2006年2月8日

 戸田建設(株)(社長:加藤 久郎)は、19階建から54階建の超高層RC(鉄筋コンクリート)造住宅11棟において、独自の制振技術(制震柱:特許工法)を適用して耐震性能を向上させてきたが、今回、高強度材料を用いた新しい制震柱を開発し、従来に比べて大幅に制振性能を増大できることを構造実験により実証した。

 近年、都市部では、風揺れに強く、経済的な超高層RC造住宅が数多く建設されている。戸田建設はフレキシブルな住まい、安心できる住まい、長寿命の住まいをテーマに、高品質の超高層スケルトン・インフィル住宅を実現する「Super HRC(スーパー・エイチ・アールシー)システム」を開発して、超高層RC造住宅に適用してきた。

 住戸計画の自由度の高いフレキシブルな住まいを実現するには、柱と柱の間隔(スパン)を大きくすることが有効だが、その反面、柱の数が減り、地震時に骨組の変形が大きくなることが危惧される。また、長寿命の住まいの実現には、耐久性とともに、地震時の骨組の損傷をできるだけ抑制することが求められる。そのため、より安心できる住まいの実現には、免震構造あるいは制振構造の採用が有効である。

 戸田建設は、耐震性能の向上のため、既に19階建から54階建の超高層RC造住宅11棟において、独自の制振技術「制震柱」を適用した実績がある。この制震柱を組み込んだ高強度RC造骨組は、ワイドスパンの超高層住宅をしっかりと支えるとともに、地震時の損傷を抑制できる、耐震性・耐久性に優れた構造である。

 「制震柱」は、制振デバイスを柱中央に組み込んだ戸田建設独自のRC造間柱(特許工法)である(図―1)。制振デバイスとしては、メンテナンスフリーや経済性の観点から、低降伏点鋼の採用実績が多い(図―2)。

図―1 高層RC造骨組と制震柱
図―1 高層RC造骨組と制震

図―2 従来の制震柱が設置された54階建超高層RC造住宅
図―2 従来の制震柱が設置された54階建超高層RC造住宅

 制震柱は、コンパクトな大きさのため、集合住宅の共用部分などに設けることができるので、高層住宅には適した制振部材である。その反面、その大きさの制約から、地震時のエネルギー吸収能力(以下、減衰力と呼ぶ)には限度があり、地震時の揺れを低減する効果(制振効果)を向上させるには、その設置数を増やすことが必要となっていた。

 そこで、今回、制震柱の減衰力を大幅に向上させるため、制振デバイスのパワーアップと、それを取り付けるRC造間柱の強度増大を可能とする新しい制震柱を開発した。

 制振技術が多く採用されている鉄骨造建物と比べて、RC造建物には制振技術を適用する上で大きな課題があった。それは、制振デバイスの取り付け方法と取り付け部材の補強方法である。RC造では、鉄骨造と異なり、制振デバイスのパワーを過大にアップすると、地震時に制振デバイスのずれや取り付け部材のひび割れが生じて、制振デバイスの効果が失われてしまうことが危惧されてきた。そのため、これまで、RC造では、制振デバイスのパワーアップには限度があり、コンパクトな大きさで、減衰力の大きな制震柱はなかなか実現しなかった。

 今回開発した制震柱では、従来のタイプに比べて、制振デバイスのパワーアップのため、

  1. 制振デバイスとして用いる低降伏点鋼のサイズを増大するとともに
  2. 制振デバイスの取り付けにU字筋を併用して、接合強度を増大する
  3. RC造間柱に高強度コンクリートと高強度鉄筋を使用して、耐力を増大するという制振デバイスの取り付け方法と取付け部材の補強に改良を加え、さらに、地震時に厳しい応力が作用する場合には、取付け部材の補強アップのため
  4. RC造間柱に鋼繊維を混入した高強度コンクリートを使用してひび割れを抑制することにより、制震柱の減衰力を大幅に向上させている(特許出願中)。

 新しい制震柱の地震時における性能検証のため、茨城県つくば市にある戸田建設技術研究所にて、構造実験を行った(図―3)。

図―3 新しい制震柱の構造実験
図―3 新しい制震柱の構造実験

 従来の制震柱と上記の改良点1)から3)を実施した制震柱の試験体の荷重変形関係の比較を図―4に示す。これらの実験結果から、従来に比べて大幅に減衰力が向上することが実証された。

図―4 従来の制震柱と新しい制震柱の荷重変形関係の比較
図―4 従来の制震柱と新しい制震柱の荷重変形関係の比較

 新しい制震柱の開発により、従来の制震柱に比べて、超高層住宅の制振効果を一層増大させることができ、制震柱の無い場合に比べて、大地震時の揺れを30~40%程度低減することが期待される。また、従来の制震柱と同等の制振効果を期待する場合には、設置箇所数を6割~7割程度にすることが可能となるため、設置コストを20~30%程度縮減することができる。さらに、設置箇所数の低減により、建築計画上の制約が小さくなるため、採用される超高層住宅の増加が期待される。

 最近、耐震安全性に関する社会的関心が一段と高まっているが、今後は、従来の制震柱に今回開発した新しい制震柱を高性能超高層RC造住宅「Super HRC(スーパー・エイチ・アールシー)システム」の制振メニューに加え、積極的に超高層住宅市場に展開していきたいと考えている。

以上