新着情報 推進管全体に作用する推力を可視化するシステムを開発 緩衝材の圧縮量を推力に換算して任意位置の推力を推定
2025/03/28
戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、(株)共和電業(本社:東京都調布市、社長:田中 義一)の協力を得て、上下水道や電気・ガスなどの管路を地下に敷設する推進工事において、推進管の推力伝達の様子を可視化するシステム(以下、本システム)」を開発しました。
本システムは、推進工事の中でも主に長距離施工、曲線施工といった推力が上昇しやすい条件の工事を対象としています。推進管と推進管の間には一般的に緩衝材(推力伝達材)と呼ばれる材料を貼り付けます。また、緩衝材は推力により応力-ひずみの関係に従って圧縮されます。その特性を利用して、圧縮量を推進管内に設置した変位計を用いて計測することにより、計測地点に作用している推力を推定することができます。この計測を推進管内の複数地点で実施すると、地山と推進管の間に発生する周面摩擦力からの推力の減衰具合が把握できるため、周面摩擦力増大時の対策を実施すべき範囲の絞り込みができるようになり、対策工の高効率化、コストの削減が図れます。実証施工では、推進管内の2箇所に変位計を設置し、緩衝材の圧縮量の計測値から推力を推定することで、各区間の周面摩擦力を推定できることを確認しました(図-1)。

開発の背景
近年、土地利用の制限などの要因により、推進工事の長距離施工や曲線施工の事例が増加しています。このような条件では推進管の周面摩擦力が増加しやすいため、推進に必要な推力が高くなります。しかし、局所的な要因で周面摩擦力が増加した場合、これまではその場所の特定が困難であったため、周面摩擦力低減対策を満遍なく行う必要がありました。そこで、当社は推進管内の複数地点でその場の推力を把握し、元押しジャッキから推進機までの推力の伝達状況を可視化するシステムを開発することにより、前述の対策を効率的に行うことを可能としました。
本システムの概要
推進が始まり元押しジャッキからの推力が推進管を伝達していくと、推進管と推進管の間の緩衝材が推力により圧縮されます。その圧縮量を変位計により複数地点で計測し、推力に換算することで周面摩擦力による推力の減衰具合を把握することができます。これにより、周面摩擦力が大きな区間を絞り込み、周面摩擦力低減対策を効率的に実施できます。
また、本システムでは各計測値を数秒間隔で計測しており、推進開始後、発進坑口に近い緩衝材から順に圧縮されていくことが、これまでの実証施工でわかっています。この事象を利用すると、元押しジャッキからの推力が推進機まで伝達されるために必要な時間を推定することができます。これにより推進開始時に、推進機に推力が伝達したベストなタイミングでカッターを回転させることができ、地山への影響を抑えた推進も可能になります。
本システムの特長
本システムの特長は下記の通りです。
- 1局所的な周面摩擦力増大箇所を絞り込むことができるため、効率的な周面摩擦力低減対策が可能となり、施工手間や滑剤使用量の低減といった低コスト化を図れます。
- 2実際に推進管に作用している推力を推定できるため、推進管の許容耐力と照らし合わせることで推進管の破損を予防することが可能で、品質が向上します。
- 3システムの構成としては、管内に固定する変位計や坑口部に設置する各計測器の計測データを集約・処理して表示するのみであるため、設置の手間を少なくできます。
リアルタイム表示用ソフトの開発
前述の推進機に推力が伝達したベストなタイミングでカッターを回転させるためには、変位計測値のリアルタイム処理・表示が不可欠です。そこで、管内の変位計設置位置まで推力が伝達したことを視覚的にわかりやすく表示することと、変位計の計測結果をリアルタイムに推力へ換算し表示することを目的に、新たに表示用ソフトを開発しました(図-2)。推力が伝達したと判断した場合に該当箇所を赤く表示する機能や、変位計測値から推力にリアルタイムに換算し表示する機能を備えています。

今後の予定
当社は今後、長距離、曲線施工が課題となっている推進工事現場を主軸に現場適用を進め、本システムの確立を目指すとともに、推進工事の品質向上に貢献していきます。