想いに応える

一つひとつのソリューション すいすいと渋滞解消~すいすいMOP工法~ 国道2号岡山市内立体高架橋工事 慢性的な交通渋滞が起きている交差点。そこを立体交差化することは、利用者や周辺の方々の願いでした。「すいすいMOP工法」は、工事中の渋滞の発生を抑えながら、短工期で交差点を立体化します。 皆様のニーズとわれわれの想いが結実しました。

設計チーム主要メンバー

浅野 均

アーバンルネッサンス部 部長

小林 修

アーバンルネッサンス部技術チーム 主管

すいすいMOP(モップ)工法とは

―「すいすいMOP工法」とはユニークな名前ですが、どのような工法なのでしょうか?

浅野すいすいMOP工法は、戸田建設(株)と三菱重工鉄構エンジニアリング(株)が共同開発したもので、慢性的な渋滞が発生している交差点を短期間に立体交差化する技術です。

小林すいすいMOP工法の『MOP』とは、高架橋の上部工技術であるモジュール桁構造のM、下部工技術であるピア施工法のPを取ったもので、ピアの上にモジュールをのせる、つまりModule On Pierを略して『MOP』としました。

インタビュー

イメージ図

―では、『すいすい』はどういう意味ですか。

小林『すいすい』とは、短期間ですいすいっと立体交差化を完成させるという意味が込められています。

―なるほど、単純明快な意味を名称に付けたのですね。(笑)
具体的に従来と比較してどのくらいの期間が短くなるのですか。

小林交差点を立体交差化させる場合、従来工法では、概ね2年程度の工事期間が必要でしたが、この工法では、従来工法の1/2以下の工事期間で完成できます。

浅野このすいすいMOP工法には、「モジュール桁工法」、「橋脚柱先行建て込み工法」および「タイロッド式擁壁工法」などの要素技術があり、これらの技術を活用することで、工期短縮を図るとともに、工事に伴う交通渋滞(2次渋滞)を大幅に緩和することができます。

―確かに道路上にて行う工事は高架橋工事ばかりでなく、長期間に亘り交通渋滞を発生させる場合がありますね。施工中の交通渋滞の緩和は、周辺の住民や利用者にも喜ばれますね。

小林そうですね。お客様の視点だけでなく、利用者の視点に立った技術開発は、重要な要素です。その意味では、すいすいMOP工法は利害関係者全員を満足させる工法だと思います。

急速立体化の社会的要請

―なるほど。ではなぜ、この工法が今注目を浴びているのでしょうか。

浅野慢性的な交通渋滞は、日常生活や企業活動に時間的・経済的損失を与えるばかりでなく、排気ガスの増加など環境悪化の原因ともなっており、渋滞対策は重要な課題として国や地方自治体などはその解決に向けて取り組んでいます。

小林例えば、国土交通省では「スムーズ・おかやま」、東京都では「スムーズ東京21―拡大作戦―」と題して渋滞がひどい交差点を立体化することを決めました。すいすいMOP工法が採用された、2つの交差点の立体化工事はこの事業の一環でした。

車線規制開始時の状況(青江側)

高架橋完成後(青江側)

―この工法の採用第1号となった国道2号岡山市内立体高架橋工事は、どのような要請から具体的な受注に結びついたのでしょうか。

浅野一般国道2号(岡山バイパス)の交通量は1日約10万台と、中国四国地方では最も交通量が多い道路であり、今回施工対象となった交差点がボトルネックとなり、朝夕の渋滞や交通事故も多発していました。
発注者である国土交通省中国地方整備局は、渋滞の解消、事故の減少、環境改善を図ることを目的に、道路利用者や周辺生活者への影響を最小限に抑えた民間の高度な技術を最大限に活用したいと考えていました。そのため、「技術提案対話方式」※という新たな入札方式が実施され、この工法を評価していただき、受注に至りました。
発注者のニーズである「工事中の車線規制日数の短縮」および「2次渋滞の緩和」と当工法のメリットがマッチした結果であると考えています。

※「総合評価落札方式」「設計・施工一括方式」「総価契約・単価合意方式」に加え、応募企業の技術提案、見積りなどを加味して予定価格を設定する入札方式

技術開発の経緯

―開発はどのように行われたのですか。

浅野技術開発に着手したのは平成14年4月。その時点で他社から交差点急速立体化工法が次々と発表されている状況であり、後発でのスタートでした。共同開発者である三菱重工鉄構エンジニアリング(株)とは、急速施工技術だから開発もスピーディにという共通認識のもと、密度の濃い検討作業で新工法の基本コンセプトを固め、同年10月にはプレス発表することができました。

小林そして、平成15年2月から(独)土木研究所との共同研究を開始し、各要素技術の実証試験を通じて平成17年3月に技術整備が完了しました。

岡山市内立体高架橋

たつみ橋交差点

―土木学会賞を受賞したと伺いましたが

浅野はい、おかげさまで、平成19年度土木学会賞 技術開発賞※を受賞しました。「慢性的に大渋滞が発生している2つの交差点立体化工事に適用され、大幅な工期短縮と工事中の渋滞緩和、および恒久的な渋滞解消を実現し、社会に貢献した」との評価をいただき、気がつけば急速施工法のトップランナーとして今回の受賞に結びついた次第です。今回の受賞は、開発・設計・工事に携わった各担当者の総合力によるものであり、この場をお借りして深く感謝いたします。

※土木学会賞 技術開発賞は、計画、設計、施工、または維持管理等において、創意工夫に富むと認められる技術を開発、実用化し、土木技術の発展を通じて社会に貢献したと認められる人物に授与される賞。

すいすいMOP工法の要素技術

―すいすいMOP工法の要素技術についてもう少し詳しくおしえてください。

浅野この工法は、いくつかの要素技術で構成されており、ご紹介すると以下のような技術があります。

モジュール桁工法

モジュール桁工法は、工場にて製作した部材(鋼桁)をコンパクトに折りたたむことができる工法です。所定形状への展開は、現地据付け後に行うため、施工中でも一般通行車両への影響を軽減することができます。(右折車線確保、2次渋滞緩和)

モジュール桁工法実証試験

橋脚柱建て込み工法強度試験

橋脚柱先行建て込み工法

橋脚柱先行建て込み工法は、橋脚柱を直接接合する治具を各種基礎杭の頭部にセットすることで、「杭の施工誤差の補正」と「橋脚柱の早期建て込み」を可能にした工法です。
この工法を採用することで、フーチングなどの基礎工事がクリティカルパスとはならないため、工期短縮を図ることができます。

タイロッド式擁壁工法

取付部の盛土区間の側壁には、景観プレキャストパネルを用いたタイロッド式擁壁構造を採用し、工期短縮とコスト縮減を図っています。すべての工程を組立ヤードの占用幅内で施工できるため、一般通行車両への影響を最小限に抑えることができます。基礎施工時の掘削士は、取付部の盛土材として積極的に利用し、場外搬出を抑制した環境配慮型の施工を基本としています。
基礎地盤が軟弱な場合には、軽量盛土やEPS(発泡スチロールブロックを使用した軽量盛土)を用いた施工を行います。

小林これらの要素技術から現場条件に応じて最適なものを選定します。

すいすいMOP工法の要素技術

モジュール桁工法

架設時断面

橋脚柱先行建て込み工法

橋脚柱先行建てx込み、フーチング後施工模式図

タイロッド式擁壁工法

すいすいMOP工法の施工手順

―どのような施工手順になるのですか?

浅野施工手順は、どのような要素技術を選定するかによって異なりますので、国道2号岡山市内立体高架橋工事を例に説明しましょう。この高架橋は、2次渋滞を最小限にとどめるため、高架橋の中央部2車線を暫定供用する I 期施工と完成形の4車線に拡幅する II 期施工とに分割して構築しました。
工事の着手は平成18年10月。まず準備工事として歩道縮小工事、車線縮小工事を行い、車線を外側に移動し、中央部を施工ヤードとして高架橋の基礎工およぶ下部工を開始しました。 I 期施工が完了するまで、平面部は4車線(上下各2車線)となります。基礎工にはPCウェル(プレキャスト式圧入オープンケーソン)を使用します。ちなみに、直径5.0mという大きさのPCウェルは日本最大です。
並行して、高架橋の両端部は現道にすりつけるために盛土工事を行います。軟弱な地盤に盛土を行うため、盛土材料にはEPSを採用しました。

PCウェル組立状況

移動多軸台車による一括架設状況

小林高架橋の基礎工および下部工の完了後、いよいよ高架橋の橋桁架設を行います。
工場で製作した橋桁を分解して組立ヤードに搬入し、張出しブラケットを折りたたんだ状態で再度組み立て、移動多軸台車を使って架設します。
橋桁の架設は、夜間作業で行いますが、一夜にして橋が組み上がっていく様は圧巻です。近隣の方も多数見学に訪れました。橋桁の架設後、車の通行に支障のない交差点部付近の張出しブラケットについては、順次展開しました。

浅野この作業の完了後に高架部の中央分離帯と仮設ガードレールを設け、舗装を行い、中央部2車線の供用を開始します。最後に、折りたたんでいたすべての張出しブラケットを展開し、すりつけ部の盛土の拡幅を行い、壁高欄、舗装を終えれば完成となります。

国道2号岡山市内立体高架橋工事の施工手順

今後の展開

―ありがとうございました。最後に今後はどのようにこの技術を展開されていきますか。

浅野平成20年10月時点では、適用にいたった物件はたつみ橋交差点立体化工事と国道2号岡山市内立体高架橋工事の2件です。しかし、慢性的な交通渋滞が起きている交差点は全国にたくさん存在しており、立体交差化はその解決策として非常に有効です。
今後は、これらの施工実績を踏まえて、さらなる技術向上を図り、従来では施工が困難と考えられていた場所での立体交差化のニーズに対して積極的に応え、全国の交通渋滞解消に貢献していきます。

国道2号岡山市内立体高架橋工事

所在地 岡山県岡山市青江地内、新保地内
発注者 国土交通省中国地方整備局 岡山国道事務所
設計監理 同上
施工者 三菱・片山・戸田異工種建設工事共同企業体
工事概要 すいすいMOP工法を適用した国道2号バイパス青江交差点と新保交差点の立体化工事
・橋長、幅員 青江高架橋 L=432m、W=17.25m
新保高架橋 L=434m、W=17.25m
・上部工形式: 鋼床版箱桁
・下部工形式: 鋼製橋脚6基×2橋、PC橋台2基×2橋
・基礎工形式: 橋脚部PCウェル、橋台部既製コンクリート杭
・すりつけ部: 擁壁工 RC壁面EPS=9,425m3、舗装工=13,782m2

平成19年度土木学会 技術開発賞
アーバンルネッサンス部 浅野部長

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