新着情報 AI画像解析技術を用いた切羽安全監視システムを開発 切羽への立入監視を強化し、安全性を飛躍的に向上

2025/03/21

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、山岳トンネル工事における掘削の最先端(切羽)での作業において、労働災害防止を目的とした切羽安全監視システム(以下、本システム)を開発しました。本システムは、AI画像解析技術を用いて切羽の立入禁止範囲内に存在する人物を検知し、周囲の工事関係者に視認性の高い光と音で知らせるとともに、現場事務所等の離れた場所からカメラ映像により作業状況をリアルタイムに監視することができます。

この度、当社施工中の新名神高速道路宇治田原トンネル東工事(発注者:西日本高速道路(株))に、本システムを試験導入し、実用性を確認しました。

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図‐1 切羽安全監視システムの概要図

開発の背景

山岳トンネル工事における掘削の最先端(切羽)では地山が露出しており、岩石の落下等(肌落ち)による重大な労働災害が発生しています。厚生労働省は、こうした災害の発生状況を踏まえ、切羽における肌落ち災害防止対策をより一層推進するため、令和6年3月26日に「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」の改正を行い、新たに「切羽(天端)からの45度の範囲を特段の配慮を必要とする範囲とし、可能な限り立入りを避けること」が明記されました。

一般的には切羽への立入禁止範囲をテープ等で明示し、切羽監視責任者を専任配置して常時監視を行っていますが、人物の立入に気づかない等の人為的ミスや、ズリ出し等の重機出入りが激しい作業においてはテープ等による明示ができず、立入禁止範囲が曖昧になる等の管理上の問題もあります。そこで、切羽での作業における立入禁止範囲監視の効率化および強化を図ることを目的に、本システムを開発しました。

本システムの特長

本システムの特長は以下の通りです。

  1. 1AI画像解析による切羽の立入禁止範囲判定および範囲内の人物検知
    カメラ映像から特定の目印をAIで認識して、切羽の立入禁止範囲を判定できます。さらに、立入禁止範囲内に存在する人物を判別します。切羽監視責任者の負担軽減を図るとともに、人為的な見落とし防止に繋がります。
  2. 2視認性の高い光と音で警告
    切羽の立入禁止範囲内に存在する人物を検知すると、切羽面に向かって明るい光を照射するとともに、ブザー音で警告します。工事関係者に視覚で直感的に伝えることで、効果的な安全対策に繋がります。
  3. 3カメラ映像を遠隔地からリアルタイム監視
    工事管理者は、現場事務所等の離れた場所からでもカメラの映像により切羽への立入状況や作業状況をリアルタイムに確認することができます。不安全な行動や状態を即時に把握し是正することで、安全性向上に繋がります。

試験導入

本システムを当社施工中の山岳トンネル工事現場に試験導入し、システムの機能性および信頼性を確認しました。 切羽面から約10mの範囲(切羽の天端から45度の範囲)を立入禁止範囲と認識し、当該範囲内外における人物の判別が正しくできており、立入禁止範囲内に人物が入った場合に光と音による警告機能が作動することを確認しました。

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写真‐1 立入禁止範囲に存在する人物の検知状況
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写真‐2 視認性の高い光での警告状況

今後の展望

本システムを複数の山岳トンネル現場に試験導入しながら、システムの改良や多機能化を図るなど、実用性の高いシステムへとブラッシュアップして、山岳トンネル工事の切羽での作業における安全性向上を目指していきます。