サステナビリティ トップメッセージ
社会課題を解決する役割が更に拡大
国内における当社グループを取り巻く経営環境は、建設業の労働力不足や建設資材価格の高騰など、多くの課題に直面しています。一方で、高度経済成長期に建設された建築物は築50年を超えて、修繕や更新の時期を迎えています。また、バブル経済崩壊後の「失われた30年」での国内投資の低迷による低成長を取り戻すように、特に製造業や半導体関連での建設投資・設備投資への意欲が向上しており、データセンターや半導体関連を中心に受注環境は好調に推移しています。土木においても激甚化する自然災害と老朽化するインフラへの対応など、国土強靭化の必要性が高まっています。さらに現代社会は環境、食糧、災害、地域創生などの課題を抱えており、これらの中には建設業だからこそ解決することができるものがあると考えています。アグリサイエンスバレー常総は「農業の6次産業化」を軸とした地域活性化を目的とした事業で、五島沖の浮体式洋上風力発電プロジェクトは環境問題だけでなく地域産業の活性化に貢献する事業です。今後も地方自治体などと連携して社会課題を解決するという事業機会は、更に拡大していくと捉えています。
中期経営計画2024ローリングプランで得たもの
2024年度は中期経営計画2024ローリングプランの最終年度でした。2024年度の実績は収益性を示す指標である売上高5,866億円(中計目標6,000億円)、営業利益266億円(同330億円)、営業利益率4.5%(同5.5%)となり、資本効率性を示す指標も親会社株主に帰属する当期純利益251億円(同260億円)、ROE7.3%(同8.0%)といずれも目標達成には至りませんでした。未達要因は建設事業における資材価格の⾼騰や⼀部⼯事における進捗遅れが発生したことによるものです。一方で、建築事業では半導体関連を中心に設備投資が2023年度後半から活性化したことにより収益性は回復しており、2024年の決算予測の上方修正を行なっています。また建築・土木・戦略の3事業本部が協働して取り組んだ「重点管理事業」について、最新技術とアイデアを結集したTODA BUILDINGの完成、新たなまちづくりを実現したアグリサイエンスバレー常総の完成は、今後の事業展開への有形・無形の財産になりました。海外事業については、PT Tatamulia Nusantara Indahおよび同社の子会社7社の取得は、売上への貢献を果たしただけでなく、今後の海外展開への礎を築くことができました。
未来ビジョンCX150と中期経営計画2027
2025年度からは、「中期経営計画2027」をスタートさせています。中期経営計画2027は未来ビジョンCX150の3つのフェーズの2段階目となり、協創社会の実現に向けた「価値の再構築『見極め、つなぐ。発散から結束、価値の最大化へ』」をテーマにしています。目標数値である売上高8,000億円程度、営業利益435億円、ROE10.0%という数値は、現在の建築事業・土木事業の堅調な受注環境を反映した数字です。それでも市場環境は必ず変化し、良い時期もあれば必ず悪い時期をやってきます。市場環境が悪い時期であっても、それに大きく左右されないように当社の強みを見極めて、それを最大限に発揮できるように準備することが「見極め」です。
「つなぐ」とは、タテヨコ展開を意味します。“タテ”とはフロントラインの強化です。当社グループの事業を拡大し売上高8,000億円を達成するためには人的リソースが当然に必要となります。私たち建設業界全体で考えると、最大の課題は労働力不足にあり、特にサプライチェーンでの担い手不足は深刻です。当社が持続的に成長していくためには当社の人財だけでなく、サプライチェーン全体、業界全体の担い手不足に対応していく必要があります。当社グループの人財シフトはもちろんのこと、パートナー企業の人財を含めたバリューチェーン全体を通じてフロントラインを強化していきます。そのためにフロントラインでのハードシップに報いる形での人事制度の改訂などで、建設業の現場で働くことの意義の向上に取り組み、フロントラインで働きたいという人財を増やしていきます。中期経営計画2027では、当社グループの従業員のワークエンゲージメントだけでなく協力会社からの作業所評価のフィードバックを非財務目標として設定し、担い手不足の解消に取り組んでいきます。
“ヨコ”とは、前中計から取り組んでいる、建築・土木を行う建設事業と新しいビジネスに挑戦する戦略事業の、ヨコのつながりによるシナジーです。建築・土木・戦略の3事業部がそれぞれの垣根を超えて、共に取り組んでく事業を重点管理事業としています。中期経営計画2024では、TODA BUILDING・海外事業・再エネ事業(洋上風力発電)の3つを重点管理事業としていましたが、中期経営計画2027では①SECC(Smart Energy Complex City)事業(フェーズ1)、②環境・エネルギー事業(洋上風力)、③海外事業としています。特にSECC事業は、CX150を作成した際に当社が従来の姿を超えて、「価値のゲートキーパーとして協創社会を実現する」ことを目指していく最終的な領域で、いよいよこれを具体的に進めていこうというものです。
中期経営計画を通じて、当社の確固たる強みを見極め展開し、TODAグループ独自の「突出価値」を創造する道筋を築いていきます。
Build the Culture.人がつくる。人でつくる。
当社グループが中期経営計画の目標を達成し、CX150を実現する上での最大の鍵は人的資本にあります。当社グループでは、140周年を迎えた2022年に「Build the Culture. 人がつくる。人でつくる。」というブランドスローガンを策定しています。「Build the Culture.」は、当社の未来のありたい姿を示しており、「人がつくる。人でつくる。」は、かねてより当社グループが掲げてきた従業員一人ひとりの強い使命感とともに、ステークホルダーの方々の想いと真摯に向き合っていく姿勢を示す言葉です。私はこの「人がつくる。人でつくる。」がまさに当社グループのDNAを表現しており、大切にしていく文化だと考えています。私は建設の現場にずっといた人間ですが、当社グループは協力会社とともに、お客様とも一緒になって、気持ちを込めてものをつくるという姿勢が同業他社と比較して強く、泥臭くはありますが、それこそが当社グループの強みであると強く感じています。その結果が、多くの協力会社様やお客様からの「戸田建設と一緒にやりたい」という評価につながっています。
今回、私が直轄する部署として、安全品質環境管理本部とDX統轄部を設置しました。私たちは社会のインフラを担う事業を営んでおり、品質不具合や事故などを起こせば大きな社会問題となり、企業価値を大きく損なうことになってしまいます。今までもSQEは最も重要であることは変わりませんが、組織としても社長直轄の本部という形にして、経営上の重要な事項としてより真摯に取り組んでいきます。
DXについては、2020年に管理本部ICT統轄部の中に、DX推進室という形で設立して、TODA BUILDINGのスマートオフィス化などを主に進めてきました。同時に社内人財から行動なICTリテラシー人財を育成する必要性を感じて、東洋大学情報連携学部のリカレント教育を社内公募の中から2期50名選抜して受講させました。本年度から社長直轄のDX統轄部として組織し、デジタル人財のさらなる育成、デジタル技術を駆使した業務プロセス変革による生産性・品質の向上、データドリブン経営化などを加速していきます。
社会と事業のサステナビリティの連動
私たちが事業活動を通じて社会のサステナビリティへ貢献することができるテーマとしては、まず気候変動への対応があります。中期経営計画2027でも環境・エネルギー事業を重点管理事業としています。再生エネルギー事業ではいよいよ浮体式洋上風力発電所である五島ウィンドファームが2026年1月に運転を開始します。直接的にはこれによって運転保守と売電の収入が発生しますが、日本での浮体式の本格的な実装は2035年頃になりますので、これに向けて大型化・量産化技術の開発を進めていきます。それまでは着床式洋上風力が中心となりますので、これに対しては現在、6社共同で保有する自己昇降式作業台船(SEP船)を、大型風車に対応できるように改造工事を進めており、着床式のCI受注に向けて動いています。もう一つの重点管理事業であるSECC事業は、地域創生の役割を担ったアグリサイエンスバレー常総や、都市再生も目的としたTODA BUILDINGの先にあるものであり、官民連携で地域社会のさまざまな課題を解決するまちづくりを目指すものです。中期経営計画2027では、SECCの実現につながるパイロット事業を進めていきます。
事業を支える基盤となるガバナンスについては、私が社長に就任して以来、取締役の実効性の向上に取り組んでいます。取締役会の構成も以前の12名から現在の7名にして、社外取締役も過半数の4名、執行については私と副社長の山嵜の2名で、監督と執行の分離を進めています。今回の中期経営計画では「取締役会実効性の向上」を非財務目標としており、さらなるコーポレートガバナンスの強化を進めます。
「“喜び”を実現する企業グループ」となるために
中期経営計画2027では、「IRミーティングの拡充」を非財務目標の一つとしています。株主還元を強化し、中長期的な株価上昇を目指します。また、CX150の実現を通じて、市況に大きく左右されない企業体質へと転換していきます。当社グループの事業は時間軸が数年となることが多く、株主の皆様や資本市場との対話を通じてステークホルダーの皆様の声に耳を傾けるともに、当社の事業の性質や中長期での持続的な成長可能性を丁寧に伝えていくことが重要だと考えています。
当社グループは「“喜び”を実現する企業グループ」というグローバルビジョンを掲げています。最終的には戸田建設グループは、このグローバルビジョンへと成長していくことを目指しています。短期的な成果ももちろんですが、中長期的に社会に貢献する企業であることを大前提として、当社グループ独自の突出価値の提供を目指してまいります。