
発注者の想いに応える
木造×鉄骨造の高層商業施設
半世紀にわたり親しまれた渋谷マルイが、木造比率60%のハイブリッド高層商業施設に生まれ変わります。鉄骨造の場合と比べて約2,000tのCO2削減を見込むサステナブルな計画で、外装にも木を大胆に用いた設計です。JR線路至近の厳しい条件下で、前例の少ない課題に挑む当社の最前線をご紹介します。
生まれ変わる渋谷のシンボル
JR渋谷駅・ハチ公口前のスクランブル交差点から北に数分歩いたところで、現在当社は「渋谷マルイ新築工事」を手掛けています。この場所で1971年から2022年8月まで約50年間営業を続けてきた渋谷マルイは、世代を超えて多くの人々に親しまれてきました。現在建設中の新しい建物は、その伝統を引き継いで新たな渋谷のシンボルとなるものです。その特徴について、作業所長は次のように話します。
「最大のトピックは、何と言っても木造の高層商業施設であることです。近年、木造ビルが注目を集めていますが、これまで当社では大規模木造ビルの実績があまりありませんでした。今回の建物は、当社が初めて手掛ける高層木造ビルであると同時に、木造比率50%以上の高層商業施設としては、世界初のものです」。(以下、「」内は作業所長)

建物は、地上9階・地下2階、延床面積約6,800m2という規模です。この地上部分の躯体が、西側(公園通り側)は木造、東側(JR線路側)は鉄骨造という構成になっており、構造全体の中で木造が60%を占めます。
「鉄骨は製造過程で多くのエネルギーを必要とします。今回の建物をすべて鉄骨造でつくる場合と比較すると、木造を採り入れる方が約2,000tもCO2を削減できる見込みです。木造の躯体は、工場生産された柱や梁を現場に搬入して設置するというかたちで、工法としてはPCa造に近いですね」。
現場に搬入した柱や梁は、建て方の後に石膏ボードを張り、その上に仕上げ用の木を張ることで、耐火性能を付与しているそうです。

変形を考慮した躯体と床の工事

工法としてはPCa造に近いという木造ビルの建設。では、木造ならではの難しさはどこにあるのでしょうか?作業所長に聞いてみました。
「木は変形しやすい点です。それによって生じる誤差を考慮して設計から施工まで行う必要があります。例えば、柱を組み上げていった時に、鉄骨と違って木は荷重により縮みます。特にこのビルは最高高さ約50mという木造でも高い建物ですので、その誤差が最大約30mmも生じます。そのため、その縮み代を想定して少し長く製作しています」。
また、変形するのは梁も同様です。この建物の大梁のスパンは約7mですが、この長さを渡すと木造の梁が自重でたわんでしまうそうです。そこで、大梁は工場で製作する際に逆方向(上方向)にむくりを設けているとのことです。
さらに、今回の工事を難しくしているのが、木造と鉄骨造の取り合いです。鉄骨造に比べて変形しやすい木造部分との取合いが上手く納まるように、関係各社や社内の技術部門と慎重に検討しながら躯体工事を行なったそうです。


変形に関わることで、今現場でまさに格闘中と作業所長が話すのが、床に関わる工事です。床は、210mm厚のCLTパネルの上に、耐火被覆として80mm厚のコンクリートと60mm厚の石膏系セルフレベリング材を重ねますが、大梁にむくりを設けているため、設置直後は梁の中央付近が盛り上がっていて、時間と共にこれが水平に近いかたちに収束していきます。その変位を見極めながらコンクリートを打設して所定の厚さを確保するというレベル管理が非常に難しいそうです。
「床面にコンクリートを打設すると、それによって重量が増加してさらに変位が生じます。前例のない工事ですので、とにかく頻繁に計測を重ねながら、慎重に作業を進めています」。

外装に木を使うという挑戦
渋谷の新たなシンボルとして、サステナブルな建物を実現したいという発注者の想いから、この建物は外装、特に公園通り側のメインファサードにも多くの木が使用されています。建物の外装に木材を使うためには、耐候性や防腐性、防蟻性、不燃性、メンテナンス性等を付与する必要があり、長期にわたる様々な検証を重ねた上でこれを実現したそうです。
「外部にこれほど大々的に木を使っているビルはあまり事例がありません。木は魅力的な外観を実現できる一方で、金属などよりも外部環境下において性能が劣ります。このため、各種性能を満たすようにメーカーで独自に開発された特殊な薬品を注入した製品を採用しています」。
こうして採用した木材は、実際に計画通りの性能を発揮するかどうかを確認するため、当社の稔台工作所において外装モックアップとして組み立てて、数カ月間の暴露試験も行なっています。

渋谷の中心で工事を進める

木造という大きな挑戦以外にも、この現場には難しい要素が存在します。それは渋谷の中心という立地に関わる問題です。
「工事車両の搬入について、時間的な制限は受けていないのですが、現場周辺は車や歩行者がとても多く、夕方以降にこの流れを止めて搬入することは実質的に不可能です。そこで基本的に平日は15時まで、土曜日はお昼までに搬入を終えるように計画しています」。
また、現場の東側はJRの線路に面しており、建物と線路が最も近い場所の距離は、わずか5.5mしかありません。このため、作業の時間制限や飛散防止対策など、線路近接工事として様々な対策を行いながら工事を進めています。
実績をつくり上げる

建設業界でも大きな注目を集めているこの工事。毎週のように見学会の受入依頼があり、作業所長は「できる限り多くの見学会に対応したいと思います」と話します。
現場は取材にお伺いした7月末に、無事上棟を終えました。「工程のひとつの山は超えましたが、この後も内部に設置しているタワークレーンを解体して、その部分に床を設置する作業など、まだまだ難しい局面があります。前例のない工事が続きますが、一つひとつの作業をしっかりとクリアして戸田建設の実績にすることが、この現場に求められている一番大切なことだと思いますので、完成までチーム一丸で頑張りたいと思います」。
私たちが作っています
実績づくりと次世代への継承
最初に木の躯体を立ち上げた際、そのスケール感に感動するとともに、「木」ならではの豊かな香りを強く感じました。つくり手としてのやりがいを感じる一方で、当社としてこの現場を大規模木造ビルの実績にすることが求められています。計画段階から積み重ねてきた検討課題と解決方法や、施工段階で苦労した点・工夫した点等を記録として取りまとめていきたいと考えています。今後、このような新たな建築に挑戦する機会があれば、自ら「やらせてください」と手を挙げる若手社員が増えていくことに期待しています。
社員の声
色々な条件のある難しい工事ですので、一つひとつの解決策が最適かを考えながら計画を進めています。
大型の木造商業施設を担当していることを誇りに感じて、竣工までやりきりたいと思います。
完成後は家族や友人とこのお店を訪れて、工事の難しさなどについて伝えたいと思います。
工事概要aa
| 工事名称 | (仮称)渋谷マルイ新築工事 |
|---|---|
| 発注者 | 株式会社丸井 |
| 施工者 | 戸田建設・住友林業共同企業体 |
| 概要 | 地上9階、地下2階 地上:木造+S造 地下:SRC造+RC造 敷地面積:839.33m2 建築面積:705.35m2 延床面積:6,868.32m2 最高高さ:50.64m |
|---|---|
| 用途 | 物販店舗・飲食店舗 |
