山岳トンネル技術 NATM-SEA
概要
山岳トンネル工事ではトンネル内への漏水を防ぐために、覆工コンクリート外側の吹付けコンクリート面に、防水シートを設置します。通常防水シートの施工は、作業架台上で特別な装置を使用せず人力により行われます。
通常の防水シート(幅2m、厚さ0.8mm)に対して、高性能防水シート(幅4m、厚さ2mm)を使用する場合、幅と重量が増すことにより人力による施工は非常に困難となります。また防水シートの幅が広いため、僅かでも曲がってしまうと角度の修正が困難になるという問題も発生します。
そのため、幅広・肉厚の防水シートに対応した展張装置として、NATM-SEA(Sheet Expanding Apparatus)を開発しました。この装置は防水シートの位置や角度を調整することができるため、施工精度を保つとともに防水シートの材料ロスを低減することができます。
- ※NATM-SEAは、株式会社ケー・エフ・シー、有限会社出雲鉄工所との共同開発です。



メリット
- 人力では施工が困難な高性能防水シート(幅4m、厚さ2mm)を安全に施工することができます。
- 展張中に位置や方向を調整することで、幅広・肉厚の防水シートであっても施工精度が保てます。
- 既存の装置で幅広・肉厚の防水シートを展張する場合は、防水シートが曲がり隣接するシートとの重なりが不均一になるため隣接するシートとの重なりを大きくする必要がありますが、本装置では防水シートを適宜修正することで重なりを小さくし材料ロスを削減することができます。
特徴
本装置は作業架台に設置したレールと、レール上を走行する駆動部で構成されています。駆動部にロール状の防水シートをセットし、レール上を移動しながら防水シートを張っていきます。駆動部には防水シートの押さえ棒があり、電気式シリンダにより上下動可能な2本のアームで接続されています。防水シートの位置、及び角度を調整しながら押さえ棒で支保工面に押さえつけ固定します。
以下に本装置の特徴を示します。

- 駆動部を片側ずつ動かすことによる向きの調整
- 本装置の駆動部を片側ずつ動かし、アームに接続された押さえ棒の向きを変えることで、防水シートの向きを調整することができます。
- 2本のアームによる位置・角度の調整
- 2本の電気式シリンダを独立して動かすことができるため、2本のアームの開閉角度を変えることにより、アームに接続された押さえ棒の向きを調整することができます。これにより防水シートを固定する際、防水シートを壁面の向きに合わせて、押さえ棒で押し当てることができます。
- 電気式シリンダによるアームの上下動
- 2本のアームは、電気式シリンダの伸縮により軸を中心として回転する構造であるため、シリンダのわずかな伸縮でアームを上げ下げできます。なお、アームを大きく上下動することにより、非常駐車帯等の拡幅断面に適用することができます。
関連する実績
- 中国地方整備局 大寧寺第1トンネル
論文
- 防水シート展張装置NATM-SEA:建設機械施工(2019年1月号)