新着情報 鋼製支保工建込みの切羽無人化施工システムを開発 実工事の試験施工にて適用性を確認

2022/03/29

戸田建設(株)(社長:大谷 清介)は、トンネル工事の鋼製支保工建込み作業において、切羽直下に作業員が立ち入らない、切羽無人化施工システムを開発し、実工事での適用性を確認しました(写真1)。
本システムは、トンネル工事で用いるエレクタ一体型吹付機※1に改良を加え、切羽直下に作業員が立ち入ることなく、オペレータ1名による遠隔操作で鋼製支保工の建込み、継手接合、位置決めを可能とすることにより切羽無人化施工を実現するものです。本システムの適用により、トンネル工事の安全性向上と、省人化による生産性向上を推進していきます。
現在施工中の『四国地方整備局 窪川佐賀道路 平串トンネル』の一部区間において試験施工を実施し、システム導入の有効性とさらなる改善点を確認しました。

  • ※1 鋼製支保工の建て込み作業と吹付けコンクリート作業に用いる施工機械
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写真1 実工事における鋼製支保工の建込み状況

開発の背景

山岳トンネル工事の鋼製支保工建込み作業では、掘削直後の切羽直下に作業員が立ち入る必要があるため、肌落ち※2による労働災害が40%程度と多く発生しており、トンネル工事の全体の労働災害の40%程度を占めています。これらの実情を踏まえ、厚生労働省より2016年に「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」が発令され、事前調査による地山の状況把握や肌落ち防止計画の策定に加え、機械化による肌落ち災害の防止対策が求められています。
また、山岳トンネル工事は、地山変化に応じて臨機応変な施工が求められるため、自動化・無人化対策が遅れていますが、近年、作業員の高齢化や熟練作業員不足の課題に対応して、施工の省人化、自動化、生産性向上が強く求められています。
これらを背景に、トンネル労働災害が最も多い鋼製支保工の建込み作業において、切羽直下に作業員が立ち入らない、そして施工の省人化が図れる、切羽無人化施工の実現に向けて技術開発を積極的に推進しています。

  • ※2 掘削された表面の土砂や岩が崩れ落ちること

本システムの特長

  1. 1従来の鋼製支保工建て込み作業は、照射レーザーを基準に切羽直下の作業員の目視確認・指示によりオペレータが操作します。これに対し、本システムでは長尺化した把持装置(従来1m⇒5m)に位置決め測定用プリズムを設置(図1-Ⅰ)し、後方の自動追尾式トータルステーションで測定した鋼製支保工の位置をモニタリングしながら、微調整機構を有した高性能エレクタを用いて、精度よく計画位置に建て込むことができます(図1-Ⅲ)。
  2. 2鋼製支保工建て込みにおける従来の継手接合は、作業員が切羽直下に立ち入り軸方向にボルト・ナットで接合しますが、本システムでは左右H形鋼の継手端部にそれぞれ軸方向ピンとさや管をセットで配置し、軸方向で突合せ、ピン先端の溝にD環が収まることによりワンタッチで固定される構造としています(図1-Ⅱ)。本接合方法とすることで継手接合の時間短縮が図れるとともに、相互のダブルピン構造とすることで、従来継手と同等以上の強度性能を発揮します。
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図1 システム概要

今後の展開

試験施工で得られた有益なデータに基づきシステム改善を行うとともに、今後も現場適用を積み重ねて、2023年度までに本施工システムの完成を目指します。さらに、全自動化システムの構築に向けて取り組み、山岳トンネル工事における安全性の向上、生産性の向上に努めていきます。