新着情報 新展開「超高強度RCセグメント」技術審査証明を取得 シールドトンネル工事のコスト縮減と合理化を実現するセグメント
2025/07/23
戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)、西松建設(株)(本社:東京都港区、社長:細川 雅一)、日本コンクリート工業(株)(本社:東京都港区、社長:塚本 博)の3社は共同で、(一財)先端建設技術センター(本部:東京都文京区、理事長:五道 仁実)にて、「超高強度RCセグメント -UHS-RCS(Ultra High Strength Reinforced Concrete Segment)-」の技術審査証明を取得しました。
超高強度RCセグメントは、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(以降、大深度法と呼ぶ)が適用される地下の道路や鉄道などの大口径シールドトンネル工事において、大規模な建物荷重等が作用する条件下では適用が困難であった従来のRCセグメントに代わり、超高強度コンクリートを用いることで強度不足を解消し、コストの縮減と工事の合理化を実現する新展開の技術です。

開発の背景
大深度法が適用されるような大深度地下に構築される、商業地域における道路や鉄道などの大口径シールドトンネル工事では、(1)高層ビルを想定した大きな建物荷重を考慮する必要があること、(2)併設トンネルとなる場合には近接施工の影響を考慮する必要があること、(3)道路トンネルでは耐火性を考慮する必要があることから、従来のRCセグメントの強度では構造が成立しない場合が多く、より高い強度を有する高価な合成セグメントが適用されており、工事費が増加する大きな要因となっています。そこで、合成セグメントに比べ安価な超高強度コンクリートを使用したRCセグメントの開発に取り組むこととしました。なお、商業地域では将来の大規模な建物荷重が条件となることでセグメントに高強度が要求されますが、施工時にはこの将来の建物荷重は作用していません。このため、シールドの施工時荷重がセグメントに与える影響については、商業地域以外で採用されている従来強度のRCセグメントで安定した施工ができていること、推力試験で性能を確認することから、超高強度RCセグメントを採用してもシールドで安定した施工が可能であると考えています。
本技術の概要
本技術は、道路や鉄道トンネルなどを対象として、コンクリート中に耐火用のpp繊維(以降、pp1と呼ぶ)とはく落防止用のpp繊維(以降、pp2と呼ぶ)とを混入した超高強度コンクリートを製造する技術と、そのコンクリートを用いてRCセグメントを製作する技術の両方で構成されます。
超高強度コンクリートの開発では、コンクリートにシリカフューム(以降、SFと呼ぶ)を混入することにより、小さい水セメント比でも十分な流動性を確保でき、かつ高い強度を実現しました。また、超高強度コンクリートを用いたRCセグメントを従来のRCセグメントと同様の方法で製作できる技術を開発しました。
超高強度コンクリートには、以下の特徴があります。
- 1コンクリートにpp1とpp2を混入しているため、耐火とはく落防止が要求される道路トンネルおよびはく落防止が要求される鉄道トンネルへの適用に優位性があります。なお、道路、鉄道以外の用途についても、コンクリートに高強度が求められる場合には、従来技術に比べ適用性に優れています。
- 2従来セグメントにおけるコンクリートの設計基準強度(42~60N/mm2)を超える、超高強度(80~120N/mm2)を対象としています。
- 3従来セグメントと同様の製造方法で必要となるコンクリートの流動性、早期脱型強度を確保できます。
- 4①〜③を同時に満足させるため、SFを配合して小さい水セメント比でも流動性を確保しています。
大深度・大口径シールドトンネルの比較例
試設計は、従来から使われている一般的なRCセグメントと合成セグメントに加え、一般のRCセグメントと同じ形状で超高強度コンクリートを用いた超高強度RCセグメントの3種類を対象として行いました。試設計例では、セグメント外径φ13.0m、土被り75m、大規模建物荷重、併設トンネル、土質は泥岩層を検討条件としています。断面が決定されるセグメント継手の負曲げモーメントで検討結果を比較したところ、従来のRCセグメントでは構造が成立しない条件下においても、超高強度RCセグメントでは合成セグメントと同じ厚さ0.55mで成立するという試算結果が得られました。
構造性能試験(軸力導入継手曲げ試験)
道路および鉄道トンネルで汎用性の高いセグメント継手とリング継手を使用して、実物大の1/2幅(1.8m/2=0.9m)の平板型供試体により各種構造性能試験を行いました。軸力を導入したセグメント継手曲げ試験では、継手が許容設計断面力となるレベルにおいて、構造の健全性および所定の耐力と変形性能、さらに、計算値を上まわる終局耐力を有していることを確認しました。

今後の展望
今後は、大深度法が適用されるようなシールドトンネル工事へ本技術の適用を展開することで、快適で安全・安心なまちづくりに貢献していきます。また、社会インフラ整備に寄与する技術開発にも引き続き取り組んでまいります。