新着情報 シールド工事の大気圧下ローラーカッター交換技術「Hi(ハイ)-RORRA(ローラ) System」を開発 3.0MPaの超高水圧下においても安全・確実な交換が可能!

2023/02/14

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、JIMテクノロジー(株)(本社:神奈川県川崎市、社長:三木 孝信)、日本シビックコンサルタント(株)(本社:東京都千代田区、社長:長崎 均)と共同で、硬質地盤を対象としたシールド工事において、地盤の掘削に用いられるローラーカッターの新たな交換技術「Hi-RORRA System」を開発しました。
長距離施工により摩耗したローラーカッターを、作業員がシールド機の外に出ることなく、大気圧下の機内において安全で確実かつ効率的に交換可能な技術です。独自の止水機構により、大深度における高水圧下であってもカッタースポーク内の安全な作業環境を確保します。今回、カッタースポーク内を模擬した実物大の実験装置を用いてローラーカッターの交換実験を実施し、高水圧下における止水機構の信頼性と、制約のある作業空間での円滑な交換作業性を確認しました。

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図1 ローラーカッター交換技術の概要図

開発の背景

シールド工法は、都市域などの地上から掘削ができない場所で、シールド機(通常外殻と隔壁で覆われた掘進機)を用いて地中を掘進する方法です。シールド機は、その前面に装備されたカッターヘッドを回転して地中を掘進し、下水道や共同溝、鉄道、道路などの様々な用途の地下トンネル構造物を構築する工法です。このうち道路トンネル等は、他のインフラ構造物と比較して大断面かつ長距離であり、既設構造物などの障害物を避けるために、必然的に地下深部に計画されることになります。近年は都市部における高速道路の地下化なども活発化しており、大深度かつ長距離トンネルのニーズが増大しています。
大深度では一般的に地盤が硬質であり、岩盤等の硬質地盤を対象としたシールド機のカッターヘッド前面には、ローラーカッターが配備されます。しかし、地山を掘削することで摩耗・損傷するため、特に長距離トンネル工事では掘進途中で複数回の交換が必要です。また地下水位からの深さに応じて高い水圧がかかりますが、高水圧下では簡単には機外に出ることができないため、地盤改良等の補助工法により事前に地盤の安定を図る必要があります。一方、機械式や遠隔操作による交換技術では、ローラーカッターが確実に交換されたことの目視による確認が難しく、また複雑な交換装置に掘削ズリが詰まって交換ができなくなる等の課題があります。交換作業に伴う工事期間の延長や、周辺環境に及ぼす影響を抑制するために、このローラーカッターの安全で確実かつ効率的な交換技術の確立が求められています。

本技術の概要

本技術は、開発した交換装置を用いて、高水圧下においても作業員がシールドの機外に出ることなく、大気圧下でカッタースポークの内部よりローラーカッターの交換作業を行うことができる技術です。 交換装置は主に、ローラーカッターを固定した回転体の「回転機構」と、シール部をスライド可能な「止水機構」で構成されています。またこれら2つの機構の動作が掘削ズリの詰まり等で阻害されることがないように、交換装置の後方には「排土機構」を設けています。
ローラーカッターを交換する場合、掘削停止後に回転体を縦回転させて、シールにより地下水等の外圧を遮断してからの作業となるため、カッタースポーク内で作業員が安全に交換作業を行うことができます。 本技術におけるローラーカッター交換の作業手順を図-2に示します。 またこちらの作業手順については、以下のリンク先から説明用の動画がご覧になれます。

https://www.toda.co.jp/tech/shield_construction/Hi-RORRA_System.mp4

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図2 ローラーカッター交換装置および交換手順

本技術の特長を以下に示します。

  • 交換装置後方の排土機構により、土砂による交換装置内の閉塞や、カッターが固定化され偏摩耗するリスクが低い
  • 交換装置内の止水機構により、大深度かつ高水圧下であっても確実な止水が図れる安全な作業環境を確保できる
  • 大気圧下のカッタースポーク内で交換できるため、シールド機外での危険な作業を排除できる
  • 人力でローラーカッターを交換できる機構であるが、電動機械と併用することで更なる作業効率の向上が可能(手順2,4,5)
  • 繰り返し交換ができ、土質に応じたカッタービットの選択も可能
  • 機外に出る必要がないため地盤改良等の補助工法が省略でき、工程短縮および工事費の低減が可能

実物大の実験装置によるローラーカッター交換実験

実際に作業するカッタースポーク内を模擬した実物大の実験装置を用いて、交換装置内の止水機構による止水性と、ローラーカッターの交換作業の作業性を確認しました。

結果は以下のとおりです。

  • 超高水圧下(最大3.0MPa)において高い止水性を維持(一定時間の連続加圧にて漏水なし)
  • 従来の交換方法よりも短い作業時間で交換が可能(取り外し・取り付けにかかる交換時間は約1.5時間) 実験結果より、本技術は十分実用可能であることが確認できました。また装置内の可視化や電動機械の導入等により、更なる安全性および作業性の向上を図ることができます。
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    写真1 実物大交換実験装置
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    写真2 ローラーカッター交換作業状況

今後の展望

当社らは、本工法を今後も幅広い適用条件に柔軟に対応できる技術とすべく検証を進め、実プロジェクトへの適用を目指してまいります。