新着情報 AIを活用した発破後の岩サイズを自動判定するシステムを開発 写真1枚から迅速かつ安全に発破掘削の良否判定が可能に
2025/07/23
戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、AI技術を活用し、山岳トンネル工事における発破掘削の良否判定のため、発破後の岩サイズを写真1枚から自動的に判定するシステム(以下、本システム)を開発しました。本システムでは、(株)Ristが提供するAI物体検知ソフトウェア「Deep Counter®」を活用し、撮影した写真内の、奥行方向に分布する多数の岩を自動で識別・抽出します(図1)。さらに、抽出した岩の形状データと写真内の基準となる長さを基に、各岩のサイズを瞬時に算出します。本システムを使用することで、写真1枚で迅速かつ安全に自動判定し、施工の中断時間を最小限に抑えることができます。

開発の背景
当社では、山岳トンネル施工の安全性や生産性の向上を目指し、一連の作業を遠隔化・自動化する「ToP-NATM®」※1の開発を進めています。その一環として、発破掘削の効率化のため、爆薬の装薬量などを自動的に最適化するシステムの開発を進めています。このシステムの目的の1つは、発破後の岩サイズを適切な大きさ(盛土材に適用する場合は30cm程度以下)に抑えることですが、発破後の岩サイズを評価するにはいくつか課題がありました。発破直後に岩サイズを直接計測する場合には、掘削面に近づく必要があり、危険が伴いました。また、遠隔で三次元計測などを行う場合には特別な機材が必要となる上、施工を長時間中断して実施する必要がありました。
- ※1山岳トンネルの掘削から覆工コンクリートに至る一連の工種において 遠隔化・自動化技術を統合し、ToP-NATM(Toda Progressive-NATM)として技術メニュー化しております。
https://www.toda.co.jp/tech/mountain_tunnel/topnatm2.html
本システムの概要
本システムは、写真内の多数の岩を抽出してサイズを算出する機能を備えています。岩の抽出には、(株)Rist社が開発したディープラーニングを用いたAI物体検知ソフトウェア「Deep Counter®」を活用しました。このソフトウェアは写真内の複数の物体を輪郭から判別し、その数量とともに形状情報を抽出する機能があります。この機能を活用するため、岩を識別するための機械学習を行いました。さらに、抽出した形状情報から岩サイズを算出する機能を追加することで、多数の岩サイズの自動判定を可能としました。
岩サイズの判定手順
発破後の岩は写真上では奥行き方向に分布するため、各岩の見かけの寸法に違いが生じます。このため、本システムでは図2の(1)~(4)の手順で岩サイズを判定します。

本システムの精度検証
本システムの計測精度については、施工中の山岳トンネル内に模擬岩を配置して検証しました(図3)。2種類の模擬岩を置いて検証した結果、実寸法との誤差は平均で7.2%となり、盛土材としての適用可否等を評価する目的で岩サイズを判定するには、本システムが十分に活用可能であることを確認しました。

今後の展望
今後は、本システムで収集した岩サイズのデータを装薬量最適化システムに反映して高度化を図ることで発破の効率化を進めていきます。また本システムは、奥行方向に散在した多数の対象物の寸法を写真1枚で瞬時に判定することができるため、別用途への展開についても検討していきます。 今後も当社は、山岳トンネル施工の安全性や生産性の向上を目指し、「ToP-NATM®」のさらなる高度化に取り組んでまいります。