新着情報 AIによる最適発破設計システム(仮称)を国交省の現場で試行中 建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト

2022/02/25

戸田建設(株)(社長:大谷 清介)、 (株)Rist(社長:藤田 亮)及び(株)演算工房(社長:林 稔)の3社コンソーシアムは、山岳トンネルの発破掘削工法において、最適な掘削形状となる発破パターンをAIにて算出する『最適発破設計システム(仮称)(図1参照)』で、官民研究開発投資拡大プログラム予算(PRISM)を活用して国土交通省が実施する「建設現場の生産性を飛躍的に向上するための革新的技術の導入・活用に関するプロジェクト」に応募し、採択されました。
国土交通省近畿地方整備局福井河川国道事務所管内で当社が施工する「大野油坂道路新長野トンネル野尻地区工事」にて、本システムを試行中です。現在、AI学習用教師データの収集を完了し、本システムの実用性を確認しています。

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図1 最適発破設計システム(仮称)の概要

システムの概要

本システムは、従来熟練トンネル技術者が手動で行っていた発破パターンの設定作業を、AIモデルに基づいた最適発破設計システムにより自動化するものです。今回の試行では、「コンピュータジャンボの1孔あたりの穿孔データ」と「装薬量データ」、および「発破後の地山形状の3次元点群データ」を教師データとするAIモデルを採用した最適発破設計システム(仮称)により、最適な発破掘削形状となる穿孔位置や装薬量を自動で算出します。なお、現場での発破後、ずり搬出開始までの短時間でAIの教師データである地山形状データを取得するために、実際に現場で実績のある(株)演算工房の「ジープスキャンシステム」を採用しています(図2参照)。ジープスキャンシステムは、3Dレーザースキャナと高性能PCを車両に搭載し、迅速な計測と退避が可能な技術です。

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図2 車載式3Dレーザースキャナ「ジープスキャンシステム」概要図

本システムの採用による効果

本試行期間において、「コンピュータジャンボによる穿孔データ」、「穿孔毎の装薬量」、「発破後の3次元地山形状」といったパラメータを教師データとして蓄積し、約5,000個(50切羽×100孔/切羽)のデータをAIに学習させました。
本試行期間におけるAIモデル(余掘量の推定)による判定結果は、余掘量誤差率(切羽毎平均)で目標20%に対し、15.6%という精度(図4参照)を実現しました。また、同モデルを採用した最適発破設計システム(仮称)により算出した発破パターンを現場で適用し、得られる成果・課題を今後の開発にフィードバックさせる予定です。
余掘量の低減により、発破作業後のずり搬出量および吹付けコンクリート量が低減されることで、施工時間の短縮等の生産性向上や、コスト削減が図れます。また、本システムが採用されることで、減少傾向である熟練技術者に頼ることなく最適な発破設計が可能となります。

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図3 教師データの重ね合わせ図
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図4 余掘量推定AIモデルの判定結果

今後の展望

「最適発破設計システム(仮称)」は、今後ほかの当社トンネル現場で使用予定です。本システムは発破の影響が大きいと思われる一部のパラメータより発破設計の自動化を行ったものであり、今後は多様な地質に対応するため、新たなパラメータを組み込み、更なる精度の向上に努めていきます。