新着情報 国内トンネル初となる現場製造バルクエマルジョン爆薬による発破を実現 トンネル現場の発破作業の安全性、効率性の向上へ

2024/04/12

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、イーピーシージャパン(株)(本社:東京都港区、代表:パスカル・ラクーリ)、(株)サンライズ(本社:神奈川県横浜市、代表:松本 啓志)の協力を得て、日本のトンネル施工で初となる、現場で製造するサイトミキシング型バルクエマルジョン爆薬による発破を実現しました。

当該爆薬は専用の製造・装填機械にて爆発の危険性がない基材と発泡剤を現場で混合して製造するマヨネーズ状の爆薬です(図-1)。従来の発破作業では、工場で製造された紙巻包装円筒状の含水爆薬(図-1左下)を、トンネル掘削の最先端箇所(切羽)にあらかじめ穿孔した穴に、作業員が手作業にて本数単位(200g/本)で調整して装填していました。バルクエマルジョン爆薬はホースと長いノズルを用いて切羽から従来よりも離れた位置で、爆薬量を10g単位で調整して装填できます。そのため、発破作業の安全性、効率性の向上が図れます。海外では20年以上前から導入、改良が進められており日本でも注目されていました。しかし、日本では火薬類取締法上、爆薬の製造工場と同様の許可が必要となることが現場適用への大きなハードルとなっていました。

このたび、当社施工の新名神高速道路宇治田原トンネル東工事(発注者:西日本高速道路(株))において、難関資格である火薬類製造保安責任者の有資格者の配置等、火薬類取締法上の基準を満たし、トンネル現場では初めて製造許可を取得しました。そして、当該爆薬による発破の実現に至り、良好に岩盤を破砕できることを確認しました(写真-1~3)。

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図-1 バルクエマルジョン爆薬の製造・装填機械の概要
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写真-1 爆薬装填状況
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写真-2 爆薬装填完了
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写真-3 発破完了

導入の背景

山岳トンネルの施工では固い岩盤の掘削作業は発破で行うのが主流です。発破における爆薬の装填作業は、工場で製造された紙巻包装円筒状の含水爆薬を切羽まで運搬し、あらかじめ切羽に穿孔した穴に作業員が手作業で行うのが一般的ですが、以下の問題がありました。

  1. 1切羽の近傍で作業するため、掘削面の岩塊がはがれ落ちてきて被災する危険性がある。
  2. 2爆薬の取り扱いに注意が必要なため、安全性や生産性の向上につながる自動化機械等の開発が困難である。
  3. 3爆薬量の調整は1穴あたり4~6本程度と本数(200g/本)で管理されるため、細やかな調整ができない。
  4. 4装填後の爆薬と孔壁の間には空隙ができるため、爆発の威力を岩盤に効率的に伝えられない。

本技術の特長

本技術は専用の製造・装填機械で基材と発泡剤をホースで送り、ホース先端に取付けたノズル内部で撹拌して爆薬を製造し、ホース先端から吐出して装填する技術です。本技術の特長は以下の通りです。

  1. 1ホースと長いノズルを使用することにより、切羽から離れた場所から安全に装填することが可能になります。
  2. 2攪拌するまでは爆薬ではないため、爆発の危険性はないものとして取り扱えます。
  3. 3爆薬量の調整はタッチパネル操作にて10g単位で行えるため、爆発の威力を微調整できます。
  4. 4従来の紙巻包装の含水爆薬よりも孔内に密に装填することができ、爆発の威力を効率的に岩盤に伝えられるため、爆薬量を減らすことが可能になります。

今後の展望

当社は、山岳トンネル施工における一連の作業の遠隔化・自動化のシリーズ化に取り組んでいます。今後は本技術を用いて発破の遠隔化・自動化を推進していきます。