2018年6月4日

戸田建設(株)(社長:今井雅則)と太洋基礎工業(株)(社長:加藤行正)と富士化学(株)(社長:河本嘉 信)は、従来よりも注入効率を高めた薬液注入工法「ハイグリップグラウト工法」を開発しました。薬液 注入工法は、地盤中に注入した薬液によって基礎地盤の強化や既設構造物等の液状化対策を行うもので、 このたび、フィールド実証試験で本工法の有効性を確認しました。

削孔状況

改良体確認

写真1 フィールド実証試験

1.開発の背景

近年は都市部を中心に供用中の既設構造物直下の地盤強化や液状化対策のニーズが増えており、このような困難な条件下での地盤改良工事には、通常、薬液注入工法が用いられます。従来用いられている地山パッカ方式の薬液注入工法は、ボーリングマシンによる地山の削孔後に袋体パッカを挿入して膨らませ、袋体パッカを地山と密着させた状態で薬液注入するものです。削孔と薬液の注入作業を別工程で行うため、薬液を所定の位置に確実に注入することが可能であり、また、近接構造物への影響が少ない工法としてこれまでに多くの実績を有しています。
しかしながら、ボーリング削孔後のケーシング引抜き時に掘削安定液などの孔壁保護材が無いため、土質種別によっては、薬液吐出口付近の孔壁面の崩壊や地山と袋体パッカの密着性不足による薬液の漏れ出しなどの課題がありました。

※ 薬液の漏れ出しを防止するためにパッカと呼ばれる袋体を地山に定着させる注入方式

2.本工法の特長

本工法の概要と施工手順は以下のとおりです。従来の課題を克服し、さらに直径φ2.0~2.5mの大口径の改良体(薬液によって強化された地山)の造成が可能となりました。

  1. (1)特殊シール材による孔壁保護と浸透面積確保の両立
    薬液と反応し流動化する特殊シール材をボーリング孔に予め充填することで、ケーシング引抜時の孔壁崩壊を防止しながら、薬液注入時に十分な浸透面積を確保することが可能となりました。
  2. (2)2層構造の袋体パッカ(ハイグリップパッカ)による薬液の漏れ出し防止
    袋体パッカを2層構造(布製パッカの内側に伸縮性の高いゴム製パッカを設置)とすることで、地山との密着性を高め、薬液の漏れ出しを防止します。また、注入外管と袋体パッカの結束に2種類の鋼製リングを用いることで、袋体パッカの耐圧性能が従来の2倍程度まで向上し、高水圧での注入が可能となりました。
  3. (3)薬液吐出口の増設による広範囲で均一な薬液注入
    浸透注入では、薬液吐出口から離れるほど注入圧力が減衰し、注入効率が低下します。本工法では、パッカ間に2箇所の薬液吐出口を設けることで、薬液浸透源全域から圧力減衰の少ない均一な注入が可能となります。

図1 工法比較図

図2 ハイグリップグラウト工法の施工手順図

3.フィールド実証試験

フィールド実証試験の対象地盤はN値5~10程度のシルト混り砂層。改良深度3~5mで薬液を注入し、鉛直削孔で平面4体×鉛直2体=8体(改良率100%、目標改良強度100kPa)、斜め削孔で平面3体(改良率52%(接円)、目標改良強度50kPa)の改良体を造成しました。注入完了28日後に改良体を発掘し、いずれも改良直径φ2.5m以上で、所定の改良体品質を満足することが確認できました(添付資料参照)。
また、別途実施したフィールド実証試験では、注入管周りからの薬液の漏れ出しがないこと、および、従来工法と比較して30%程度の注入圧で広範囲な浸透注入が可能であることが確認されました。

4.今後の展開

当社は、本工法が一般に広く活用されることを目指し、本工法の技術マニュアルの整備を進めるとともに、新技術情報提供システム「NETIS」への登録を予定しています。
なお、本工法の開発は、(大)岐阜大学の監修と技術指導によるもので、調査・設計・施工管理手法を一体化した地盤改良システムとして、引き続き、産学共同で技術確立を図ります。

参考資料

フィールド実証試験概要図および改良体出来形

単位:mm

平面図

断面図