新着情報 データ集約・連携・利活用による建設現場の生産性向上 ICT土工管理の新しい取り組み

2021/03/31

戸田建設(株)(社長:今井 雅則)、西松建設(株)(社長:髙瀨 伸利)、(株)奥村組(社長:奥村 太加典)は共同で、データ利活用型ICT土工管理システム(以下、「本システム」という)を構築しました。本システムにより、ICT土工データをプラットフォーム上で一元的に集約・管理し、多様で膨大なデータを横断的に連携し利活用が図れるとともに、関係者間でのデータ共有が容易になり、大幅な管理作業の省力化と効率化が図れます。

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図1 データ利活用型ICT土工管理システムのイメージ(赤枠:構築した部分)

背景

国土交通省による「i-Construction」(ICTの全面的な活用による建設生産システム全体の生産性向上)の施策によって現場でのICT活用が進み、施工・施工管理などにおける省力化・効率化に一定の導入効果が得られています。一方で、扱うデータ(情報)は多様で膨大な量となり、その対応には専門技術が必要で、かつデータ処理に多くの時間がかかり負担となっています。また、土工事における転圧管理、出来形管理、土量管理、材料管理などのデータ管理が別々に行われているため、データを一元的に集約・管理するプラットフォームを利用したデータ連携・活用・推進が求められています。

本システムの主な特徴

本システムは、それぞれに目的をもった以下3つのシステムで構成しています。

  1. 1データ共有プラットフォーム
    取得された施工データをクラウドに自動的にアップロードし、データ処理・活用時の省力化が図れます。
  2. 2転圧施工履歴データによる土量算出
    ICT施工履歴データから土量計算し、測量せずに短時間で盛土の進捗を把握できます。
  3. 3土砂トレーサビリティ管理システム
    盛土材の土取り位置と荷下し位置や施工位置の情報が自動的に管理され、盛土材のトレーサビリティが強化され品質向上に繋がります。

データ共有プラットフォーム

データ連携の場として、汎用性のあるクラウドサービス「CIMPHONY Plus(シムフォニープラス)※1」を利用したデータ共有プラットフォームを構築しました。現場PCからクラウドへ自動的にアップロード、データ登録する機能を有します。現場と本支社の関係者は誰でもどこからでも、3次元、時系列の測量・設計データ、施工履歴データから現地状況や進捗状況をすぐに確認できます。これらによりアップロード作業の削減(作業時間が90%以上削減)とともに、現場での省力化が図れます。

※1 福井コンピュータ社製のクラウドサービス

図2 データ共有プラットフォームのイメージ

転圧施工履歴データによる土量算出

転圧施工履歴データを点群データとして扱うことで、容易に土量算出する方法を確立しました。実現場で適用検証を行った結果、施工履歴データを活用した方法は地上型レーザースキャナ測量と比較して、高さ精度の誤差は10cm以内、算出土量の誤差は盛土量約4,500㎥に対して約10%以内であり、盛土の進捗管理に実用できることを確認しました。土量算出の作業時間は地上型レーザースキャナ測量よりも90%以上短縮でき、大幅な省力化・効率化が図れます。

図3 転圧施工履歴データによる土量算出
図4 作業時間の比較

土砂トレーサビリティ管理システム

ダンプトラックに搭載したセンサーにより、「どこの土」を「どの場所」に盛土したのかを記録できるシステムを開発しました。センサーデータとICT土工の転圧管理システムのデータを関連付けることで、3次元土工管理図を自動で作成でき、盛土のトレーサビリティ管理の省力化が図れます。これにより従来、職員が手作業で行っていた管理の必要がなくなり、1人/日の削減効果が期待できます。
作成される3次元土工管理図には、施工日や土質情報などの属性情報が自動付与されるため、将来の施工履歴の確認等にも活用できます。

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図5 土砂トレーサビリティ管理システム

今後の展開

今後は本システムの現場適用を進めるとともに、さらに汎用性と機能性を向上させるようブラッシュアップを図っていく予定です。
また、国土交通省等ではインフラ分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みが始動しており、デジタルデータを活用した業務プロセスの変革が求められているので、引続き3社で課題解決に向けた研究開発を進めていきます。