2009年2月25日
戸田建設(株)(社長:井上舜三)は、建設機械の低周波騒音をアクティブ消音技術で低減する技術「TANC(タンク)」を開発し、実験で効果を確認しました。掘削重機騒音では63Hz帯域において-27dBの低減効果、発電機では50Hz帯域において-17dBの低減効果が得られました。今後、建設現場においての過酷な使用条件にも耐えうるものに改良し、積極的に建設現場で使用していく予定です。なお、この技術にはTOA(株)(本社:兵庫県神戸市、社長:吉川隆典)のアクティブ消音システムを一部採用しています。
※TANC(タンク):戸田式アクティブノイズコントロールの略
開発の背景と課題
環境省から報告された「平成18年度騒音規制法施工状況調査」によれば、建設作業騒音に関する苦情件数は過去5年間で1,200件以上も増加しており、平成18年度においては全国で約5,500件にのぼります。また,近年,建設作業騒音の騒音苦情全体に占める割合が増加傾向にあることからも,建設工事における騒音対策はこれまで以上に重要な問題となっています。従来の建設工事騒音対策としては、遮音壁や防音シートの設置が挙げられます。しかし、透過損失や回折に伴う減衰効果は高周波数帯域の音圧レベル低減には大きな効果がみられるものの、低周波数帯域においては明らかな効果がみられないのが実状であり、その低周波数帯域での低減が課題とされていました。低周波数帯域の騒音低減手法としては、スピーカー等の2次音源より放射される逆位相の音によって原音をキャンセル消音するアクティブ消音技術(ANC : Active Noise Control)が知られています(図-1参照)。ANCの屋外騒音への適用については、これまでにもいくつかの報告がなされていますが、その多くは遮音壁にANCを付加する形態や局所空間の制御について示されたものであり、空間的、時間的変動が複雑な建設工事の発生音源そのものへのANCの適用事例は今までありませんでした。

図-1 アクティブ消音の原理図
本技術の概要と特徴
建設機械から発生する騒音のほとんどはエンジンから発生し、その排出口であるマフラーから外部に出ています。このマフラーから出ている音をマイクロホンで拾い、その音を打ち消す逆位相の音を消音制御装置で発生させ、マフラー付近に設置したスピーカーから出すことにより、騒音を打ち消しています。本技術のシステム構成は、音源音をとらえるためのマイクロホン(センサマイク)とANCによる制御効果を監視するマイクロホン(エラーマイク)の2本のマイクロホンを設置する複雑なフィードフォアード方式ではなく、エラーマイク1本で行う簡易なフィードバック方式を採用しています。
騒音源であるマフラーとスピーカーの位置は物理上同一とはできないため、単に騒音源の逆位相の音を作るだけでは消音の効果が出ません。そのためマフラー、エラーマイク、スピーカー、周囲の音環境の状況も考慮するとともに、作業状況によって騒音が変化するような建設機械に特化した適応制御をかけています。そのため、エンジンをふかすことにより変化する騒音に対しても、敏感に対応することができるばかりではなく、通常のアクティブ消音では、あるポイントでは効果があるものの、別の場所では逆に騒音が大きくなるというような場合がありますが、本技術ではどの方向でも同じような効果が出ることが確認されています。また、アクティブ消音はその原理上、高周波数帯域に対してはあまり効果が期待できませんが、建設機械や発電機から発生するエンジン騒音はメーカー側ですでに一般的な騒音対策が取られていることもあり、この低騒音型建設機械から発生する騒音には特定の低周波数帯域に音のピークがあります。アクティブ消音は、この低周波数帯にピークのある騒音を消します。
この技術を使うことにより、掘削重機騒音(0.7m3クラス)では63Hz帯域において-27dBの低減効果(図-2参照)、発電機では50Hz帯域において-17dBの低減効果(図-3参照)が実験により確認されました。ただし、この効果は低周波帯域だけでの低減効果であるため、建設機械によっては機械のそばにいる人には、高周波数帯域の騒音によりその低減効果が感じられない場合もあります。しかし、工事現場周辺の近隣の人たちにとっては、高周波数帯域の騒音は仮囲いや建物の外壁でほとんど遮断されるため、クレーム問題となっているのはこれまで遮音がほとんど不可能だった低周波数帯域の騒音でした。これをこの消音技術により低減でき、環境にやさしく、しかもクレームが低減することを期待しています。今回の技術開発はまだ基礎技術のレベルであり、今後建設現場に積極的に利用していくためには、小型化、防水・振動・粉じん対策を施し、建設機械に簡易にセットでき、丈夫な製品として商品化を図っていく予定です。

図-2 掘削重機の場合。エラーマイク地点での音圧レベル

図-3 発電機の場合。エラーマイク地点での音圧レベル

写真-1.TANCのセット状況

写真-2 発電機にセットしたTANC

写真-3 発電機の上から見た状態
以上
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