新着情報 覆工コンクリート打込み中の圧力を可視化してひび割れ発生を防止 「スマート圧力センサシステム」を開発

2020/09/01

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)と児玉(株)(社長:児玉 直樹)は、山岳トンネル覆工コンクリートの打込み中のセントル(移動式鋼製型枠)に作用する圧力を面的に捉える「スマート圧力センサシステム(仮称)」(以下、本システム)を開発しました。本システムを使用することで、打込み時にセントルに作用するあらゆる箇所の圧力の許容レベルの判定だけでなく、打上がり高さと偏圧作用の有無を管理することができます。これにより、セントル変形が原因の出来形精度不足やセントルの予期せぬ横移動によるコンクリートのひび割れ発生などを防止できます。

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図-1 本システムの概要

開発の背景

従来、圧力センサは目視困難な天端部の吹上げ方式による打込み管理に限定的に使われるケースがほとんどで、ディスプレイに表示された圧力値を打込み完了の目安に使用していました。また、側壁部の打込みでは圧力センサを使用することなく、検査窓から目視で打上がり高さを確認し、打上がり速度超過が原因のセントルへの過度な側圧、側壁部左右の打上がり高さの差の増大が原因の偏圧が生じないことを確認していました。
しかしながら、打ち込まれるコンクリートは、季節によって凝結し始める時間が変化し、セントルにかかる側圧も変化します。また、流動性の高いコンクリートを使用すると通常より側圧が大きくなります。これらが原因で、過度な側圧によるセントルの変形や偏圧によるセントルの横移動を生じさせるリスクがありました。

本システムの概要

上記リスクを低減するために、セントル面板全体に圧力センサを計55台(11台/断面×5列)配置し、測定結果を圧力値だけでなく、色の違いでリアルタイムに表示するシステムとしました。コンクリートが打ち込まれていない箇所は白色、打ち込まれた箇所は薄い青色となり、圧力の高まりとともに徐々に青色が濃く変色します。さらに、圧力が高まり20kPaを超えると緑色、黄色、赤色へ段階的に変化します。黄色で注意、赤色で打込みの一時休止の目安とします(表-1)。なお、色が切り替わる圧力のしきい値(境界となる値)設定は自由に変更できます。

表-1 圧力表示方法の例
圧力P色表示状況
P=0kPa 白色 まだ打ち込まれていません。
0<P≦20kPa 薄い青色から濃い青色へ徐々に変化 着色部が打ち込まれた範囲を示しています。
20<P≦35kPa 緑色 圧力が上がり始めています。
35<P≦45kPa 黄色

圧力が注意レベルに達しています。
打上がり速度を抑える必要があります。

45<P 赤色

圧力が危険レベルに達しています。
打込みの一時休止などの措置が必要です。

効果

側壁部から天端部までのセントル面板全体の圧力分布が色で表現され、打ち込まれた範囲、危険レベルの圧力発生状況、偏圧発生の可能性などが直感的に誰にでも分かりやすくなりました。圧力の上昇に応じて打込みの一時休止などを正確に判断でき、セントルの変形に伴う出来形の精度不足やセントルの横移動によるひび割れ発生を防止できます。

今後の展開

現在、本システムを福島県博士トンネル工事に適用中です。当社保有技術であるセントルの自動測量システム「セントルEye」と併用し、打込み時のセントルに作用する圧力とセントル挙動(横移動、沈下、および浮き上がり)との関係性を調査しており、圧力をもとにセントル挙動リスクに対する警報発令を本システムに盛り込む予定です。当社が実施するトンネル工事に適用を重ね、信頼性を確認後、NETIS登録および一般販売することを計画しています。
さらに、上記工事では、その他の当社保有技術「Rail Walker System」「ジュウテンミエルカ」「E-WALKミスト(予定)」なども併せて適用しています。今後は、他の工事にもこれらの保有技術を積極的に活用し、セントル設置から打込み、養生に至る一連の工程における施工管理の高度化と覆工コンクリートの高品質化を目指します。