新着情報 日本初、仮設現場事務所において『ZEB』取得※1

2022/08/01

戸田建設(株)(社長:大谷 清介)は、この度、第二神明道路櫨谷工事の仮設現場事務所において、国内初の『ZEB』※2の認証を7月29日付で取得しました。当社は本現場事務所における認証取得を皮切りに、現場事務所のZEB化を展開していきます。

  • ※1一般社団法人住宅性能評価・表示協会ホームページ、BELS事例データ一覧による(2022年7月末時点)
  • ※2ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、快適な室内環境を実現しながら、高断熱化や設備の高効率化による省エネ、太陽光パネルによる再エネにより、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物のこと。エネルギーの削減率により4つのランクに分けられ、最高ランクの『ZEB』は100%以上の削減が必須
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図1 完成予想パース(外観)
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図2 『ZEB』認証ラベル

工事現場の脱炭素化に向けた背景

地球温暖化対策として温室効果ガスの排出抑制が求められるなか、当社はSBT認定※3を2017年に取得・2022年に更新しており、スコープ1+2※4の排出総量を2030年度までに2020年度比42%削減することを目標として掲げています。工事現場においては「TO-MINICA(低炭素施工システム)※5」の使用、RE100に適合する再生可能エネルギー電力の採用などにより、スコープ1+2の削減に取り組んできました。今後はさらなる削減に向け、現場事務所のZEB化を推進し、脱炭素社会の実現に貢献します。

  • ※32015年のパリ協定に基づいた、企業の科学的な根拠に基づくCO2排出量の削減目標
  • ※4スコープ1:自社の建設現場等で使用したガソリン、軽油、灯油等に伴う直接排出
  • スコープ2:自社が購入した電気、熱等の使用に伴う間接排出
  • ※5施工中に排出するCO2量を事前に計算し、これに対して削減計画を立案・実行する、当社独自のシステム
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図3 各種ロゴマーク(左から エコ・ファースト企業認定/RE100/SBT認定/CDP A list企業選定)

『ZEB』取得に向けた工夫点

当社は建設中の新社屋「新TODAビル」※6でのZEB Ready認証取得、筑波技術研究所「グリーンオフィス棟」※7での『ZEB』認証取得など、ZEB化を積極的に推進してきました。そこで蓄積したノウハウを生かしながらも、仮設という性質に合わせ、経済的でかつ現場事務所に活用しやすいZEB化モデルを開発しました。
本現場事務所では屋根・壁・1F床の断熱材追加や窓への遮熱フィルム貼付けによる外皮性能の向上、執務室の運用を見越したうえで容量を最適化した高効率空調機の計画、LED照明及び赤外線感知できる人感制御の配置により、一次エネルギー消費量62%の省エネを達成しました。また太陽光パネルによる発電も加味することで、正味109%の削減が可能となります。
ほかにも、発電した電力のさらなる活用を目的として、(株)村田製作所(社長:中島 規巨)製のAll-in-One蓄電池システム(蓄電池一体型パワーコンディショナ)を導入しています。小型で移設が容易であることから、短期間で解体される仮設事務所との相性がよく、撤去後は太陽光パネルとともに他現場で再利用可能です。搭載された蓄電池により、日中は発電量の余剰分を充電し、夜間に放電することで、再生可能エネルギーを無駄なく使用できます。また、停電時にはバックアップ電源とすることで、現場事務所の安全管理にもつながります

  • ※6建物高さ150m以上の複合用途ビルにて建物全体での「ZEB Ready」認証を日本で初めて取得した施設
  • ※7改修工事、運用、廃棄にいたるライフサイクルにおけるCO2排出量に対し、再生可能エネルギーや木材・樹木の採用によるCO2削減効果の方が大きくなる、カーボンマイナスを目指した施設
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図4 All-in-One蓄電池システム
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図5 設備別エネルギー消費量

エネルギーの見える化による省エネ意識の向上と労働環境の改善

当社はCO2排出量見える化システム「CO2MPAS」を開発しており、工事現場への配置を進めています。ZEB化によるCO2排出目標と日々の排出実績を比較・表示させることで、執務者の省エネ意識向上及び、エネルギーロスの原因追究を図ります。また両者に乖離があった場合には、長時間労働が表面化している可能性も考えられます。執務者の安全と健康を確保し、一人ひとりのウェルビーイングを向上させるためにも、日々の取得データから労働環境を改善し、魅力的な建設現場の実現に努めていきます。

<現場事務所概要>
建物名称 第二神明道路櫨谷工事現場事務所
所在地 兵庫県神戸市西区櫨谷町地先
延床面積 368.74 ㎡
構造 軽量鉄骨軸組構造
太陽電池容量 19.2 kW
蓄電池容量 9.2 kWh
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図6 CO2MPASの画面イメージ

シミュレーションによる快適性の検証

空調機容量の最適化にあたり、執務室の温熱環境をシミュレーションしています。検証の結果、夏期・冬期ともに、断熱性の高い『ZEB』仕様の現場事務所のほうが、外気温や日射の影響が小さいことから、室温のムラを抑えることができました。快適性を評価する「PMV※8」においても、快適範囲である-0.5から0.5に占める割合が大きく、ZEB化による快適性の向上が認められました。

  • ※8温度、湿度、放射、気流、活動量、着衣量の6つの要素から算出される快適性を評価する指標
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図7 執務室での夏期のPMV比較(左:標準仕様 右:『ZEB』仕様)
<夏期解析条件>
室内温度 26℃
室内湿度 50 %
着衣量 0.6 clo
活動量 1.1 met
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図8 執務室での冬期のPMV比較(左:標準仕様 右:『ZEB』仕様)
<冬期解析条件>
室内温度 22℃
室内湿度 40 %
着衣量 1.0 clo
活動量 1.1 met

今後の展開

本現場事務所の運用を通して、省エネ性・快適性を都度検証し、さらなるZEB化の推進・脱炭素社会の実現に貢献します。