2013年10月4日

(代表)国立大学法人京都大学
戸田建設株式会社
パシフィックコンサルタンツ株式会社
東洋建設株式会社
オリエンタル白石株式会社

2013年10月4日(金)付けで、京都大学(総長:松本紘)を中核に戸田建設(株)(社長:今井雅則)をはじめとした企業が結集し、海水揚水発電の基本技術に着目した大規模エネルギー蓄積機能を持つ海洋インバースダムの研究開発及び建設提案を目的とするコンソーシアム「海洋インバースダムの会(MID-S: Marine Inverse Dam-Society)」(会長:石川容平)を立ち上げました。

1.目的と背景

わが国の長期エネルギー政策では、地球温暖化対策やエネルギー自立の観点から、自然エネルギー比率の向上に加え、エネルギー需要の変化に対応可能なエネルギー利用効率の高い設備が求められています。

自然エネルギー比率の向上は国の優遇制度によって大きく進展しましたが、さらに数10%の向上のためには自然エネルギーの更なる品質改善と分単位の高速需給調整機能を整える必要があります。一方、ベース電源となっている火力発電所や原子力発電所も、需要のピークシフトなどにより定常運転ができれば、燃費や設備寿命、メンテナンス費用を改善できると考えられます。

これらの二つの課題を同時に解決する方策として、海洋インバースダムを位置付け、その開発および実用化に向けた検討をすすめることとなりました。

2.海洋インバースダムの概要(図1)

年間を通して水位が安定している無限の自然海水を利用し、沖縄県で既に稼動している「沖縄やんばる海水揚水発電所」※注1の高い技術に着目し、全天候的に安定稼動できる大容積の海中ダムを建設することによって、実質的な大電力ストックと大出力の水力発電所を構成することが出来ます。海洋インバースダムの特徴と機能を以下に示します。

  • 1.最大備蓄量は2km平方の標準ダムで2.2億kWh。(66万世帯1ヶ月分)
  • 2.火力・原子力エネルギーとすべての自然エネルギーを蓄積・平準化(高品質化)可能。
  • 3.季節や気象条件に影響されない全天候性の揚水発電機能。(20〜30万kW/ユニット)
  • 4.水力発電による高い電力品質を持ち、数十秒で電力供給が可能。
  • 5.ユニット構成は備蓄量設計に自由度を持ち、運用しながらメンテナンスが可能。
  • 6.海水以外の液体を使わないため、最悪事故の際にも海洋汚染につながらない。
  • 7.決壊時の蓄積エネルギーは海水温上昇に使われ、沿岸地への衝撃は軽微である。
  • 8.低背建造物のため、観光資源である景観を守り、海洋資源との共生設計が可能。
  • 9.標準ダム屋上の大面積は静止衛星から2GW 級マイクロ波電力を安定的に受電可能。

3.今後について

1年目(2013年10月〜2014年9月)を第1フェーズととらえ、以下の検討を当コンソーシアムで進めていきます。

  • 1.シミュレーションと理論解析による強度や機能の設計、動作原理の確認。
  • 2.実証試験用ミニマムモデルの構造方式の最適化、工法、設計図面の確認。
  • 3.海洋インバースダム建設の社会的コンセンサスの見通しと調査。
  • 4.実証試験装置の建設場所候補の選定とコスト試算、事業モデル案の策定。
  • 5.研究開発組織の充実と人材の確保、第4次科学技術基本計画との整合性。
  • 6.知的財産の調査と創造的研究体制、会員規約の完成。
  • 7.マイクロ波電力受電装置の構造的検討。

標準仕様の海洋インバースダムが完成した時には、レクテナ※注2(宇宙からのマイクロ波を受信するアンテナ部)が設置可能となり、衛星電波のエネルギーを受ける能力を持ちます。

国際間のエネルギー取引きを目的にしたマイクロ波ミラー衛星と、究極の自然エネルギーを作り出す太陽光発電衛星からのエネルギーの両方を高効率に受電する装置を、海洋インバースダムの屋上に構成することが可能となります。前者は地球規模のエネルギー配信システム、後者は大量でクリーンな宇宙エネルギーの利用システムとなり、時代の要求に合わせて海洋インバースダムの機能を発展させる計画です。(図1)

※注1 沖縄やんばる海水揚水発電所:電源開発㈱の水力発電所。世界初の海水揚水発電所で、 最大出力は30,000キロワット。

※注2 レクテナ:マイクロ波エネルギーを直流電流に整流変換するアンテナで、エレメントが格子状に配置されている。高効率で低コストのため、宇宙太陽光発電で人工衛星からのマイクロ波電力伝送用に提案されている。

図1 2050年頃の海洋インバースダムを中心とした基幹エネルギーシステム例

図2 マイクロ波ミラー衛星を経由した大陸間エネルギー伝送

以上