コンクリートの品質向上 低リバウンド吹付けコンクリート「Multi Effect 工法」

概要

吹付けコンクリートとは、トンネル掘削後の地山に直接吹付けて支保材とするコンクリートです。 コンクリートを吹付ける際には、はね返り(リバウンド)が発生するため、従来、このリバウンド量低減を目的に様々な工法が開発、実用化されてきました。例えば、セメントや混和材(フライアッシュや高炉スラグ微粉末)などの粉体量を増加させる方法があります。また、コンクリートの粘性を上げる方法や、増粘剤を特殊な機械を用いて直接添加する方法があります。しかし、これらの方法は別途追加設備が必要であり、材料費や施工時の手間も増加するため、工事費を増大させていました。

本工法「Multi Effect 工法」は、従来の配合や施工機械等を変更せずに、コンクリート製造時に必要な混和剤の代わりに特殊混和材料(増粘剤含有型高性能減水剤)を添加することのみで、吹付けコンクリートの粘性を増大させリバウンド量を低減することができます。

メリット

  • コンクリートに適度な粘性が加わり、骨材の分離抵抗性が向上するため、リバウンド量が低減します。
  • コンクリート吹付け時に発生する人体や環境に有害な粉じんの発生量を低減します。
  • コンクリート練混ぜ時に加える水の量を少なくできるため、コンクリートの強度が増進し、構造物の耐久性・品質が向上します。

特徴

    1. 1工法の特徴
      1. (1)コンクリート製造時に使用する混和剤を特殊混和剤に変更し、粘性を増大させます。
      2. (2)従来の配合を変更する必要はありません。
      3. (3)特殊混和剤はコンクリート製造時に添加するため、製造設備の変更が必要ありません。
      4. (4)特殊な施工機械が必要ありません。
      5. (5)材料単価は従来の混和剤と比較してほぼ同等であり、リバウンド率の低減(20%低減)によって同等程度のコスト低減が期待できます。
      6. (6)コンクリートの吹付け時に発生する人体や環境に有害な粉じんの発生量を低減できます。

写真1 低リバウンド吹付けコンクリートの施工状況

  1. 2実証試験と今後の展開
  2. 実証試験により、本工法を用いた吹付けコンクリートと、従来の配合(国土交通省土木工事標準積算基準書に準拠した配合)での吹付けコンクリートを比較した結果、リバウンド率を20%以上低減できることが確認できました(写真-2参照)。また、材齢28日での圧縮強度試験の結果、従来の配合と同等以上の強度発現性能を有することを確認しています。
    今後も各トンネル工事に本工法の適用を進め、本工法の有効性を確認するとともに、副次的効果として期待できる粉じん発生量の低減や、コンクリートの長期強度の増加についても検証を進めてゆく予定です。

写真2 吹付けコンクリートの比較試験状況

関連する実績
  • 国土交通省各地方整備局 3件
  • 東日本高速道路(株) 1件
  • 地方公共団体 2件