山岳トンネル技術 FSDロックボルト

概要

「FSD(Fiber Steel Driling)ロックボルト」(特許出願済:特願2017-245205)(以下、開発品)は、山岳トンネル(NATM工法)の支保部材であるロックボルトのひとつ、自穿孔GRPロックボルト※1(以下、従来品)の不具合を解消できる新しいロックボルトです。
従来品の端末部1mを鋼材(接続部と中空鋼製ロックボルト)に置き換えてGRPと接続した、2つの異なる材料で構成されるハイブリッド型のロックボルトです。

従来品と開発品
開発品(手前)
※写真はロックボルト長3.0m
  1. ※1自穿孔GRPロックボルト:孔壁が崩れやすい軟弱地山を補強するロックボルトのひとつ。後工程で切断される場合等に採用する中空ロックボルトで、ボルト本体の素材がガラス繊維強化プラスチック(GRP:Glassfiber Reinforced Plastic)であるため切断が容易で、ボルト先端にビットを取り付け、自ら穿孔できる機能を付加したもの

販売店

株式会社カテックス 建設資材事業部
〒460-8331 名古屋市中区上前津一丁目3番3号
TEL:052-331-8821

メリット

  • 比較的硬質な岩塊や礫などが混ざる地山において、従来品をドリルジャンボで穿孔する際に、打撃やローテーション等の衝撃によって、ロックボルト端末部のガラス繊維が壊れるなど、ボルト本体の破断や破損が生じたり、付属治具(ナット、プレート、注入治具、引抜き試験治具等)の設置ができない不具合も発生していました。
    従来品に代えて「FSDロックボルト」を採用することにより、このような不具合を防ぐことが可能となります。なお、製品の取り扱いや施工方法等は従来品と同様です。
従来品の破断状況
従来品端部の破損状況

特徴

実証試験結果

開発品の中空GRPロックボルトと中空鋼製ロックボルトの接続部(カップリング)の引抜き耐力に関しては、公的機関による試験(JIS M 2506:1992 ロックボルト及びその構成部品:ロックボルトのねじ部引張荷重試験)を実施した結果、従来品と同等以上の性能があることを確認しています。

項目従来品
自穿孔GRPロックボルト
開発品
FSDロックボルト
中空GRPロックボルト部 長さ(m) 4.0 3.0
呼び径 R32(外径φ30.8) R32(外径φ30.8)
単位重量(g/m) 950 950
引張強さ(kN) 365 365
接続部(カップリング) 長さ(m) - 0.2
外径(mm) - 42.7
重量(g) - 1,300
引張強さ(kN) - 400
中空鋼製ロックボルト部 長さ(m) - 1.0
呼び径 - R32(外径φ31.0)
単位重量(g/m) - 3,600
引張強さ(kN) - 280
ビット 呼び径 R32(外径φ51.0) R32(外径φ51.0)

従来品と開発品の比較

  • ロックボルト長4.0mの場合

試験施工結果

当社施工の中部地方の道路トンネルにおいて試験施工を実施しました。試験施工箇所の地質は、砂質片麻岩主体で局所的に花崗岩類が貫入しています。
試験施工では、下半切羽に従来品および開発品を各3本ずつ打設し、穿孔状況、モルタル注入、引抜き試験などの施工性を比較、確認しました。
従来品では、花崗岩類部分の穿孔の際に若干強い打撃を与えたところ、中空GRPロックボルトの中間部の破断やドリフターとの接続部(端部)で破損が発生しました。
FSDロックボルトの穿孔においても同程度の打撃を与えましたが、破断や破損は発生しませんでした。また、モルタル注入や後日の引抜き試験においても、不具合や問題点等は確認されませんでした。

試験施工(削孔状況)
試験施工(モルタル注入状況)
関連する実績
  • 国土交通省中部地方整備局 豊沢トンネル
論文