新着情報 新発想!中空円管を活用した地下式雨水浸透貯留システムを開発 地下水の涵養による施設規模のコンパクト化を実現

2025/03/31

戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)と日本ヒューム(株)(本社:東京都港区、社長:増渕 智之)は、逆流防止弁付きの有孔中空円管を側壁及び柱構造に採用した、新発想の地下式雨水浸透貯留システム(以下、本システムという)を実現しました。地下式雨水貯留施設に一時貯留される雨水の一部を地盤へ涵養させることで、施設規模のコンパクト化を図ることが可能となります。

  • 地表面に降った雨などが地中に浸透すること

開発の背景

近年、都市化や宅地開発が進む中で、適切な処理が追いつかないことによる雨水の地表面への流出や、ゲリラ豪雨、台風及び線状降水帯による洪水被害などが問題となっています。この対策として、地下に雨水を一時貯留する大容量のプレキャストコンクリート工法の雨水貯留施設の普及が進んでいますが、貯留した雨水は河川に直接放流するため、地下水の涵養および貯留水の有効活用が困難であるといった環境面での課題が残されていました。本システムは、この課題の解決を図りつつ、施設規模のコンパクト化を実現することで、地下式雨水貯留施設の工事費低減と工期短縮を大きな狙いとしています。

本システムの概要及び期待される効果

本システムは、まず有孔中空円管(PHC杭等)を地盤に連続的に打設し、掘削時は外壁を仮土留め壁として利用するとともに、雨水貯留施設完成後は外壁として本体に利用します。次に内部土砂を掘削したのちに下床版・中柱・上床版を構築し、上床版上部を埋め戻します。

雨水貯留時は、躯体側壁と中柱に設けた逆流防止弁付き孔の機能により、躯体側壁から周辺地盤に雨水を浸透させるとともに、地上への供給用に中柱内にも雨水を貯留します。さらに加負圧ポンプ・配管を備えることでこの浸透・利水機能を向上させます。周辺地盤の透水係数を1×10-5m/s(砂質土相当)、雨水貯留施設の規模を10,000m3(幅40m、長さ50m、深さ5m程度)と仮定した場合、標準の施設に対して本システムに期待できる効果を以下に示します。

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図-1 本システムの概要図(上:機能図、下:イメージ図)
1.環境への効果
  1. 1地下水の涵養
    側壁を構成する有孔中空円管に貯留した雨水を、概ね1,000m3(雨水貯留量の約10%に相当)地盤浸透させることができ、地下水の涵養に寄与します。
  2. 2地上部への利水機能の付加
    柱を構成する有孔中空円管には最大約100m3(雨水貯留量の約1%に相当)を貯留でき、樹木・舗装への散水など地上部へ活用します。
2.施設規模コンパクト化
  1. 1有孔中空円管への貯留による効果
    側壁及び柱を構成する有孔中空円管内に雨水を貯留することで貯留容量を約11%コンパクト化できます。
  2. 2周辺地盤へ雨水浸透による効果
    側壁を構成する有孔中空円管から概ね1,000m3を地盤へ浸透させると、貯留容量を約10%コンパクト化できます。有孔中空円管への貯留分を合わせると合計で約21%のコンパクト化ができます。
3.建設工事費の低減効果
  1. 1有孔中空円管の仮設土留め兼用による効果
    外壁を構成する有孔中空円管を仮設土留め壁として兼用することで仮設費低減につながり、従来のプレキャストコンクリート工法と比較して工事費を約18%低減できます。
  2. 2施設規模のコンパクト化を考慮した効果
    周辺地盤への雨水浸透効果を考慮して施設規模を21%コンパクトにした場合は工事費を最大約40%低減できます。
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図-2 本システムの標準的施工イメージ図
4.建設工期の短縮効果
  1. 1有孔中空円管の仮設土留め利用による効果
    外壁を構成する有孔中空円管を仮設土留め壁として利用するため施工効率化につながり、同一施設規模の場合で従来のプレキャストコンクリート工法と比較して工期を約25%短縮できます。
  2. 2施設規模のコンパクト化を考慮した効果
    周辺地盤への雨水浸透効果を考慮して施設規模を21%コンパクト化した場合は、工期を最大約40%短縮できます。

技術整備状況及び今後の展開

実物大の逆流防止弁付きの有孔中空円管を地盤へ打設後、本システムの基本的要件である地盤への浸透性能が確保できることを確認済みです(写真-1、写真-2)。また、模擬土槽を用いた性能試験により、加減圧に伴う逆流防止弁の対応性を確認済みです。(図-3)。

今後は、各種実験・解析で得られた成果をマニュアルとして整備するとともに、環境改善及びコンパクト化につながる新技術として、設計提案などを積極的に展開し、実用化を推進していきます。

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写真-1 有孔中空円管
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写真-2 地盤への浸透性能確認試験
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図-3 加負圧ポンプによる浸透効果確認試験概要