新着情報 環境負荷低減に寄与する地盤改良技術 高吸水性ポリマーを用いた高圧噴射撹拌工法「ハイブラストジェットⓇ」を開発

2024/03/27

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、太洋基礎工業(株)(本社:愛知県名古屋市、社長:加藤 行正)とともに、早稲田大学教授 赤木 寛一氏のご指導のもと、高吸水性ポリマーを用いた環境負荷低減型の新たな高圧噴射撹拌工法「ハイブラストジェット」(以下、本工法)を開発しました。

本工法は、粘性流体の拡散抑制効果に着目し、高圧噴射撹拌工法の地盤の切削水に、従来の水噴射に代えて高吸水性ポリマー水※1を使用することで地盤の切削能力を向上し、建設汚泥の減量化を実現します。

  • ※1吸水膨潤した高吸水性ポリマーと水の懸濁液
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図1 ハイブラストジェットのイメージ

開発の背景

高圧噴射撹拌工法は、高圧ジェット噴流によって地盤を切削し、セメント系固化材を地盤に撹拌混合して、強度や剛性の高い改良地盤を造成する地盤改良工法です。小型の施工機械で、任意の深度に大口径かつ高強度の改良体が造成できるため使用用途が広く、開削工事の底盤改良、シールド発進到達部の防護、既設構造物の耐震補強等に活用されています。しかしながら、施工時に地上排出される多量の排泥は、セメント系固化材を含んだ高含水比の建設汚泥で、改良対象となる土質性状によって違いはありますが、一般的に切削水および固化材スラリー※2の地盤注入量相当の建設汚泥が発生するため、注入量の少ない高効率な改良技術の開発が望まれていました。

  • ※2セメント系固化材と水の混合物

本工法の概要

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写真1 フィールド実験状況

本工法は、高吸水性ポリマー水による地盤の切削能力向上により、地盤改良時の切削水および固化材スラリーの地盤注入量を低減させることが可能なため、従来の水噴射と固化材スラリーによる施工法と比べて施工の効率化と建設汚泥の減量化が図れます。高吸水性ポリマーの特性を活用した本工法の特長は以下のとおりです。

  • 粘性流体である高吸水性ポリマー水の拡散抑制効果により、従来の水噴射と比べて地盤切削力を向上し、直径3~3.5 m(最大5.0 m)の大口径の改良体を造成可能。
  • 掘削安定液として実績のある高吸水性ポリマー水により、地盤切削により緩んだ地盤の安定化を図り、施工時の安全性と改良体品質を確保。
  • 造成時はイオン濃度の高い固化材スラリーとの接触により吸水している水を排出し、粘性が低下することで地上への排泥排出阻害を抑制。
  • 高吸水性ポリマー水と専用固化材の使用により、従来の水噴射と比べて地盤注入量を低減し、建設汚泥量を20~40 %削減可能。
  • 造成効率の向上と建設汚泥の減量化により、従来の水噴射と比べて全体コストを30 %程度削減。

実験検証

  1. (1)
    高吸水性ポリマー水の効果検証

    従来の水噴射と高吸水性ポリマー水の違いを検証するため、両流体を気中で噴射(圧力35 MPa)し、高速度カメラによる噴流状況の可視化とPIV(粒子画像流速測定法)による流速計測を実施しました。試験の結果、高吸水性ポリマー水は、水噴射と比較して拡散が少なく、噴射距離1.5 m間の流速は、水噴射の平均流速 約225~50 m/s に対し、高吸性ポリマー水の平均流速は375~225 m/s の範囲にあり、噴射距離による減衰も小さいという結果が得られました。

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    図3 高速度カメラによる噴流撮影
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    図4 PIV解析によるジェット噴流の流速計測結果
  2. (2)
    排泥量の削減効果(フィールド実験検証)
    表1 フィールド実験結果
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    フィールド実験の対象地盤は、地下水位が高い軟弱な砂・粘土の互層地盤で、従来の水噴射(造成時間10分/m)と本工法の高吸水性ポリマー水噴射(造成時間10分/m、8分/mの2ケース)による造成改良体の出来形品質と排泥量を比較しました。改良体出来形は、従来の改良径3.0 m(造成時間10 分/m)に対し、本工法の同一造成時間の改良径は3.5 mと拡大するとともに、従来と比べて改良体コア採取率・平均改良体一軸圧縮強さ・改良体密度も大きくなる傾向を示し、施工効率および改良体品質を共に高めることが確認されました。

    排泥量の削減効果(造成径3.0 m)を表1に示します。本工法による排泥量(実測値8.9 m3)は従来工法(実測値15.3 m3)の約60 %相当量(=8.9/15.3)に抑制され、削減効果は約40 %となりました。この削減効果は、注入材減量の効果(造成時間短縮10分→8分)とポリマー水切削力向上の効果によるものです。

今後の展開

当社らは、本工法が一般に広く活用されることを目指し、本工法の技術マニュアル等の整備を進め、新技術情報提供システム「NETIS」への登録を予定しています。建設汚泥の減量化に寄与できる環境負荷低減型の地盤改良技術として活用を推進していきます。