新着情報 高水圧下でシールド機が安全に到達可能な坑口装置を開発 立坑内への出水トラブルを防止して到達工の安全性を向上

2025/02/18

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、シールドトンネル工事の到達工において、高水圧下においても確実かつ安全にシールド機を到達させることが可能な坑口装置(以下、本装置)を開発しました。

本装置(図-1)は、シールドトンネル工事の到達工における立坑内への出水や土砂流出トラブルを防止するため、シールド機が通り抜ける坑口装置の構造上の課題に着目し、2つの鋼製筒体を重ねてスライドできる機構を設け、止水パッキン(第2パッキン)を正しく機能させる新しい構造(図中の赤丸部)としました。本装置の適用により、シールドトンネル工事の到達工における安全性が向上して災害発生や周辺地盤の沈下等の事故を防止します。また地盤改良の省略等によるコストの低減や工期短縮を実現します。

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図-1 本装置構造図および適用状況

開発の背景

シールド到達側の坑口装置においては、止水パッキンがシールド機に押されて変形する(折れ曲がる)方向が地下水圧の作用する方向と同じになってしまうために、特に高い地下水圧が作用する深層では止水性能を維持することが難しいという構造上の課題がありました(図-2)。ワイヤーを用いて止水パッキンを締め付けたり鉄板を押し付けたりしても、わずかな隙間から地下水が流出すれば立坑内での災害や周辺地盤の沈下が生じる可能性があり、この対策として坑口部の地盤改良や凍結といった工事が必要になると工事金額の増加や工期延長の要因になってしまいます。

そこで当社は、到達側の坑口装置の構造を見直し、より確実かつ安全にシールド機を到達させることができる新たな坑口装置を開発しました。

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図-2 到達側坑口装置の止水性の課題(従来構造)

本装置の概要

本装置は、シールド機を受け入れる2つの鋼製筒体を重ねた二重構造としており(坑口本体部と坑口スライド部)、坑口スライド部の端部には隔壁を設けています(図-1)。そしてシールド機の付着物の除去を目的としたパッキン(以下、第1パッキン)を坑口本体部の地山側に、止水性能の向上を目的とした2枚目の止水パッキン(以下、第2パッキン)を坑口本体部の立坑側に取り付けており、シールド機が到達位置に達するまでは坑口スライド部によって第2パッキンは拘束されている状態としています。シールド機が到達位置に達したら、坑口スライド部を立坑内にスライドさせることで、第2パッキンがシールド機に密着します。到達作業手順を図-3に示します。

上記手順により第2パッキンが地下水圧の作用方向とは反対の向きに折れ曲がるように工夫しているため、止水パッキン本来の止水機能を発揮し、地下水圧が高いほど止水パッキンがシールド機の胴体に密着して確実な止水を図れる構造となっています。

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<STEP1>
シールド機の先端が到達立坑内に進行するとまず第1パッキンがシールド機胴体の外周面に接し、胴体に付着している付着物を除去する。
この間、第2パッキンは坑口スライド部によって拘束され、シールド機とは接しない。
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<STEP2>
シールド機が進行して到達位置に達したら、坑口スライド部を専用ジャッキでスライドさせ、第2パッキンをシールド機に密着させる。
その後はパッキン室内に裏込め材を充填し、漏水の有無を確認した後、坑口スライド部および隔壁を撤去する。

図-3 本装置を用いたシールド機の到達手順

本装置の特長

本装置の特長は下記のとおりです。

  1. 1シールド到達工における出水や土砂流入トラブルをなくして工程遅延を防ぎ、立坑内の災害や地盤沈下等の事故を防止して現場や周辺環境の安全を守る
  2. 2到達部の地盤改良の省略、または小規模化による工事金額の低減が図れる
  3. 3シンプルな二重構造であり、様々な施工条件(シールド機の大きさや地下水圧等)に容易に対応できる
  4. 4従来よりも止水性能が高く、かつシールド機到達以降の地下工事においても長期的に安全性が維持できる

現場適用結果

本装置は、当社シールド工事に適用し、到達工において効果を確認しました。当該工事の到達工では計画手順どおりに施工を進められ、立坑内や周辺環境にも特に異常なく、無事にシールド機を到達させることができました

今回の現場適用により、立坑の大きさに合わせた坑口スライド部の寸法の工夫や坑口スライド部の引き込み量をより正確に管理する工夫などの新たな課題が得られたため、現在は更なる改良を進めています。

今後の予定

当社は今後、本装置を積極的に適用して到達工におけるトラブルを減らし、シールドトンネル工事の安全・安心な施工を実現していきます。