新着情報 AI(映像、音声)によるリアルタイム車両認識で交通災害ゼロを目指す 工事現場の安全を守る次世代の「特定車両検知システム」を開発
2025/10/23
戸田建設(株)(本社:東京都中央区、社長:大谷 清介)は、(株)GRIFFY(本社:東京都千代田区、代表取締役:入澤 拓也)と共同で特定車両検知システム(以下、本システム)を開発しました。
本システムは、道路上を走行する全ての車両の中から工事車両を検知するAIカメラ「PROLICA®」(NETIS登録番号:KT-240018-A、GRIFFY保有技術)の技術を活用した「特定マーカーAI検知モデル(以下、AIカメラモデル)」と、救急車などの緊急車両のサイレン音を検知し、工事車両の出場を制御する「音声AI検知モデル(以下、AIマイクモデル)」の2つの技術で構成されています(図-1)。これらの技術を組み合わせることで、工事現場およびその周辺道路における安全性の飛躍的な向上が期待されます。

開発の背景
工事現場において、工事車両の出入口における一般車両や歩行者等との接触事故を防止することは、極めて重要な課題です。従来の技術の多くは、出入口付近に接近する車両や歩行者等を検知することが主であり、工事車両が「出場する際」の安全確保に限定されるものでした。
工事車両が「入場する際」の安全確保には、出入口付近の道路を走行するすべての車両の中から、工事車両のみを識別する必要があります。これまで、この要件に対応可能な技術は存在していませんでした。 さらに、一般車両の中でも特に救急車などの緊急車両の通行を妨げないよう配慮することも、今回の技術開発における重要な課題の一つでした。
本システムの概要
(1)AIカメラモデル
本システムでは、工事車両出入口の手前に一般車両向けに設置するLED式の予告看板と、屋外対応の高性能AIカメラを組み合わせて運用します。AIカメラは、通行する工事車両にあらかじめ取り付けられた特定マーカーをリアルタイムで画像認識し、検知と同時にLED看板の表示を切り替えます。これにより、後続の一般車両に対して前方に工事車両が存在することを視覚的に伝え、減速を促します。
さらに、工事車両出入口に設置された回転灯も同時に点灯し、現場のガードマンに対しても注意喚起を行います。
(2)AIマイクモデル
工事車両出入口付近に設置された集音マイクが、工事車両出入口から約100メートル手前を通過し、かつ出入口に向かって走行する緊急車両のサイレン音のみを拾い、それをAI解析部(PC)がリアルタイムで検知します。AIマイクモデルが緊急車両の接近を認識すると、工事車両出入口に設置された回転灯や遮断機が自動的に作動します。これにより工事車両の出場を一時的に停止し、緊急車両の円滑な通行を確保します。
本システムの特徴
(機能)
- 1AIによる高精度な車両識別とリアルタイム通知
- AI画像認識技術を用いた一般車両と工事車両の正確な識別
- LED看板や回転灯による工事車両のリアルタイムな周囲注意喚起
- 2入出場時を通じた包括的な安全検知と制御
- 入場時におけるAIカメラによる工事車両の検知
- AIマイクモデルによる緊急車両サイレン音の検知と工事車両の出場一時停止
(効果)
- 1接触事故リスクの大幅低減と現場内外の安全性向上
- リアルタイム注意喚起と自動通知による接触事故リスクの大幅な低減
- 工事現場内外の関係者に対する迅速な注意喚起と安全性の向上
- 緊急車両近接時、工事車両の出場一時停止による緊急車両の円滑な通行確保
- 2現場運用の効率化
- AIによる自動検知・制御がもたらす人的負担の軽減
- 「入場時」の工事車両のみを識別する技術の確立と提供
本システムの実証
工事現場にて、本システムに関するAIモデルの学習と現場実証を行いました。本現場は作業ヤードが救急病院に隣接しており、緊急車両(救急車)の通行が多い一般道を工事車両が通行するという特殊な環境でした。このため発注者からは、救急車への配慮を含む工事車両の入出場管理が強く求められていました。
学習では、工事車両に設置された特定マーカーを検知する高性能AIカメラ1台、AIマイクモデル用の集音マイク、学習用カメラ3台を設置。三方向から通過する救急車の映像と音声を記録し、AIの教師データとして活用しました(図-2)。
当初、高性能AIカメラによるマーカー識別の正解率は36.4%、AIマイクモデルによるサイレン音検知の正解率は18.9%と低い水準でしたが、識別アルゴリズムの改良を重ねた結果、最終的にはそれぞれ99.4%、98.1%まで精度を向上させることに成功しました。
この成果により、AIによる工事車両および緊急車両の識別技術が、実環境下でも高い信頼性を持って運用可能であることが実証されました。

今後の予定
当社は今後、交通量が多い幹線道路等を主軸に現場適用を進め、本システムの教師データを拡充してさらなる精度向上を図り、交通災害ゼロを目指していきます。
