山岳トンネル技術 コンラップ監視システム

概要

山岳トンネルの覆工コンクリートの施工において、移動式型枠(以下:セントル)を使用する際に生じやすい、コンクリート端部(ラップ部)のひび割れや角欠けを防止できる「コンラップ監視システム」を開発しました(図-1、図-2参照)。
コンパクトなレーザー変位計をセントルのラップ部に5個程度設置し、セントルセット~覆工コンクリート打設~セントル脱枠までの一連の施工の流れにおいて、ラップ部と既打設コンクリートとの離隔距離をモニタリングします。モニタリング結果を施工に反映することで、ひび割れや角欠けを防止できます。

図-1 コンラップ監視システムの計測概念図
図-2 レーザー変位計による計測状況

メリット

  • 覆工コンクリート施工時に発生しやすく、かつ、目視では発見しにくいセントルラップ部の押しつけによるコンクリートのひび割れや角欠けを防止できます。
  • 長期的に剥離、剥落の無い耐久性に優れた覆工コンクリートが構築でき、供用後のトンネル利用者の安全を確保できます。

特徴

従来の施工方法の問題点

覆工コンクリートは、一般的に2日に1回の頻度でコンクリート打設を行います。このとき、既打設の若材齢の覆工コンクリートにセントルをラップさせてセットしますが、以下の要因で、ひび割れや端部の角欠けが発生してしまうことがありました。

  1. 1セントルセット時に、確認不足や電動油圧ジャッキの操作の誤りにより、既打設コンクリートにセントルラップ部を過度に押し付けてしまう(図-3)。
  2. 2コンクリート打設時に、コンクリートの側圧がセントルに作用し横方向に移動しようとし、ラップ部で既打設コンクリートを過度に押し付けてしまう(図-4)。
  3. 3セントル脱枠時に、作業手順の認識不足や機械故障により、妻側の電動油圧ジャッキだけを下降させてしまい、既打設コンクリートのラップ部を押し付けてしまう(図-5)。
図-3 セット時の押し付け
図-4 コンクリート打設時の押し付け
図-5 脱枠時の押し付け

コンラップ監視システムによる問題点の解決

側壁部、肩部、天端部に約5カ所設置した超高速・高精度レーザー変位計で、ラップ部面板と既打設コンクリートとの離隔を常時計測し、事前に設定した管理基準値を超えた場合、ブザーと回転灯で警報を発令します(図-6、表-1)。 セントルセットと脱枠時に管理基準値を超えた場合は、電動油圧ジャッキの上下動を強制的に停止させ、ラップ部面版が既打設コンクリートと接触することを回避します。また、コンクリート打設時に管理基準値を超えた場合は、コンクリート打設作業を一時停止して、打設速度や左右打設高さの調整を行います。
セントルセットからコンクリート打設、脱型までのそれぞれの作業工程に合わせて、システムのモードを選定することで、適切な施工管理を行うことができます。

選定するモード機能備 考
セントル
セット時
セットモード 既打設コンクリートとセントルの離隔が20mm※となった時、警報を発令し電動油圧ジャッキを強制停止 セントルセットの微調整は、目視確認を行いながらジャッキ操作を実施
コンクリート
打設中
打設中モード 打設開始前のラップ部隙間間隔から、±3mm※の変位を感知した時、警報を発令 警報発令後は、原因の究明、対策を講じた後、打設を再開
セントル
脱枠時
脱枠モード 打設完了後のラップ部隙間間隔から、マイナス方向の変位を感知した時、警報を発令し電動油圧ジャッキを強制停止 作業手順の再確認

表-1 コンラップ監視システムの概要

  • 離隔距離・間隔等は任意に設定が可能
論文