新着情報 火山ガラス微粉末を用いた環境配慮型コンクリートの共同研究に着手 国内産出での天然資源を用いた環境配慮技術

2024/04/04

戸田建設株式会社(東京都中央区、社長:大谷清介)と西松建設株式会社(東京都港区、社長:髙瀨伸利)は、コンクリート用火山ガラス微粉末を用いた環境配慮型コンクリート(低炭素性)について将来の発展性を考慮し、共同で基本性状を確認し、研究開発に着手しました。

開発の背景

様々な構造物に使用されているコンクリートですが、その製造に関わるCO2の排出量のうち、セメントの材料を起源とするCO2排出量は約9割を占めています。そのため、セメントの一部を高炉スラグ微粉末やフライアッシュのような産業副産物で置換した混合セメントの利用が求められており、当社らも従前より高炉スラグ微粉末を使用した環境配慮型コンクリートの開発に取り組んできました。しかしながら、脱炭素に向けて、高炉から電炉製造への転換や火力発電の縮小の動きが見られ、高炉スラグ微粉末やフライアッシュの供給量が低減する可能性があります。そこで、国内で調達可能な天然資源である火山ガラス微粉末に着目し、新たな環境配慮型コンクリートの研究に着手しました。

コンクリート用火山ガラス微粉末とは

火山ガラスとは火山性堆積物を主原料とする天然ポゾランであり、火山堆積物(シラス)が広く分布する鹿児島県では、県発注の一部の工事や二次製品のコンクリートへ使われる等積極的に活用されています。また、火山ガラスを一定の粒度に調整した火山ガラス微粉末は、以下のような特徴を有します。

  1. 1焼成の必要がなく、セメントと比較して、製造における環境負荷が小さい
  2. 2原料となる火山性堆積物は国内に広く分布しており、運搬における環境負荷の低減が期待できる
  3. 3セメントや骨材と置換して使用することで、コンクリートの圧縮強度や耐久性の向上が期待できる

このような特徴から、火山ガラス微粉末はコンクリート製造時におけるCO2排出量削減効果のあるセメント代替品として、さらに、我が国では100%輸入に頼っている高強度コンクリート用シリカフュームの代替品としての活用が期待されており,2020年3月にJIS A 6209(コンクリート用火山ガラス微粉末)が制定されました。また、2022年にはJASS5(建築工事標準仕様書・同解説:鉄筋コンクリート工事)に混和材料として、2024年にはJIS A 5308(レディーミクストコンクリート)に使用材料として「コンクリート用火山ガラス微粉末」が記載されました。

確認したコンクリートとしての基本性状

当社らは鹿児島県産火山ガラスを使用したコンクリートの基本物性を確認しました。

  1. 1
    環境配慮性を考慮し、セメントの代替として使用(コンクリート用火山ガラス微粉末Ⅱ種)

    火山ガラス微粉末を一定の割合でセメントと置換して使用した場合も、普通ポルトランドセメントを使用したベースコンクリートと同等なフレッシュ性状(写真1)、圧縮強度が得られることを確認しました(水結合材比50%、標準養生、材齢28日にて圧縮強度36 N/mm2以上)。

  2. 2
    超高強度コンクリートで使用されるシリカフュームの代替として使用(同上Ⅰ種)

    一般的に超高強度コンクリート向けに使用されているシリカフュームプレミックスセメントのシリカフューム置換率を基に、火山ガラス微粉末の置換率を定め、フレッシュ性状、圧縮強度を確認しました。その結果、良好なフレッシュ性状(写真2)が得られ、シリカフュームプレミックスセメントを使用したベースコンクリートと同等な圧縮強度が得られることを確認しました(水結合材比20%、標準養生、材齢28日にて圧縮強度130 N/mm2以上)。

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写真1 火山ガラスをセメント代替として使用した
コンクリート(スランプ:19.0cm)
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写真2 火山ガラスをシリカフューム代替として使用した
コンクリート(スランプフロー:60.2cm×59.8cm)

今後の展望

今後は実構造部への適用を目標とし、レディーミクストコンクリート工場において、出荷を想定した試し練りや、模擬試験体による強度、耐久性、施工性等の確認を行います。また、実出荷時のCO2削減量に関して試算検討を進めていきます。