新着情報 引抜力と靭性に優れた繊維補強モルタルを開発 鋼桁と道路床版の一体性を高めて道路橋の耐荷性能を向上

2021/06/17

戸田建設(株)(社長:大谷 清介)は、ポリプロピレン繊維と円形状の鋼繊維(リングファイバー)を混合した当社独自の繊維補強材(ハイブリッドファイバー※1)を無収縮モルタルに添加することで、従来よりも引抜力と靭性を高めた繊維補強モルタルを開発しました。本技術を道路橋の鋼桁と道路床版の接合部に適用し、従来よりも耐荷性能向上に繋げるなど、幅広い用途への適用と品質向上が期待できます。

  • ※1 実用性に優れた低コストの吹付けコンクリートを開発-2種の繊維の長所を活かした「ハイブリッドファイバー補強吹付けコンクリート」
    https://www.toda.co.jp/assets/pdf/20180219.pdf
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写真1 ポリプロピレン繊維

  

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写真2 円形状の鋼繊維(リングファイバー)

開発の背景

ハイブリッドファイバーは、ポリプロピレン繊維と円形状の鋼繊維(リングファイバー)を混合したもので、コンクリートに添加することにより、低コストでひび割れの発生を抑制(曲げ靭性が向上)することが可能です。これまでに、トンネル工事で使用される吹付コンクリートに適用し、上記の利点に加え、施工時の安全性向上(防水シートの破損や作業員の怪我発生のリスクの解消)が確認されていますが、当社はさらなる適用範囲の拡大に向けた研究開発を続けてきました。

本技術の特徴

  1. 1概要
    本技術は、ハイブリッドファイバーを無収縮モルタルに添加するもので、ポリプロピレン繊維のみを添加した繊維補強モルタルと比較して、引抜耐力の向上とひび割れ発生後の荷重保持力が高く、さらに靭性が向上することを実験にて確認しています(表1、図1参照)。

表1 引抜試験の結果の例

種類 ひび割れ発生荷重(kN) 最大荷重(kN) 最大荷重時の変位(mm)
ハイブリッドファイバー 53.3 57.9 0.60
ポリプロピレン繊維 47.1 47.1 0.00

図1 引抜試験の結果の例
写真3 引抜試験後の破断状況
(ハイブリッドファイバー)
  • ※2 ハイブリッドファイバーの繊維添加量(リングファイバー:0.5vol% ポリプロピレン繊維:0.5vol%)
  • ※3 ポリプロピレン繊維の添加量(ポリプロピレン繊維:1.0vol%)
  1. 2適用例
    近年、道路橋の老朽化に伴い、傷んだ道路床版をプレキャストPC床版(以下、PC床版)へ取り替える工事が全国各地で行われています。当該工事おいて、鋼桁とPC床版はスタッドジベルと呼ばれる鋼桁に設けられたズレ止めによって接合しており、ジベル孔開口部に充填する材料の品質は、スタッドジベルとPC床版の一体性を確保するために極めて重要です。そこで、靭性と引抜力に優れた本技術を道路橋の鋼桁と道路床版の接合部(スタットジベル部、図2参照)に適用することで、従来よりも密着性や一体性を高め、道路橋の耐荷性能向上に繋がることが期待されます。
図2 ハイブリッドファイバーを添加した繊維補強モルタルの適用イメージ
(道路橋の鋼桁と道路床版の接合部)

今後の展望

当社は、道路橋の大規模更新工事の品質向上および工期短縮の実現に取り組んでおり、本技術を道路橋の品質向上技術として積極的に展開するとともに、この材料の特性を活かし、幅広い用途への適用拡大に向け、さらなる技術開発を続けていきます。