2019年6月12日

戸田建設(株)(社長:今井雅則)は、建設現場で生じる様々な工事騒音の低減など、これまでも社会課題の解決に繋がる技術開発に取り組んできました。この度は、山岳トンネル工事の発破騒音による周辺環境への影響を最小限に留めるため、防音扉に補強を加えてその剛性を高めることで、従来は対策が困難とされていた低周波の騒音低減に有効な「剛性付加式防音扉」を開発し、実現場に適用しました。

写真1 山岳トンネルの坑口に設置された新発想の「剛性付加式防音扉」

1.開発の背景

山岳トンネル工事では発破時に大音量の騒音が発生するため、通常、工事現場周辺の騒音対策として、坑口に防音扉を設置しています。しかし、発破に伴う騒音には幅広い周波数成分が含まれており、一般的な防音扉は高周波の騒音低減には有効であるものの、近隣住戸の窓ガラスや扉のガタツキ等の原因にもなる低周波の騒音には大きな効果が得られていませんでした。そこで、防音扉を二重に設けたり、コンクリートの吹付または充填等により重量化を図った防音扉を設置するケースもありますが、その効果も低周波の騒音に対して十分とは言えないのが実状でした。また、音の共鳴現象を利用することで低周波の騒音低減を実現した事例もみられますが、原理上、その効果は特定の周波数に限定されるため、幅広い低周波数帯域の騒音を低減する手法の開発が望まれていました。

2.本技術の概要

本技術は防音扉の剛性、すなわち、変形のしにくさを高めることで、低周波の遮音性能を幅広い帯域において向上させるものです(図1参照)。一般に、防音扉を重くするほど遮音性能が向上することが知られていますが、発破騒音に含まれる20Hz以下の低周波数の騒音に対してはほとんど効果が期待できません。そこで当社は、鳥取大学・西村正治特任教授 (現 Nラボ代表)の技術指導の下、低周波数帯域の遮音性能に防音扉の剛性が大きく影響を及ぼすことを実験で確認するとともに、防音扉の剛性を高める様々な工夫(①袋状材を膨らませて防音扉の面材に強く押し当てる、②扉の可動部を緊結する等)を山岳トンネルの防音扉に適用し、幅広い低周波数帯域における遮音性能向上を実現しました(図2参照)。本技術の特長をまとめると以下となります。

  • (1)防音扉の剛性を高める(付加する)ことで、低周波帯域の騒音を幅広く低減
  • (2)防音扉自体に補強を加える手法であるため、トンネル内外部のスペースの有効活用が可能
  • (3)防音扉の重量化が不要なため、コンクリートの吹付や充填等の余分な手間とコストが不要

単純な壁体の遮音性能は1次共振周波数において最小となり、それより高い周波数領域では周波数が高くなるほど増大する(質量則)一方、1次共振周波数より低い領域では周波数が低くなるほど増すこと(剛性則)が知られている。一般的な防音扉は1次共振周波数が数Hzとなるため、低周波数帯域において高い遮音性能を得ることが困難であり、また、防音扉を重くしても低周波数帯域では効果が得られない。

図1 本技術による低周波帯域の遮音性能向上のイメージ

図2 本技術の適用による山岳トンネル坑口の防音扉の遮音性能改善例

写真2 袋状材による面材の加圧
(防音扉の切羽側=写真1)

カンヌキでは防音扉の可動部の固定が不十分であるため、低周波の騒音低減に必要な剛性を得ることができない

写真3 扉の可動部の緊結
(防音扉の屋外側)

3.今後の展開

建設工事騒音の低減は非常に重要な社会的課題です。当社は、本技術の効果的な適用方法について検討を進めるとともに、本技術の積極的な展開を図り、作業所周辺の音環境の改善を目指します。