2017年12月5日

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)と古河ロックドリル(株)(社長:三村 清仁)は、山岳トンネル工法(NATM工法)における軟弱地山の天端安定対策として開発した「フォアプレート工法」を、施工中の道路トンネルに適用しました。

本工法は山岳トンネル工事の汎用機であるドリルジャンボのガイドセル(削孔機構部)に特殊改良を加えた鉄矢木打撃装置を用いて、削孔水を使用せずに天端斜め前方に鉄矢木を打設するものです(特許出願済:特願2016-165363、図-1,図-2参照)。
低強度で軟弱な地山の天端安定対策として、本工法を採用することにより、削孔水による地山の劣化や軟弱化を生じさせることなく、安全かつ施工性に優れた対策を実施することができます。

図-1 フォアプレート工法

⇒上記②鉄矢木打設のステップは従来工法の3工程から1工程に短縮(表-1参照)

図-2 本工法に使用する鉄矢木の形状

※1)切羽:トンネル最先端部。軟弱地盤では、掘削に先立ち、あらかじめ切羽の天端斜め前方(トンネル進行方向)に、ボルトや鉄筋等の補強部材を打設し、天端安定対策を講じた上で、トンネル掘削を進めて行くことが多い。

1.開発の背景

軟弱地山の天端安定対策としては、ボルト等を斜め前方に打設する充填式フォアポーリング工法※2)が 一般的です。
しかし、この工法は削孔水を使用するため、砂質土等の軟弱地山の場合、天端斜め前方の地山をさら に緩める恐れがあることや、削孔時に孔壁が崩れ、モルタルの充填不足やボルトの挿入が困難になるな どの課題がありました。
一方、鉄矢木による天端安定対策※3)は従来から採用され、その効果が確認されてきましたが、打設方 法が人力打撃であり、切羽に近接した作業となるため、苦渋労働と共に労務災害の発生リスクが高い作 業でした。
「フォアプレート工法」は、これらの地山安定性、作業環境および労働安全性の課題を一挙に解決し た工法です。

※2)充填式フォアポーリング工法:①土砂排出のための削孔水を使用し、ドリルによりボルト挿入用の孔を穿ち、②定着材充填、③ボルト挿入の順に3工程で施工する工法。

※3)鉄矢木による天端安定対策:鉄矢木を地山に打ち込む1 工程で施工する工法。

2.フォアプレート工法の特徴

  • 本工法では、ドリルジャンボに特殊改良※4)を加えて作製した『鉄矢木打撃装置』を使用します。
  • 同一サイクルで行われるロックボルト施工時は、本装置を装着したままで施工可能です。
  • あらかじめ削孔することなく、鉄矢木を直接、地山に挿入する工法のため、水を必要としません。
  • 機械化により、作業員は切羽前面で作業する必要がなく、安全な場所で鉄矢木をセットし、ドリル ジャンボのオペレータがレバー操作により鉄矢木を打設します。
  • 強度発現までの時間を必要とするモルタル等の定着材を必要とせずに1工程で設置できるため、施 工サイクルが短縮されるとともに、打設完了と同時に天端安定効果が発揮できます。
  • N値の小さい砂質土や強風化花崗岩(マサ)や注入の施工が困難な粘土、シルトなど、軟弱で水によ り劣化しやすい地山などに適しています。

※4)特殊改良:ガイドセル部(削孔機構部)に新開発の特殊セントラライザ、特殊アタッチメント等を装着するだけの簡便な改良で、削孔装置を鉄矢木打撃装置に変換します(図-3 参照)。本来、削孔装置であるガイドセルは、駆動部となるドリフターの回転力・打撃力・押し込み力により削孔作業を行いますが、上記改良により打撃力と押し込み力だけを鉄矢木に与える装置に変換します。

図-3 フォアプレート工法に使用する鉄矢木打撃装置

3.フォアプレート工法の実施工※5)

図-4 適用箇所の支保パターン

(施工中のトンネルに初適用)

鉄矢木打撃装置の有効性、適応性、施工能力等を確認するため、施工中の二車線道路トンネル(図-4 参照)に適用しました。

※5)適用箇所の地質は、N 値2~6 のローム層。土被り4m 程度の坑口部の支保パターンDⅢ a(図4:吹付けコンクリート25cm、鋼アーチ支保工H-200、ロックボルトL=4.0m×10本)に適用しました。

写真-1 鉄矢木打撃装置の装着状況

写真-2 鉄矢木の打設状況

(打撃装置のガイドセル装着)

打撃装置のガイドセル装着は、ドリルジャンボを使用しない掘削作業時の概ね1時間以内で完了するため、施工サイクルへの影響はありませんでした(写真-1 参照)。

(鉄矢木の打設時間)

1本あたりの施工時間(ガイドセルへの鉄矢木セット~位置決め~打設~移動)は約3分、全体(21本)では準備・片付け10分を含め73分となり、充填式フォアポーリング施工時間の約半分の短い時間で施工できることを確認しました(表-1参照)。

(打設時の打撃圧)

本地質条件において、ドリフターの打撃能力15MPaに対して、打撃圧5~9MPa程度の軽打撃による施工が可能であり、且つ部材損傷等のトラブルも生じなかったことから、本打撃装置は土砂地山において十分な施工能力を有するものと考えられます。

表-1 本工法と従来工法の相違点

工法名 フォアプレート工法 充填式フォアポーリング工法
設置方法 鉄矢木打設の1工程 水削孔⇒定着材充填⇒
ボルト挿入の3工程
材料 規格寸法 鉄矢木(15型 L=1.4~1.6m) 異形棒鋼(D25、L=3m)
重 量 4.89kg/m(6.8~7.8kg/本) 3.98kg/m(11.9kg/本)
曲げ剛性 EI=91.4 N・mm2 EI=38.4 N・mm2
支持面積 15cm(@60cmで25%) 4.5cm(@60cmで7.5%)
適用土質 玉石を含まない軟弱地山 ほぼ全土質・岩質に対応
施工時間※6) 73分 136分
工費(材料費) 1.5千円/本 2.2千円/本

※6)2車線道路トンネルにおいて上半アーチ120°範囲の@60cm、21本/mの1ブーム施工時間。
フォアプレート工法は実施工における実績値を、充填式フォアポーリング工法は『平成28年度 土木工事標準積算基準書』に準拠した数値を示す。

4.今後の展開

実施工を踏まえ打撃装置の改良を加えることで、本工法のさらなる安全性および施工性の向上を図り、トンネル工事において施工機会の多い、坑口部や小土被り部等の軟弱な地山や強風化花崗岩(マサ)等の地山条件において、今後その採用を積極的に提案していきます。