2006年2月28日

戸田建設(株)(社長:加藤久郎)は、手術の実施スケジュールをリアルタイムで編集、院内に公開し、高密度な手術スケジュールの管理を実現する、「手術進捗情報システム」を開発し、本年1月に新築開院した東海大学医学部付属病院に実装した。合わせて、それぞれの手術室があらゆる術式に対応できる「コンバーティブルな手術室」を開発し同病院に設置、システムと建築の相乗効果により手術室の高効率な運営を実現した。

2003年4月から特定機能病院における入院医療費の包括化が始まっている。対象は全国の大学付属病院(特定機能病院)、国立がんセンター、国立循環器病センターの計82病院の一般病棟への入院患者で、診断群分類によって決められた定額の入院料を支払う仕組みである。この、包括支払制度の導入が進む中、手術などは出来高払い制を残しており、今後手術室運営の効率化が医療機関の収益に大きな影響を与えることが予想される。

手術の件数が増えていけば収益が増加することになるが、それを実現するには手術室の運営効率を上げていく必要がある。「手術進捗情報システム」は手術室の運営効率を引き上げることに貢献する。

一般的に手術は、余裕を持ったスケジュールが組まれる。場合によっては予定よりも長くかかってしまうことや、時刻どおりに開始できないことなどがあり、当日になって遅延が発生することが稀ではないことがその要因となっている。さらに救急病院などでは緊急手術が挿入されることもあるため、当初から密なスケジュールを組むことはリスクを伴うことになる。一方、手術が予定よりも早く終ることや、直前に中止になることもあり、手術室が空きになる場合もある。「手術進捗情報システム」は当日の手術予定および手術の進捗状況、変更情報をリアルタイムで院内に公開するシステムである。これを活用することにより、手術の進捗状況が変化した場合や緊急手術が挿入された場合などに即座に手術スケジュールの変更が可能であるため、あらかじめ確保していた余裕分を削り、密なスケジュールを組むことができる。また、予定よりも早く進捗した場合は、後続の手術を繰り上げることで、遅くまで掛かりそうな手術の開始時刻を繰り上げるなどの操作も容易に行うことができる。スタッフも不必要な待機をしないで済むため、その時間を他の業務に充てられたり、不要な時間外勤務を削減することにも貢献する。

手術スケジュールは手術管理室、各手術室の他手術室廊下に設置したタッチパネル式のモニターにも表示される(図-1)。縦軸に手術室番号、横軸が時刻となっており、各手術が開始時刻と終了時刻を示す帯となって表示される(図-2)。

図-1 手術廊下端末
図-1 手術廊下端末※

図―2 スケジュール表示画面
図―2 スケジュール表示画面

各手術の帯を指で触れるとその手術の詳細情報が表示される。そこには患者情報、術式、麻酔方法、担当スタッフ、病棟情報などが表示されており、手術室周りのスタッフはそれを見て手術の情報を確認する(図-3)。また、全ての手術室にはWEBカメラが設置されており、本システムからリンクして手術室内の様子を確認することができる(図-4)。

図―3 詳細表示画面
図―3 詳細表示画面

図―4 手術室WEBカメラ画像
図―4 手術室WEBカメラ画像

システム全体を統括するサーバは手術管理室に置かれている(図-5)。手術管理室では廊下と同様の画面が表示されているが、ここではスケジュールを変更する機能を持っている。画面上の手術の帯をドラッグすることで、手術開始時刻の変更や、別の部屋への移動などができる。このとき、画面では各手術室の空き時間が見た目でわかるように表示されているため、空いている手術室と時間を容易に見つけることができる。さらに、これらの情報は、病棟を含めた院内のすべての病院情報システム用端末でも閲覧可能であり、院内のどこからでも、手術の進捗状況や変更情報、そして手術室内の様子を確認することができる。

図―5 手術進捗情報システムサーバ
図―5 手術進捗情報システムサーバ※

しかし、予定手術を他の手術室に変更するには、変更後の手術室が当該手術に対応可能であることが必要である。戸田建設は、あらゆる術式に対応できる「コンバーティブルな手術室」の設計手法を確立し、同病院に適用した。手術室の実大モックアップを作り、現実の手術室とまったく同じ環境を整備、同病院の協力の下、延べ4日間に渡り実際の手術スタッフによる検証作業を行い、複数の術式に対しベッド、術者、麻酔医、看護師、機器類などのレイアウトや動線などの確認を行った。それによって得られた情報を基に設計された「コンバーティブルな手術室」を、同病院に23ある手術室のうち19の手術室に採用した。

これ以外にも手術室の運営を効率化するための数々の工夫を施した手術室は、今年1月に開院した同病院で既に使用され、開院1ヶ月にして徐々にその効果が現れ始めている。旧病院の時と同じスタッフ体制でありながら、前年同時期に比べ、手術件数が約2割増加している中で手術の延べ時間は横ばいとなっており、平均手術時間は減少している。また、日々の手術終了時刻が早まる傾向も見え始めている。手術スケジュールにはまだ余裕があり、スタッフがこの環境に慣れてくれば、現状よりも手術件数が増加することが期待できる。

戸田建設は設計、施工という分野だけでなく、情報システムという切り口からも医療施設の最適化をはかり、さらにそれを設計、施工に反映させて、患者にとっても医療従事者にとっても、さらに医療機関にとっても最適な医療環境を提案していく方針である。

※ 図-1、図-5の画面内画像ははめ込みによるものです。

以上