2006年5月26日


戸田建設(株) (社長:加藤久郎)と西松建設(株) (社長:國澤幹雄)は、(独)土木研究所と共同で、繊維補強吹付けコンクリートを用いた既設トンネルの薄肉補強工法を開発しました。
本工法は、地山土圧などによる変状(ひび割れ等)が発生したトンネルの耐荷力および機能を強化・保持することを目的として開発し、実大実験による補強効果を検証しており、内空断面に余裕がない場合でも十分な耐荷力を低コストで実現できます。

<背景>
社会資本施設を「大切に、長く」供用していくことが求められていますが、限られた予算で既設構造物の長寿命化を図っていくためには、効率的、効果的な補修・補強技術の開発が急務となっています。
戸田建設(株)と西松建設(株)では、平成11年10月の業務提携以来、共同研究テーマの一つとして、コンクリート構造物の長寿命化を図ることを目的とした維持管理技術の開発を実施しています。
その一環として、両社は、(独)土木研究所と共同で、平成15、16年度の2年間にわたり、既設の変状したトンネル覆工に対する経済的で効果的な補強工法を開発し、本年3月に共同研究の成果を報告書としてとりまとめました。

<技術の概要>
今般ご紹介する技術は、合成繊維補強吹付けコンクリートを用いた補強工法技術で、補強のため覆工厚さを薄くできるため、既設トンネルの内空断面に余裕のない場合でも、低コストで十分な補強効果を実現できます。
本工法では、新しく開発したポリプロピレン短繊維を混入した繊維補強コンクリートを既設覆工内面に吹き付けることにより、覆工コンクリートに曲げ靭性を付与して十分な剥落防止効果を確保します。なお、既設覆工との一体性の確保にはアンカーと溶接金網等を用います。
本工法の特長は以下の通りです。

1.補強コンクリートを薄肉化
高強度コンクリート(圧縮強度36N/mm2以上)をベースとした繊維補強吹付けコンクリートを用いることで、補強に必要なコンクリートの薄肉化を実現(標準巻厚125mm)しました。このため、トンネルの内空断面にあまり余裕がない場合でも、補強が可能となります。

2.工事コストの縮減
従来の繊維補強コンクリートと比べて材料費を低減でき、従来の吹付け補強工法と比較すると工期短縮も可能なため、工事全体として30%程度のコスト縮減が期待できます。

3.新素材を採用
新しく開発したポリプロピレン短繊維(十字断面,換算直径0.7mm×30mm,標準混入量0.3vol%)をコンクリートの補強材とすることにより、吹付けコンクリートの靭性を増大させ、剥落防止効果を向上させます(図-1参照)。この新開発のポリプロピレン短繊維は、従来のビニロン繊維等と比較して10~30%程度安価であるため、繊維混入によるコストアップは最小限に抑えられます。

4.補強工事の工期を短縮
急結剤を用いた吹付け施工を行うため型枠が不要となり、内巻き工法と比較して工期の短縮が可能です。したがって、緊急工事のような工事期間が比較的短い場合には特に有効です。

5.高い施工の自由度
吹付け範囲を任意に設定できるため、一部供用下のトンネルでの施工など、トンネル占用形態に応じた施工が可能です。また、補強箇所の条件に応じて、最適な吹付け厚さおよび補強鋼材量を設定することができます。

<実大実験による性能の実証>
本工法については、(独)土木研究所における実大規模の実験により、施工性の確認を行うとともに、補強効果を検証しました。 繊維補強吹き付けコンクリートの厚さを150mmで施工した今回の実大載荷実験では、既設の覆工コンクリートの約2倍の耐荷力が得られ、本工法の優れた補強効果が実証されました(図-2参照)。

<今後の展開>
今後は、補強工法にとどまらず、二次覆工不要なシングルシェルやNATM工法の一次覆工などへの適用も視野に入れて、国土交通省、地方自治体、各高速道路(株)を始めとした発注側各企業者へ積極的な技術提案・営業展開を図り、実際のトンネルへの適用を図っていく予定です。

(a)繊維の形状(b)繊維の断面
図-1 新開発のポリプロピレン短繊維

(a)トンネル覆工載荷実験装置の全景

(b)実験状況

(c)載荷実験の概要(d)試験体断面の仕様 

(e)載荷実験の結果
図-2 実大覆工載荷実験の概要と結果

以上