新着情報 酷暑環境での体温上昇を抑制する背負い式大型冷却デバイスを開発 深部体温の上昇抑制に着目、今年の夏の試験導入に向けて

2024/03/27

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、(株)京都プラテック(本社:京都府久世郡、代表取締役:井手 敏明)と共同でペルチェ素子※1を用いた背負い式大型冷却デバイス(以下、本デバイス)を開発しました。従来の熱中対策では対応困難な酷暑環境での作業において、本デバイスは冷感を付与して快適性を向上させるだけでなく、深部体温※2の上昇を抑制することで、効果的で新しい熱中対策を提供いたします。

20240327_1_01.jpg
冷却デバイスの形態(上:正面、下:背面)
20240327_1_02.jpg
冷却デバイスの使用状況
  • ※1直流電流を流すと一方の素子の面で吸熱、他方の面で発熱する半導体熱電素子の一種
  • ※2脳や臓器などの体の内部の温度

背景

近年、夏季に最高気温が35 ℃を超える猛暑日が増加しています。建設現場では日除けを設置できない場所や高温多湿の環境で作業せざるを得ないことが多く、作業従事者が熱中症のリスクに曝されています。従来は、大型扇風機、スポットクーラー、保冷剤またはファン付き作業服などが使われてきましたが、建設業における熱中症による死傷災害は未だなくなっていません。

概要

熱中症は、高温多湿な環境や作業による深部体温の上昇などが原因で発症します。作業により一旦深部体温が上昇すると、安全な温度に降下させるまでに時間がかかり、熱中症災害リスクが高まります。そこで、作業中の深部体温の上昇を抑制することを目的に、ペルチェ素子を用いた本デバイスを開発しました。

本デバイスは、作業に影響を及ぼしにくく、フルハーネス型安全帯※3を着用しても冷却効果を維持できるように背中央に配置することとし、専用のベストと形状を変化させることができるPCM※4で背中との密着性を保持し、体型に関わらず冷却効果を最大限受けることができます。また、広範囲を冷却するために冷却面積を約100 cm2と大型にしました。さらに、一定温度での長時間冷却は体温の回復に伴い冷却効果が小さくなることから、冷却の強弱を繰り返す制御を取り入れています。深部体温の上昇抑制に着目し、これらの機能を盛り込んでいるという点で、これまでにはない熱中対策デバイスです。

本デバイスの仕様(予定)

項目仕様
冷却効果 -22 ℃(環境温度26 ℃の場合)
冷却時間 4時間以上(バッテリー容量48 Whの場合)※冷却の強弱設定により変動します。
冷却面積 約100 cm2
材質 アルミニウム合金(冷却部)、ABS樹脂(デバイス筐体)、ナイロンおよびポリウレタン(専用ベスト)、PCM(冷却部)
  • ※3墜落・転落時に人体を腰部、肩および腿などの複数箇所で支持する墜落制止用保護具
  • ※4材料の状態変化により熱エネルギーを吸収または放出する材料(Phase Change Material)

効果

本デバイスの効果を確認するため、人工気象室(温度:35 ℃、湿度:65 %RH)において、20分間の運動後の衣服内温湿度や発汗量、冷感などの変化を調査しました。その結果、本デバイスの着用により、衣服内温湿度と発汗量の低下、暑さや不快感、蒸れ感が改善する効果を確認しました(これらの効果には個人差があります)。

また、夏季の建設現場において作業従事者に本デバイスを試験導入し、快適さと作業への影響、フルハーネス型安全帯との干渉、既存の熱中対策との比較などについてヒアリングを行い、冷却デバイスが効果を発揮する条件を確認しました。

20240327_1_03.jpg
人工気象室において20分間運動後のサーモグラフィ画像の比較
20240327_1_04.jpg
地上での試験導入(2023年夏季)
20240327_1_05.jpg
地下での試験導入(2023年夏季)

今後の展開

2024年夏季に当社が施工する複数の建設現場に本デバイスを試験導入する予定です。今後、夏季の標準的な熱中対策の一つとして活用が進むように、建設現場への適用と改良を繰り返すことで、本デバイスの品質・信頼性を高めていきます。