新着情報 微生物の力でコンクリートのひび割れを閉塞 自己治癒コンクリートを当社施設に初適用

2020/12/15

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)は、日本大学工学部(学部長:根本 修克)と共同で、微生物を用いた「自己治癒コンクリート」の実用化に関する研究を行っており、今般、当社施設「南砂PJ研修センター」の擁壁部に初適用しました。
本技術は、コンクリートに発生したひび割れを微生物の代謝活動を利用して補修する技術であり、構造物の機能維持やその管理に掛かる費用の低減が期待できます。

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写真1 コンクリート試験体によるひび割れ閉塞状況(20週経過後)

開発の背景

コンクリート構造物に発生するひび割れは、鉄筋の腐食による耐久性の低下や、美観を損なうことなどの原因となります。それらを防ぐためには、ひび割れを早期に発見し、補修する必要があります。当社は、微生物の代謝活動によってコンクリートのひび割れを閉塞させることができる「自己治癒コンクリート」に着目し、日本大学工学部建築学科のサンジェイ・パリーク (Sanjay PAREEK) 教授と共同で、本技術の実用化に向けた研究を行っています。

本技術の概要

本技術は、微生物とその養分となる乳酸カルシウムをコンクリートにあらかじめ添加することで、発生したひび割れを閉塞させる技術です。コンクリートにひび割れが発生すると、酸素と水が供給されることで微生物が活動を開始し、乳酸カルシウムを取り込み、炭酸カルシウムを生成することによってひび割れを閉塞します。微生物はひび割れが閉塞すると活動を休止し、休眠状態となりますが、再度ひび割れが発生すると活動を再開します。
本技術の特長は以下の通りです。

  1. 1ひび割れを閉塞させることで、劣化因子(水や塩化物イオン等)のコンクリート内部への浸入を防ぐことができます(図1参照)。
  2. 2微生物の添加によるフレッシュコンクリートや施工性への影響はみられず、一般的なコンクリートと同様に打設できることを確認しています。

本技術を用いることで、コンクリート構造物の耐久性や美観を維持することができます。さらに、ひび割れに対するメンテナンス作業が不要となるため、構造物供用中の維持管理費用を低減できます。

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図1 通水試験の結果の一例(ひび割れを有するモルタル円柱供試体を用いた場合)
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図2 南砂PJ研修センター完成イメージ図
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写真2 自己治癒コンクリート適用状況(擁壁部)

今後の展望

当社は、本技術を当社施設「南砂PJ研修センター」の擁壁部に初適用しました。
今後も上記の経過観察を行うとともに、継続して本技術の有効性を検証し、当社独自のサスティナブル技術の一つとして展開を図ります。