新着情報 地域マイクログリッドの構築に向けた模擬電力網制御実証公開試験の実施
2022/02/18
戸田建設(株)(社長:大谷 清介)は、(株)DGキャピタルグループ(代表取締役兼CEO:阿部 力也、代表取締役COO:新海 優)と共同で、デジタルグリッドルータ(以下、「DGR」という)を活用した模擬電力網制御実証公開試験を実施しました。
当社は、経済産業省資源エネルギー庁が募集する令和3年度地域共生型再生可能エネルギー等普及促進事業地域マイクログリッド構築支援事業において、岩手県宮古市における地域マイクログリッド導入プランを作成中であり、本試験は、導入プランの中で採用を検討しているDGRの適用可能性を実証するために実施したものです。
地域マイクログリッドとは
地域マイクログリッドとは、既存電力系統(以下「電力系統」という)の停電など、非常時に、従来の電力系統線を利用しながら、電力系統とは独立して運用が可能な小規模な電力網です。平常時は、電力系統から電力供給を受けつつも、マイクログリッド内の太陽光発電、風力発電、小水力発電などの再生可能エネルギー電源(以下、「再エネ電源」という)を有効に利用して、電気使用量の平準化、ピーク電力量の削減などを実現します。また、災害等による大規模停電時には、電力系統から切り離し、マイクログリッド内の再エネ電源などを活用することで、災害拠点などの重要施設を自立的に稼働させます。
地域マイクログリッドは、再エネ電源、蓄電システム、エネルギーマネジメントシステム(EMS)などで構成され、災害時のレジリエンス強化、脱炭素化に向けた再エネ電源率の向上、エネルギーの地産地消による地域経済への貢献などの効果をもたらします。
地域マイクログリッドの技術的課題とDGR
地域マイクログリッドは、平常時は電力系統と連系し、災害時は電力系統から独立して運用されることが想定されています。したがって、平常時は電力系統と電圧、周波数、位相を同調させる必要があり、災害時はマイクログリッド単独で安定した電力を供給する必要があります。
DGRは、交流電流を一旦直流に変換してから再度交流に戻す機能を持ったハードウェアであり、電圧、周波数、位相の異なる電力系統とマイクログリッドを連系させる(以下、「非同期連系」という)ことができます。
また、太陽光発電や風力発電などの再エネ電源は時刻や気象条件などによって発電量等が変動するため、電力系統内では火力発電をはじめとする出力調整が容易な電源の助けを借りて安定性を保っていますが、小規模なマイクログリッド内で変動の大きい再エネ電源が増え過ぎると安定した電力供給が困難になります。DGRは、マイクログリッド内の発電機器(電源)や電力使用機器(負荷)を制御する機能、GPSの時刻信号を使ってマイクログリッド内電源の周波数を同期させる機能、高速演算によって電源・負荷をリアルタイムで制御する機能などによってマイクログリッド内の電力供給を安定させることができます。
災害等で電力系統内に停電が発生した時には、自動的に電力系統とマイクログリッドとを分離し、マイクログリッド内は停電することなく、自立運転に切り替えます。また、各DGRは蓄電システムを備えているため、グリッド内の再エネ電源や非常用電源を有効活用することにより、一定期間自立運転を継続することができます。※また、DGRはマイクログリッド内の発電機器や電力使用機器の電力情報をソフトウェアで制御し、ブロックチェーン技術を活用しこれらの情報をタグ付けすることができるため、再エネなど環境付加価値に着目した電力取引などが可能になります。
試験結果について
今回の試験では、地域マイクログリッドを想定した模擬電力網を構築し、模擬電力網の制御状況確認試験や停電などの非常時を想定した試験等を実施しました。GPSを利用して各機器を同期する試験、模擬電力網内の電力需要が大きく変化した場合を想定した試験、電力系統の停電を想定した試験、模擬電力網内の停電を想定した試験等、いずれの試験においても期待した結果が得られました。
今後の展開
地域マイクログリッドは、災害時のレジリエンス強化、再生可能エネルギー率の向上、地域経済への貢献が期待できることから、今後の普及が期待できるシステムです。また、多数のマイクログリッドを構築し、マイクログリッド同士を連携させることによって、平常時の相互電力融通や災害時の相互支援など相乗効果を得ることができます。
今後は作成中の導入プランの実装に向けて、技術的課題に加え、事業性判断、地域の合意形成、マイクログリッドの運営に必要な体制整備などを進めて参ります。