新着情報 シールド機の自動運転制御技術の高精度化とコスト低減を実現 油圧ジャッキ圧力を個々に自動調節するシステム「Best Fit Jack®」を開発
2024/04/23
戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、トンネルを掘削するシールド機の掘進方向(向き)と姿勢(傾き)の制御を行うために、ジャッキの油圧を自動で調節する新たなシステム「Best Fit Jack®(以下、本システム)」を開発しました。シールド掘削技術の1つの要素である本システムの開発により、当社が開発を進めるシールド機の自動運転制御技術を高精度化し、実用化に向けて大きな一歩を踏み出しました。自社で開発したことで、類似する既往技術と比較して現場導入にかかる費用を低減し、より安価に現場へ提供することが可能になります。
本システムは、シールド機の後方に取り付けた油圧ジャッキの圧力を個々に自動調節してシールド機を動かすシステムであり、当社が開発したAI Transform Shield®※1(以下、AIシステム)や自動連続測量システム※2と連携することで、シールド機の掘進方向や姿勢を制御することができます。
- ※1AIを活用したシールド工で効率化・品質向上を図る https://www.toda.co.jp/assets/pdf/20200331.pdf[PDF:473KB]
- ※2測量機器の盛替え不要の自動連続測量システムを開発 https://www.toda.co.jp/news/2023/20230516_003208.html

開発の背景
シールド工事では、シールド機の掘進方向(向き)や姿勢(傾き)を制御して掘進を行うため、シールド機内の複数の油圧ジャッキの中から油圧を加えるジャッキを選択し、選択した油圧ジャッキの圧力バランスによって切羽面の推力分布を調整、掘進を行います。
現状はオペレーターが経験に基づいて必要な油圧ジャッキを選択するため、人によって油圧ジャッキの圧力パターンにバラつきがあることや、状況によっては片押しの状態(圧力を加える油圧ジャッキが片側に集中する状態)となり、一時的にセグメントの局部に大きな負荷がかかることがあります。
そこで当社は、現在開発を進めているシールド機自動運転システムの実用化に向け、油圧ジャッキの圧力を自動で調節可能なシステム「Best Fit Jack®」を開発し、当社のシールド工事にて実証を行いました。
本システムの概要
本システムでは、当社の自動連続測量システムの結果から、AIシステムがシールド機の最適な掘進方向やそれを実現する圧力の大きさ等を算定します。その算定値を受け、総合圧力制御を行う本システムにより、全ての油圧ジャッキの圧力を調整して、シールド機を掘進します。
具体的には、まず自動連続測量システムを用いて掘進中のシールド機の情報をリアルタイムに把握し、AIシステムを用いて過去の実績データから最適な指示値(掘進方向や姿勢)を導き出します。その指示値を本システムが受信して各油圧ジャッキの圧力を自動で調節可能なため、トンネルの計画線からの離れ(誤差)を常に最小に抑える理想的な掘進を実現します。
本システムの主な特長は以下のとおりです。
- 全ての油圧ジャッキを使用した総合圧力制御によりセグメントへの負荷を分散できトンネル構造物の品質が向上
- AIシステムを用いた自動運転により経験に基づく操作が不要となり、経験の浅いオペレーターでも安定した線形管理ができ、人為的なミスの防止につながる
- 計画路線から離れてしまった場合でも、AIシステムにより、掘進中のシールド機を理想の路線に緩やかに近付けるよう自動調節されるため、周辺地盤への影響やセグメントへの負担が軽減
- 油圧ジャッキの圧力を1本ずつ調節、あるいは複数本をまとめたブロック単位での調節も可能で、導入コストが低減


シールド工事における実証結果
当社のシールドトンネル工事現場で本システムの実用性の検証を行いました。
その結果、AIシステムが伝送した指示に合わせて、本システムを通して油圧ジャッキおよびシールド機の自動運転を支障なく行うことができ、本システムの実用性を確認することができました。
今後の展開
当社は今後、本システムを用いて自動かつ高精度な掘進管理技術を確立し、外販も見越した積極的な展開を進めます。またAIシステムで様々な要素技術の情報を統合することで、シールド工事の施工の完全自動化を目指します。