山岳トンネル技術 フォアプレート工法

概要

山岳トンネルの補助工法の施工においては、土砂地山の場合に削孔水による地山の軟弱化や施工品質の低下が課題になっています。このため、山岳トンネル工事の汎用機であるドリルジャンボのガイドセルに特殊改良を加えた鉄矢木打撃装置を用いて、削孔水を使用せずに天端斜め前方に鉄矢木を打設する「フォアプレート工法」を開発しました。
土砂地山に本工法を採用することで、削孔水による地山の軟弱化を生じさせることなく、安全かつ施工性に優れた補助工法が施工できます。
なお、本工法は、古河ロックドリル株式会社との共同開発成果です。

ドリルジャンボに搭載した鉄矢木打撃装置
二車線道路トンネル適用時の打設パターン例
フォアプレート工法の施工手順
鉄矢木打撃装置(側面図)

メリット

  • 汎用のドリルジャンボガイドセルに、特殊セントラライザ、サブセントラライザ、特殊アタッチメントを設置するだけの簡便な改良で、削孔装置を鉄矢木打撃装置として使用できます。
  • 同一サイクルで施工されるロックボルト施工時は、本装置を装着したまま施工できます。

特徴

① 削孔水を使用せずに鉄矢木を打設

無水により鉄矢木を直接、地山に打撃挿入するため、削孔水による地山の劣化や軟弱化を生じさせない天端安定対策が施工できます。

② 施工時間の短縮

長さ1.6mの鉄矢木をN値30程度(一軸圧縮強度570kN/m2)の模擬地山を対象にフィード圧5MPa、打撃圧10~15MPaで打設した結果、打設速度6m/分(鉄矢木1本あたり15秒)を実現し、削孔時間と比較して遜色ない結果が得られました。また、全体の施工時間は、従来の充填式フォアポーリング工法の3工程(①削孔、②定着材充填、③ボルト挿入)の作業に比較して、鉄矢木打設のみの1工程の作業となるため、約半分の施工時間で実施できます。

模擬地山における鉄矢木打設実験結果

従来工法との性能比較

工法名フォアプレート工法充填式フォアポーリング工法
設置方法 鉄矢木打設の1工程 削孔⇒定着材充填⇒
ボルト挿入の3工程
材料の規格寸法 鉄矢木(15型 L=1.4〜1.6m) 異形棒鋼(D25、L=3m)
材料の重量 4.89kg/m(6.8〜7.8kg/本) 3.98kg/m(11.9kg/本)
材料の曲げ剛性 EI=91.4 N・mm2 EI=38.4 N・mm2
支持面積 15cm(@60cmで25%) 4.5cm(@60cmで7.5%)
適用土質 玉石を含まない土砂地山 ほぼ全土質・岩質に対応
施工時間 73分 136分
材料費(参考) 1.5千円/本 2.2千円/本

③ 施工時の安全性向上

安全な場所で鉄矢木をセットし、ドリルジャンボのオペレーターがレバー操作で鉄矢木を打設するため、切羽前面での作業をなくすことで施工時の安全性が向上できます。

関連する実績
  • 二車線道路トンネルにおける試験施工(DⅢaパターン、土被り4m、N値2~6のローム層)
論文