Zoom UP 現場
小田急電鉄
下北沢線
増連立工事

現場一丸でつなぐ都心への大動脈

小田急線代々木上原駅~梅ヶ丘駅間の2.2kmでは、現在、線増連立事業(複々線地下化)が進められている。朝ラッシュピーク時間帯に激しい混雑が続く小田急線の混雑緩和と輸送力向上、そして踏切での慢性的な交通渋滞解消等を目的としたこの事業は、2013年の地下化に向け大詰めを迎えている状況である。当社の担当する第2工区では、難工事に立ち向かい、一丸となって都心への大動脈をつくっている。

交通渋滞解消と鉄道輸送力向上を

地下に広がる巨大な空間。地下トンネルの構築が進む現場では、幾重にも連なる切梁が工区の端の約400m先まで見渡せ、壮観だ。
一日約180万人が利用する小田急線の向ヶ丘遊園~新宿間。朝のラッシュピーク時間帯には混雑率188%を記録する首都圏でも有数の混雑路線である。混雑緩和、輸送力向上と踏切での慢性的な交通渋滞解消等を目的に始められたのが代々木上原~梅ヶ丘間の線増連立事業だった。現在上下1本ずつの線路を上下線を各2本ずつ計4本設け、急行列車と各駅停車が別の線路を走る。これによって所要時間を短縮。列車の増発も可能になる。また、9ヵ所もの踏切があるのは下北沢地区だけ。これらの踏切がなくなることで踏切事故がなくなるとともに、これまで鉄道で分断されていた市街地の一体化が図られ地域の発展が期待されている。
線増連立事業全5工区の内、当社が担当するのは東北沢~下北沢間の第2工区。当社がJVの主体となったのは平成22年12月だった。当時、第2工区では多くの技術的課題をかかえ、工程も切迫していた。JVのスポンサー会社が当社になり、着任した作業所長は「当然、結果を出すことを求められていました。最初の3カ月間が正念場でした」と振り返る。

構築中の地下トンネル。工区の端、はるか先まで杭や切梁が続いているのが見渡せる。完工すれば、小田急小田原線の混雑緩和と交通渋滞解消に大きく貢献する。
現場図
作業所長

24時間の監視体制で品質を確保

下北沢は地名が示す通り、周辺から水の集まる沢の地形。加えて周辺地質は含水比が高い腐植土層。平成22年12月の初めの段階で掘削は全体の15%程度しか進んでいなかった。ここまで大幅に遅れているのは第2工区だけ。「ここまで難しいのは初めて」。数多くの鉄道工事を手掛けてきた作業所長にとっても手強い現場だった。
地下水の状況を徹底的に把握し、可視化することに気を配った。山留・地下水位・軌道の変位を計測するモニターに加え、現場の様子を映すWebカメラ9台のモニターを事務内に設置。24時間体制で監視を続けている。さらに作業所長は次のように話す。
「安全運行が求められる鉄道工事なので、軌道変位や山留変位はミリ単位まで徹底的に監視を行い、品質にもこだわりながらスピードアップを図り、遅れの挽回を目指しました」。

杭や切梁が林立する中、小型機械で掘削する
現場の状況を可視化するため設置されている地下水位と山留変位、Webカメラなどのモニター

鉄道の安全と周辺環境への配慮

第2工区は全5工区約2.2kmで9カ所の踏切の内、4カ所が集中する。当然、歩行者や周辺環境への配慮も求められる。さらに地上部分は、用地が限られているため、大型車両の出入りができる踏切は1カ所だけ。ターンテーブルで方向転換をする。
「鉄道近接工事のため、鉄道輸送の安全確保は第一。加えて、地元の方の協力がないとうまくいきませんから、踏切の安全対策や当社開発のTANC※を搭載した重機の利用を行うほか、振動などでも迷惑を掛けないように配慮しています」と副所長も語る。

戸田式アクティブ騒音制御システム:
アクティブ・ノイズ・コントロール(ANC)を用いた騒音制御技術で建設機械のエンジンから発生する低音域の騒音を低減することができます。

鉄道と近接し、住宅地が密集している
現場。大型車両が入るのは一苦労だ
ターンテーブル。前進で進入した車両
を方向転換することで流れを良くする
副所長

気づきの感性を磨き前進する

平成23年9月に掘削が終了。地下トンネルの構築工事も今年8月に完了する見込みで、終わりが見えてきた。平成25年中には列車は地下化され、踏切がなくなる見込みだ。平成23年7月には厳しい条件下での取り組みと130万時間無事故(当時)が評価され、日本建設業連合会の「交通安全対策優良事業場表彰」を受賞した。体制変更から現在まで、現場をまとめあげてきた作業所長が方針の一つとして掲げているのが、「『気づき』の感性を磨き、全方位集中して目標を達成する」だ。
メンバーに対し、8月末までの掘削完了を宣言して奮起を促した。これまでの進捗度合いから見ればやや無謀にも思えたが、その根底には土木の醍醐味を味わってほしいという思いがあった。「現場に出て、日々形が変わっていくのを見ることが土木のやりがいです。できない言い訳をするのは簡単ですが、前を向かないと得られないものもあるのです」。その教えは着実に浸透している。
「現場をよく見て今後の姿を創造することが、危険の芽を摘む。作業所長がいつも話している『気づき』の感性を磨くということに近いかもしれません」。入社8年目のメンバーはこう語る。課題を乗り越えた現場で、土木の遺伝子が受け継がれていく。

構築が進む地下トンネル。
既に軌道工事が始まっている

私たちが作っています

工事概要

工事名称 代々木上原・梅ヶ丘間 線増連続立体交差工事
工事場所 小田急電鉄 東北沢~下北沢駅(駅部除く)
事業者 東京都・小田急電鉄(株)
発注者
工事監理
小田急電鉄(株)
施工者 戸田・東急・大和小田急JV
工事期間 平成16年8月26日~平成25年度(予定)
概要 小田急電鉄 東北沢~下北沢間の線増連続立体交差工事(駅部除く)
新宿起点:4K404~4K803 L=399m
土留壁工事:A=36,000m2
(延長400m×南北、回転立坑深さ32.0m~59.9m)
作業構台:A=5,600m2
(2,800m2×南北)
土留支保工:4,100t
(3段梁~5段梁)
土工事:120,000m3
(延長:400m、幅員:22.5m~23.5m、深さ:11.9m~19.3m)
躯体工事:
コンクリート工=27.953m3
型枠工=34,507m3
支保工=43,988空m3
鉄筋工=3,220t