壁と床スラブから構成されるアウトフレーム形式の鉄筋コンクリート・ボックス構造(図1)が最適である。そのため、柱や梁の高強度化を進め、現場打ち工法からプレキャスト工法まで、工期や敷地条件に応じて最も経済的な構造工法を選択できる「アウトフレームHRC(エイチ・アール・シー)工法」を開発し、13階建2棟、20階建1棟などに適用したものである。
「アウトフレームHRC工法」では、鉄筋コンクリート(RC)造の柱や梁をできるだけ住戸の外側だけに設け、住戸を小梁のない大型スラブで支持している(図2)。浴室などの水廻りでは、水平の配管スペースを床スラブの上に設け、上下の配管スペースを住まいの外側に設置している。床は、オール二重床とするほか、リビングルームなどの配管のない居室では、できるだけ天井高さを大きくするように、躯体のスラブには水廻りとのギャップ、段差を付けた段差スラブとすることもできる。
本工法は、6階から20階程度までの中層・高層住宅を主なターゲットとし、工期や敷地条件に応じて最も経済的な構造工法を選択できるように開発したRC工法であり、その大きな特長は
(1) 超高層RC住宅で多くの実績を持つ「高強度RC工法」の採用により、住戸の外側だけにフレームを設け、柱や梁などの断面を縮減できる。
(2) 現場打ち工法からプレキャスト工法まで、工法メニューの充実により、様々な敷地において、希望の工期に応じた最も経済的な工法を選択できる。
ことである。
現場打ち工法からプレキャスト工法まで、戸境壁の工法メニューを図3に示すと、今回、特にメニューに加えた工法は、耐力壁のセミ・プレキャスト工法である。戸境方向の耐力壁は、長さが10m~15mと大きいので、プレキャスト工法では、プレキャスト壁が分割され、運搬・建て方、接合などのコストが負担になってくる。一方、現場打ち工法では、工期の短縮が課題となる。そこで、柱の際で壁を分割し、中央の壁部分のコンクリートを先行して打ち込み、壁型枠の解体後に、残りの壁と柱のコンクリートを打ち込む工法を開発した(図3の(B))。いわば、まさに現場で、プレキャスト壁を製造するので、セミ・プレキャスト工法と呼んでいる。この工法は、工場で製造されたプレキャスト壁の運搬・建て方がなく、鉄筋継手などプレキャスト工法特有の接合コストが不要であるので、プレキャスト工法による工期短縮、現場打ち工法によるコスト縮減の両方のメリットを生かせるものである。
セミ・プレキャスト工法による耐力壁は、先行構築の壁と後行構築の壁や柱が一体化することが必要であり、そこで、壁の接合には、当社独自の工夫による接合方法(特許出願中)を採用した。また、図4に示しますように、アウトフレーム形式の住宅では、内バルコニー方式となり、戸境壁には、避難開口を設ける事例が多く見られる。しかし、柱に近接した開口と鉛直接合部を有し、さらに梁を内蔵した戸境壁を対象とした構造実験は、ほとんど実施されていない。そこで、セミ・プレキャスト工法の開発では、大型3層耐力壁試験体による構造実験を行い、十分な耐震安全性を検証した(図5)。
そこでこのたび東京都大田区の13階建住宅2棟に、「アウトフレームHRC工法」を適用したもので、これらの住棟では、柱、梁に鉄筋先組の現場打ち工法、床にプレキャスト工法、戸境壁にセミ・プレキャスト工法を採用し、今年1月に上棟した。本工法の採用により、1フロア8日間の躯体構築が可能となり、在来工法に比べて躯体工期を概ね半減することができた。また、東京都江東区で建設中の7階から20階建の住宅7棟に本工法を適用した。20階建では、コンクリートの最大強度が60N/mm2、鉄筋がSD490という35階建クラスの超高層RC住宅で採用している高強度材料を使用して、アウトフレームのRCボックス構造を可能とした。この住棟では、柱、戸境壁に現場打ち工法、梁、床にプレキャスト工法を採用する計画である。
今後、「アウトフレームHRC工法」の実績を更に重ね、中高層SI住宅を実現する構造システムの充実をはかり、一層のコスト縮減、工期短縮を行い、フレキシブルな住まい、安心できる住まい、長寿命の住まいを目指してゆきたいとしている。

図1 「アウトフレームHRC工法」によるRCボックス構造のモデル

図2 「アウトフレームHRC工法」による住戸スケルトンの断面例

図3 「アウトフレームHRC工法」の戸境壁工法メニュー

図4 内バルコニー方式と避難開口を有する戸境方向のセミ・プレキャスト耐力壁

図5 大型3層試験体によるセミ・プレキャスト耐力壁構造実験
