2010年6月11日
戸田建設株式会社(社長:井上 舜三)は、山岳トンネルの地質不良区間における支保工脚部の沈下対策として、現場で簡易に適用可能なパイプ式ウィングリブ(YMウイングコーン、株式会社マシノ製作)を採用し、無対策の場合に比較して50%に及ぶ沈下抑制を実現し、地山の安定性を確保しました。
山岳トンネルの脚部補強工としては、支持面積を増加するウィングリブ、上半断面を閉合する上半仮インバート、脚部下方の地山補強や支持杭を構築する脚部補強ボルトやパイルなどが採用されています。しかしこれらにおいては、施工の安全性、対策効果の即効性、作業性・経済性などが課題として残されていました。
そこで、より汎用性が高く経済的な対策工を選定するため、施工の簡易性と経済性から初期の対策工としては有効である「支保工脚部の拡幅」に着目しました。その際、鋼製支保工に補強鋼材を溶接加工して脚部面積を拡幅する従来のウィングリブでは、工場での加工が必要となるため緊急時に早期の対応ができないことから、パイプ式のYMウイングコーンを採用しました。
YMウイングコーンは、取付けが容易な補強材(厚さ3.2mm 鋼板を円錐台形筒状に加工、底面径485mm、)で、鋼製支保工に装着しその内部に吹付けコンクリートを充填することで、脚部支持面積を拡大して沈下抑制を図ることができます。施工時の後付け型工法のため経済的であり、広い仮置きヤードを必要としないことから場内にストックすることが容易となり、緊急時においても対策時期を逸することなく施工が可能となります。(写真1、図1)

写真1:YMウイングコーン及びその設置状況

図1:YMウイングコーン概略図
国土交通省中国地方整備局三次河川国道事務所管轄の中本谷トンネル工事で当工法を採用しました。坑口部の不良地質区間における想定外の内空変位増大の中で、特に顕著となってきた脚部沈下に対応したものです。
事前の数値解析による予測では、対策工のない場合に比べて約50%の沈下抑制効果が期待され、実施工に当たっての各種計測結果から、それを裏付けることができました。また、脚部沈下が抑制されることで支保工に確実な反力(応力)が生じ、支保工本来の地山保持機能が有効に発揮されていることも確認しました。(図2、図3、表1)
さらに、ウィングリブ付き支保工と比較して軽量であるため施工性が良く、安全で確実な支保工建込みを可能としました。
戸田建設では、施工段階での予期せぬ地質不良部の出現等に対しても、即効性のある簡便な脚部補強対策として当工法の活用を目指します。

図2:中本谷坑口部地質不良区間の施工図

図3:初期沈下量の推移
| YMコーンなし | YMコーンあり | |
|---|---|---|
| 沈下計測(図2) | 初期変位は15mm程度で5日間程度変位が継続する。最終変位28mm。 | 初期変位は10mm程度、収束傾向が早期に現れ最終変位は13mmに抑えることが出来た。 |
| 支保工応力 | 脚部沈下により支保工へ応力が作用していない。特に山側脚部が顕著。 | 脚部が支持されているため支保工に応力が伝わっている。設置しない区間と比べ3倍程度を確認。 |
表1:計測結果による効果比較表
工事概要
| 工事名称 | 尾道・松江自動車道 上本谷外トンネル工事 |
|---|---|
| 工事場所 | 広島県庄原市口和町 |
| 発注者 | 国土交通省中国地方整備局三次河川国道事務所 |
| 施工者 | 戸田建設株式会社 |
| 工期 | 平成20年2月29日~平成22年6月30日 |
| 工事概要 | 工事区間1,000mの内、166mの中本谷トンネルと680mの上本谷トンネルの2本を主な工事とします。トンネル工事は発破掘削のNATM工法で施工します。
1.中本谷トンネル(延長166m の内トンネル区間149m 全線D パターン) ・明り巻き17m、坑門2基(起点側は斜坑門) 2.上本谷トンネル(延長680mの内トンネル区間601m) ・明り巻き (起点側)37m+(終点側)42m=79m、坑門2基 残土運搬総量73,640m3、インバート総延長385m/750m 3.明り工事(両トンネルの坑口部 掘削工19,000m3) ・中本谷トンネル…深礎杭φ3.0m×3本、φ2.5m×4本、抱き擁壁2基、ブロック積み、吹付け法枠など |
以上
